ちょっと待って
意気込みはよかった。のだが結果は全敗。
ナナの魔法はいっていた通りまったく当たらない。対照的に相手はすべて狙い済まして、狙った場所に打ってくる。戦いづらいことこのうえない。
「本当にごめんなさい。なんとお詫びをいっていいか」
「別にいいよ。わかってたことだし。模擬戦だし」
模擬戦後それぞれ集合がかかり、本日はこれで解散となった。道場に足を向けて歩いていこうとした時に言われてしまった。
周りにいたやつらの目が一斉にこちらに向けられた。もういやになってくる
「私がいなかったらこんなことには」
今にも泣き出しそうな顔で言われてしまった。必死でこらえているようだ
「そんなことないから。一人でもこうなってたから」
泣いてもらうのは困るのでフォローをした
「そんなことはないです」
一瞬で否定された
「シンの剣さばきは見とれてしまうほどきれいでした。ですので、私をかばわず戦ったらシンは」
といったところで、俺は周りからの嫌な視線を感じた。そして反射的にその場から立ち去っていた
「じゃまたいつか」
そういって全力で逃げた修練場からどのくらい逃げただろう。見えなくなるくらいまで一気に駆け抜けた。
道場での修練の時間までまだ時間はあるので、茶でも飲んでいくことにした
どこでしようか迷いながらふらついていると、声が聞こえた
「シンー。待ってくださーい」
声の主はナナだった。思わずため息が出てしまった
さすがにここまで追ってきてくれたので、待つことにしてみた
少し待っているとナナらしき人影が見えた
よく見たらナナはすごく容姿がよかった
まっすぐに伸びた赤がかかった茶色の髪。顔立ちはよく白い肌。そして何よりあの足を進めるたび揺れているあの大きな胸。誰もがナナに目を向けるだろう。
もしかしたらあの嫌な視線は。いや両方だろうな
一人で納得していた
しかしなかなか来ない。見えてから5分は経過している
歩いてもだいたい5分でつく
気になって見てみると
「ねえ、お茶しない」
「あ、あの・・・」
ナンパされていた。されている当人のナナは目をあちこちに向け、助けを求めていた
ナンパの現場に歩いていった俺に、気づいたらしくこちらに助けを求めている。そう見えた。というか、こちらしか見ていない
あからさまだろ
その目線に気づいたナンパしているやつは、こちらを睨み付けた
名前も呼ばれていたし、ここにはよく来るため、名前を知っている人は多く一人で逃げられない。
「面倒なことは避けたいんだがな」
「なあお前こいつのなんなんだよ。彼氏さんですか。助けに来ちゃってさ」
「勘違いしているな。彼氏でもなければ、助けに来たわけでもない。近くに来たら勝手に助けてほしいような目線を送られただけだ」
そういったとき、ナナは完全に落ち込んでいた。だがそのなかでも、信じたように俺に目を向けていた。そんなナナに、少しうなずいておいた
大丈夫ということが伝わればいいが
「だったら、邪魔すんじゃねえぞ」
「ふっ、だがなこいつは俺の友だ。悲しそうなら助けてやるのが、友の役目だ」
そういってナナの近くにより
「すまん」
と、声をかけ抱きかかえた。 そしてそのまま、走り去っていった。