表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リコリス魔法商会  作者: 慶天
1章 魔法屋の女主人
8/131

折り紙は売れるのか?

 

 アインフォード様が折り紙を教えてくださってから二日後、お店に折り紙を置いてみました。このまま置いたのでは何かわかりませんので完成した「鶴」と「バラ」を幾つか並べてみます。

 カウンターにも「鶴」を飾り付けに置いてみましたわ。

 アインフォード様とキャロットさん、エイブラハムさんは朝からギルドに用があるとかで、今お店には私一人です。


 朝一番に来られたのは冒険者のオイゲンさんです。オイゲンさんはこの街の冒険者の兄貴分というべきお方で、皆さんからずいぶんと慕われている方です。ひげもじゃのいかつい風体で、見た目通りの豪快な性格をしたおじさまです。

「いらっしゃいませ、オイゲンさん。今日はお早いですね。」

「おお、邪魔するぜリコリス。これから依頼を受けて王都まで行くことになってな。長いこと留守にするんで、なんか長旅に良いようなアイテムはないかと思ってな。」

 王都までとはずいぶんな長旅ですね。そうですね…。これなどはどうかな。

「これなどはいかがでしょう。馬車用のマットレスですの。」

 そう言いながら大人が二人座れるような大き目のマットレスを取り出します。

「馬車に長いこと乗っていますとお尻が痛くなりますよね。このマットレスは中に衝撃を吸収するバネを仕込んでありますので、お尻が痛くなりませんよ。一応お値段は銀貨1枚です。」

 もっともオイゲンさんが馬車で移動するのかどうかはわかりませんが…。

「ほう。これは面白いな。ちょっと触ってみてもいいかい?」

「はい、どうぞ。」

 オイゲンさんが興味深げにマットレスを触っています。ちょっと強く推してみるとマットレスは沈みますが、またすぐもとの形に戻ります。

「これはよさそうだな。依頼主に使わせてやったら喜びそうだし…リコリス、これ二つもらえるかい?」

「はい、ありがとうございます。では二つで銀貨2枚になります。」

 銀貨を受け取り商品をお渡しします。その時オイゲンさんがカウンターに置いてあった「鶴」に気が付きました。


「これはドラゴンの飾り物なのかな?紙でできているのか…?」

 不思議そうに触っています。そうでしょう、不思議でしょう。そのはずですわ。

「それは今日から当店で売り始めた『折り紙』というものなのですわ。ここにある指南書の通り紙を折り曲げていけばこの『鶴』やあの『バラ』などが誰でも作れるのです。」

「へぇ…ちょっと興味あるな。誰でも作れるのか?魔法が使えなくても?」

「はい!もちろんです。この『折り紙セット』は指南書1枚と折り紙12枚で大銅貨1枚となっています。いかがですか?」

「接客の基本」に忠実に笑顔で勧めてみます。

「そっかそっか、よしそれも一つ貰おうか。その指南書があれば誰でも作れるんだな?」

「はい!他にもいろいろ指南書を用意していますのでお気に召したらまたお願いしますね。あ、それと今日はうちの商品をどれでもお買い上げくださった方全員にこちらをサービスしております。おひとつどうぞ。」

 そういって「鶴」を一つ差し出します。これこそアインフォード様の秘策、プレゼント宣伝という手法です。ただで商品を差し上げるなどお商売としてどうなのかと思いますが、確かにこれだと多くの方が目にすることとなり宣伝効果が期待できます。今度こういった手法も本にまとめましょう。


