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リコリス魔法商会  作者: 慶天
4章 ヘルツォーゲンの日常
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ペトラの冒険 9 ペトラの未来

「ペトラさん、この薬草の洗浄をお願いしますね。」

「はい!薬剤はどうしますか?」

「今回のは蒸留水のみでお願いしますわ。」

「え、洗浄剤は使わない?」

「ええ。蒸留水のみで薬草に傷をつけずにきれいに洗浄してくださいね?」

「は、はいい。」



 ペトラです。

 ただいまリコリスさんの指導の下、錬金術師を目指して修行中です。

 魔術の素養はあるので錬金理論を学習して実戦を積めばきっと一流の錬金術師になれるとアインフォードさんにおだてられ、その気になってしまったのが悪かったのかもしれないです。

 リコリスさん意外と厳しいの!


「リコリス、ちょっとハインリヒ様に呼び出しを受けているからキャロットと騎士団まで行ってくるね。」

 そう言ってアインフォードさんとキャロットさん、エイブラハムさんが出かけていきました。

 この間の件でしょうか。でも報告はすでに終わっているとアインフォードさんは言っていたのだけどな。また別件かな。




 あれから5日が経ちました。

 フライシャー伯爵邸でのことはわたしは後から聞くことになりました。だってまさかアインフォードさんがわたしの首を刎ねるなんて想像できます?

 すでに死んでるけど間違いなく死んだと思ったよ!


 わたしが目を覚ましたのはリコリス魔法商会の地下室でした。この地下室は人には見せることができない研究や開発を行うときに使用するためのものだと後程教えていただきました。

 目を覚ました時、アインフォードさんはその場にはいらっしゃいませんでしたが、キャロットさんがわたしの体に手を当て、目を閉じていらっしゃいました。


「目覚めやがりましたね。ペトラさん、体に異常はありますか?」

 キャロットさんはそう言ってわたしの目を覗き込んできます。ちょ、キャロットさん綺麗すぎてちょっと怖いよ?

「え…はい、どこもおかしなところは…。」

 そう言ったところでわたしは自分が全裸であることに気が付きました。

「え、わたし、は、はだか?」


「そうですね。白骨死体にわざわざ衣服を着せることもないでしょう?」

「白骨死体!?って、あ、あれ?わたし体が…ある?」

 吃驚しました。わたしはゴーストだったはず?なぜ体があるのでしょうか。

 あまりにも驚いたので自分が全裸であることも忘れてキャロットさんを見つめていました。綺麗だなぁ…。いや違うって。


「こ、これはいったい?」

「ペトラさんはアインフォード様に感謝しなければならないですわよ。」

 リコリスさんがわたしの問いかけに応えてくれました。


「あなたはアインフォード様に『討伐』されました。」

 確かにわたしはアインフォードさんに首を刎ね飛ばされたような気がします。あの時はびっくりしました。何をするー、という暇もありませんでした。

「その結果、システム的には死亡したという判定になりレイズデッドを受けることが可能になったのですわ。」

 しすてむ?何の事なのかな?ってか、え、レイズデッド?それはいわゆる蘇生の魔術ですか?


 蘇生の魔術、そんなもの伝説の話ではないのですか?死んだ人間を生き返らす。まさに神の奇跡ともいうべき究極の神聖魔術です。この世でそんなものを扱うことができるのは王都にいる最高位の神官のみだと話に聞いたことがありますが、まさかキャロットさんが?


「ペトラさんには幸いなことに死体が残っていましたのでリサレクションを使用することができました。通常のレイズデッドでは生命力が失われますが、上位魔術であるリサレクションであるならレベルの低下も起きません。そもそもレイズデッドは死後数日以内に使用しないと効果がありませんのでペトラさんには無意味でしたから。」

 キャロットさんがそう言ってわたしに毛布を掛けてくださいました。


「リサレクション?上位魔術って…。レイズデッドってたしか第六位階魔術と聞いたことがあるのですけどいったいキャロットさんって…。」

「リサレクションは第九位階魔術です。死体さえちゃんと残っていれば100年前の人物ですら復活させることができます。」


 …え…わたし…ひょっとして…生き返った?


「あ、あの、わたし、生きて、生きているのです…か?」

「何を聞いていやがりましたか?私があなたにリサレクションを施しました。ペトラさんは間違いなく『生きて』います。」

 慌てて全身をペタペタと触ってみます。手触りがあります!霊体じゃないです!


 それが理解できた瞬間、涙がとめどもなく流れてきました。

 わたし、生きている。生きているんだ!

「か、神!神ですか――!」

 キャロットさんは神ですか!そんな人知を超えた奇跡を当たり前の顔をして!

 というかなんですか第九位階?そんな位階が存在するのですか?


「あ、ありがとうございます!」

 ああ、なんという事なのでしょう!キャロットさんは言葉はとても厳しいですがその実際はとてもお優しい方だと私は知っています。

 あの屋敷でソウルイーターに取り込まれそうな私を最後まで助けようとしてくれていました。

 さらにこのような人知を超えた魔術で私を真に生き返らせてくれるなんて!ああもう一生ついていきます!


