だいさんわ
放課後。
部室が分からなくて迷ったらいけないから、と迎えに来てくれた勿忘草と連れ立って、部室棟へ。
からからと軽い音を立てて開かれたドアの向こうで、二人の少女が顔を上げた。
「こんにちは、勿忘草。その人は?」
「私の友達の、アイオライト。人を探してて色んな部活を巡りたいっていうから、連れてきたの。アイオライト、こっちは紫苑と紫蘭。よろしくね。」
「いきなりお邪魔しちゃってごめんね。よろしくお願いします。」
よろしく、と頭を下げる二人。
二人とも紫の髪だけど、紫蘭と呼ばれた方は結構長い。
紫蘭は紫の目で、紫苑は黄色の目をしている。
僕たちの元になった植物の名前をそのまま使っているから、今みたいによく似た名前の人に出会うこともある。
僕も、なんとかライトっていう名前の人は結構出会うし。
「それで、アイオライト君が探してるのは誰? 名前とか、わかる?」
「琥珀、なんだけど。知ってる?」
「うーん。」
首をかしげて尋ねれば、紫蘭と紫苑は顔を見合わせて首をひねった。
「残念だけど、知り合いにはいないよ。」
「私も知らないな。」
「そっか、ごめんね。ありがとう。」
「お役に立てなくてごめんね。」
困ったように笑う二人に気にしないでてと手を振って、話題を変える。
琥珀がこの部活にいないのならこれ以上その話をしても意味はないし、二人に気を遣わせるだけだものね。
「凄く今更なんだけど、ここは刺繍部なんだよね?」
「うん、そうだよ。」
「今は何を作ってるの?」
「見てくれる?」
「うん、ぜひ見せてほしいな。」
にっこりと笑ってそう言えば、紫苑と紫蘭はパッと顔を輝かせた。
そして、二人の手元にあった大きめの布の両端をそれぞれつまんで広げてみせてくれる。
右上と左下から模様が描き出されているみたい、なんだけど。
「もしかして、合作なの?」
「そうなの。紫苑と紫蘭はすごく仲が良くて、今回大作に挑戦してみようって話になったのよね。」
「大作、ってほどじゃないよ、二人で作るんだし。」
「作業するのは半分だもん。」
「それでもすごいのよ。それぞれが違う布に刺繍してそれを縫い合わせるんじゃなくて、同じ布に端から刺繍していくんだから。」
「どっちかがずれたら真ん中でおかしくなっちゃうんだね。大変そう。二人ともすごいんだね。」
「そんなに大したことじゃないのに。」
「でも、ありがとう。」
恥ずかしそうに笑う二人。
僕は細かい作業は苦手だしずっと同じことをしているのも得意じゃないから、こういう趣味を持っている人は尊敬する。
そのれから勿忘草が今作っている作品を見せてもらったり、今まで作ったものを出してきてもらったり、ちょっとだけ体験させてもらったりした後。
「そういえば、私写真部にも入ってるんだけど、そっちにも行ってみる?」
「え。」
「写真部にも琥珀さんはいないけど、私みたいに掛け持ちしてる人もいるし、それで紹介してもらってまわってみればどうかなって。」
「わらしべ長者みたいだね。」
「そんな感じ。どう?」
紫苑の提案はちょっとびっくりしたし、そううまくどの部活にも部活を掛け持ちしててその先を紹介してくれる人がいるとは限らない。
でも、せっかくだし、琥珀を探す上で知り合いは多い方がいいし。
「じゃあ、お願いしてもいいかな。」
「うん、任せておいて。」