「ほう!これをくれるというのか。これはあんたが作ったのか?」

「はい。これは私が作ったものです。アインフォード様やキャロットさんが作ったもののほうが上手に出来ているのですが、交換いたしましょうか?」

「いや!これでいい!いや、朝早く来た甲斐があったというものだ!ありがとう!」

 そういってひげもじゃオイゲンさんは嬉しそうに店を出ていきました。

「ありがとうございましたー。」

 どうやらちゃんと宣伝してくれそうですわね。それにしてもオイゲンさん顔が赤かったですが、体調悪いのかしら。


 しばらくは誰もお客様はいらっしゃいませんでした。私ももう少しうまくできないかな。ちょっと練習しようかな。などと考えていたらロジーおばさまがおいでになりました。

「ロジーおばさま、いらっしゃいませ。」

「こんにちはリコリスちゃん。これをお願いしたいんだけどね。」

 そういっておばさまが差し出したのはうちで販売している魔法のランタンです。

「ちょっと光が弱くなっていたようなんで魔法をかけなおしてもらえないかと思ってね。」


 うちで販売している魔法のランタンは大体3か月で光の効力が切れます。これはどこで販売されているものもだいたいそれくらいのようなので、3か月に調整してあります。

 ただ、魔法のランタンは結構高価なものですので、光が弱くなると魔法のかけなおしを割安で行うようにしてあります。ランタンのお値段は銀貨10枚もしますが、当店で買っていただいたランタンに限り、大銅貨5枚で魔法のかけなおしをさせて戴いています。

「はい、承りました。では少々お待ちくださいね。あ、目を傷めるといけないので直接光を見ないようにお願いしますね。」

 そう言ってその場でランタンの中心石を取り出し、コンティニュアルライトの魔法をかけます。


「はい、これで3か月は大丈夫ですよ。あ、これ今日お買い上げくださった方にお渡ししているサービス品です。どうぞ。」

「これは…バラの花…かい?でも生花じゃないね。なんだいこれは?」

「これは一昨日おばさまに相談していた『紙』の新しい使い方ですわ。『折り紙』と言いますの。」

 そう言っておばさまの胸にバラの花をつけてあげました。


「へぇ!これが紙でできているのかい?見た目はバラの花そのままじゃないか。やっぱりリコリスちゃんはすごいねぇ。錬金術って何でもできるんだね。」

 おやおや、おばさま勘違いしていらっしゃいますね?

「いえ、おばさま。これは錬金術ではないのですよ。魔法が使えない方でも、子供でも作ることができるものなのですわ。」

「なんだって?子供でも作れるってどういうことだい?」

「こちらをご覧くださいませ。ちょっとやってみますわね。」

 そういって折り紙を一枚取り出し、おばさまの前で『バラ』を折っていきます。これもアインフォード様の秘策その2、その名も「実演販売」です!

 一枚の紙きれがあれよあれよという間にバラの花に変化していきます。おばさまの目も驚きに見開かれます。あ、なんか気持ちいいですね。


「こりゃびっくりだよ!本当に魔法じゃないんだね。これはあたしにもできるかい?」

「もちろんできますよ。こちらに作り方の指南書があります。この指南書と色のついた紙『折り紙』のセットを大銅貨1枚で販売しております。今日からの販売なのですよ。」

「一昨日あたしと話してからたった二日で新しい商品を作り出すとはまぁ驚いたねぇ。でもこれはすごいじゃないか。大銅貨1枚かい、買ってくよ!」

「ありがとうございます。きっとおばさまのお子様たちにも喜んでいただけると思いますわ。」

「そうだね、これはうちのちび達に気に入られそうだよ。最近物騒で夕方からは外に出せないからね。子供たちが気に入ったらまた買わせてもらうよ。ありがとね。」

「いえいえ、ありがとうございました。またのご来店をお待ち申し上げます。」

 ロジーおばさまも気に入ってくれたみたいですね。


 それからお昼までに何組かの冒険者さんがいらっしゃいまして主にヒーリングポーションを買っていってくださいました。

 お買い上げくださった方で男性には「鶴」女性には「バラ」をプレゼントしましたが、結局「折り紙」はそれ以上売れることはありませんでした。でもプレゼントをもらってくださった方は皆さん喜んでくれたようなので、きっと明日以降につながると思います。


 リコリス魔法商会アイテムNO.15

「スプリングマット」

 お値段銀貨1枚。

 マットレスの中にバネを仕込み、振動を吸収するようになっています。

 馬車などの長旅にぴったりです。

 二人掛けのペアシートとなっております。


 リコリス魔法商会アイテムNO.16

「魔法のランタン」

 お値段銀貨10枚。

 魔法の光を閉じ込めた燃料いらずのランタンです。

 光は消すことができないのでシャッター付きになっております。

 約3か月、光は持続します。当店にお持ちくだされば、大銅貨5枚で新たに

 魔法を付与いたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