 その時ノックの音と共にアインフォードさんの声が聞こえました。

「キャロット、そろそろ入ってもいいかな?」

「はい、術式は無事完了しました。どうぞお入りください。」

 キャロットさんがそう答えるとアインフォードさんが部屋に入ってこられました。


「ペトラさん、体調はいかがですか?」

 アインフォードさんの言葉にわたしは力強く頷きました。でもできたらちゃんと服を着てから入ってきてほしかったかも。


「はい!とても快調です!今まで死んでいたなんて考えられないくらいに!」

「それは良かったね。でも精神的な疲れもあるだろうから今日はゆっくり休んで、明日今後の事を話し合おう。屋根裏で申し訳ないけれどベッドを用意したのでそこで休んでくれるかな。」


 アインフォードさんはそう言うとキャロットさんに目配せされました。

 キャロットさんはそれを受け、私の体を支えながら屋根裏部屋まで案内してくれました。

「あの、これからって?」

「あなたの身の振り方ですよ。休んでいる間に何がしたいか考えておきなさい。」

 何がしたいのか…?そうですね、ちゃんと考えねば…。




 結局わたしはアインフォードさんの意見もあり、リコリスさんの助手としてこのお店で働くことになりました。

 その合間にリコリスさんから錬金術を習い、いずれは独り立ちができればという事になったのです。


 もともとわたしは魔術師であり、付与魔術の研究を行っていました。それがゴーストになったことでそれまで第二位階までの魔術しか使用できなかったものが、なんと第四位階まで使用できるようになっていたのです。


 ちなみにあの屋敷で私が使用した「クライオブバンシー」という魔術は第六位階に属するようで、あの屋敷ではアンデッドの力が増すような力場があったためにできたようです。

 ですので、残念ながら今は使用できません。


 それでも第四位階の魔術を使用できるなんて!ぶっちゃけ宮廷魔術師になれるレベルですよ!

 それをリコリスさんに言うと、リコリスさんは様々な系統の魔術を第六位階まで(死霊系に関しては九位階も可能だとか)、キャロットさんは神聖魔術を第九位階まで使用できると教えてくださいました。

 さらにアインフォードさんは第一〇位階を使用できるという事です。なんだかくらくらしてきました。


 ひょっとしてこの三人だけでこの街を制圧出来てしまうんじゃないの?




 せっかく生き返ったわたしは何をなすべきなのでしょう。以前はお父さまの楽曲を世間に認めさせることのみを考えて研究していました。

 しかし今やお父さまの曲はパレードにまで使用されています。きっとお父さまもあの世で喜んでくれていると思います。


 アインフォードさん達の恩に報いることは絶対に必要です。どうやったら恩返しができるのだろう。

 そうリコリスさんに相談すると、「そんなこと考える必要もないのだけれど。でもその考えはよくわかるわ。私もアインフォード様に受けた恩を返さなくては、といつも考えているから。」と言っていました。

 詳しい内容は話してくれませんでしたが、リコリスさんもアインフォードさんには恩があるらしいです。


「ゆっくり考えたらいいわよ。」

 リコリスさんはそうおっしゃいました。

 そうですね。今は錬金術を学びながらこのお店を手伝って行こうと思います。

 錬金術師ペトラ、うんいい響きね!がんばろう!




 ところでいくつかあのお屋敷についての後日談をお知らせしておこうと思います。

 アインフォードさんはあのあとハインリヒ様に報告を行い、デリア嬢のお墓を探し当てました。調べればフライシャー伯爵の娘であったことは当時わかっていたようでちゃんとフライシャー伯爵の隣に埋葬されていたという事が分かりました。


 三体の人形はそのお墓に改めて埋葬されることとなりました。わたしはソウルイーターの本体が人形であったことを知って大層驚いたのですが、いつかどこかで彼らが巡り合えることを祈っておきました。


 それとあの屋敷を今さらながら枢機卿が調べているという話なのですが、アインフォードさん曰く、あの土地自体に秘密があるようだといっていました。


 私が「クライオブバンシー」を突然使用できたように、あの土地にはアンデッドを活性化させるようなそういう特殊な力場になっているというのです。霊道というらしいですが、そういうものがあそこにはあるという事がアインフォードさん達が調べた結論だという事です。


 もっともそんなことを公表することもないとハインリヒ様も伏せているようです。アインフォードさんはハインリヒ様からあの屋敷を購入することを勧められたようですが、今現在枢機卿が何やら嗅ぎまわっているような屋敷を買うことはできないと断ったという事です。


 そう言えばあの三人は貴族の位を持っているのですから、貴族街に家があってもおかしくないですものね。リコリス魔法商会の二号店を貴族街に作ってほしいという要望もあるようなのです。


 そうね。いつかわたしがリコリス魔法商会の二号店を任されるようになればそれも恩返しになるのかしら?


 よし!頑張る!


 …でも結婚とかもしたいなあ。


この章を始めた時はほのぼの日常の章にしようと思っていたのですが、どうしてこうなったw

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