蛍と私
純粋な子供のように尋ねてくる蛍はふざけているようには見えない。
「い、いや。なんでもない。と、友達ね。友達って口約束でなるものじゃないよ。自然となってるもの。」
同じ時間を過ごして、少しずつお互いを知っていって、いつの間にかなってるもの。
だから急に友達になってくれと言われても簡単に頷けない。
「えっ?そうなの?じゃあ、僕と清はもう友達?」
「なんでそうなるのよ!!」
まだ知り合って数分なのに友達になれるか!!
「だ、だって・・・」
蛍はまたしょんぼりしてしまった。
こいつ、見た目は私と同じか、私より年上に見えるのに・・・中身はすごいことになってるな・・・
「・・・まだ、友達じゃないけどさ、一緒に過ごして行くうちに友達になれるかもね。」
また、私は折れてしまった。
私の言葉に蛍ははっと顔を上げる。
「また、ここにきてくれるの?また、会いにきてくれる?」
蛍はじっと私を見つめた。
その瞳があまりにも真剣で、真っ直ぐで純粋で、私は頷くことしかできなかった。
「清、僕待ってるから。僕は明日も清に会うためにここにくるから!!」
嬉しそうに微笑む蛍を見ていると何故だか顔が熱くなってくる。
「わ、わかった。ま、またね!!」
ずっと握ったままの手を慌てて外し、真っ赤になる顔を隠しながら、逃げるようにその場をあとにした。
その日の夜、私は今日出会った不思議な彼のことばかり考えていた。
初めて会ったはずなのに、どこか懐かしい雰囲気を持つ少年。
馴れ馴れしくて、スキンシップが激しくて、苦手なタイプなのに・・・また会いたいと思ってしまう。
イケメンだから?
純粋だから?
まっすぐな彼から目がそらせない。
彼を放っておけない。
「また、明日会いにいかなきゃ」
きっと彼はあの場所で私を待っているはずだから
ただ、私がくることを信じて、なにも疑うことなく、あの場所で待ってるはず・・・
今日会ったばかりの彼なのに、何故だか確信があった。