はいコンビです
「どこから話そうか、ナナとの出会いからかな」
俺がシーカー修練所で指導をまだ受けていたころだった。俺は古い道場を開いている師匠の下に通っていたが、同時に修練所にも通ってた。師匠は武器を使わない武術での戦い方を、修練所ではそれを生かせないか考えながら剣をふるっていた。
師匠はたった一人の門下生の俺を厳しく指導した。俺のほかにはいなかったし、入ろうと思うものなどいなかっただろう。
それとは違い、修練所では多くの出会いがあった。けれど、模擬戦で戦って少し話すが、道場があるからと帰ってしまうと、次からは話しかけられなくなっていき、俺は一人になった。
そんな中、魔導士との合同の模擬戦があった。魔導士は前衛には出ず、後衛からのサポートが基本だから、慣れるためにと行われている。
そこで出会ったのが、ナナだ。
模擬戦は俺たちと魔導士ペアで行われる。ペアは探せとのことだ。コミュニケーション能力の向上のためだそうだ。まったくもって面倒だ。周りを見渡すとほとんどペアを組み終わっている。焦ることはない最悪一人でも模擬戦は参加できるので問題ない。そう考えていると
「あのーもしよかったら私と組んでいただけませんか」
「えっ、ああ、まあいいけど」
「よかった、もういないんじゃないかと思いました」
「こちらはシンだ。よろしく」
「あ、ナナ、です。よろしくお願いします」
「どんなのが得意なんだ」
「えーとそのーですね」
「なんだ」
「こちらからたのんでおいて申し訳ないのですが、魔法ができないんです」
「えっ」
俺は驚いた。できないというのはどういうことだろう。魔導士の修練を積んでいるはずだ。
「正確に言うと、打てるんですが狙えないということです」
「えっとつまり、的に当たらないということでいいか」
するとナナはすこし口ごもったように
「はい」
と小さな声で答えた。
「あのもし嫌なら組むのをやめていただいても」
「いや一度組んだんだしこのままやらせてもらう。いいだろ」
「はいありがとうございます。15人目にしてやっと見つかりました」
「えっ、15人目」
「はい。皆さん私が魔法を狙えないと知ると、逃げるように去って行ってしまうんです」
「ナナ、お前、全員に使えないことは話すんだな」
「はい」
と、元気に答えられてしまった。
「使えないこと黙ってればすぐに見つかっただろ」
「黙っておくことはできません。一緒に戦うんですから」
「正直なんだな。まあいいか」
「嘘はよくありません。それで、あなたは何を使うんですか。」
「全部」
「えっ」
「だから今ある武器全部だよ。相手に合わせたり、自分のコンディションに合わせる」
「そうなんですね。すごいです」
ナナは目を輝かせていた。
「珍しいな」
俺は驚いていた
「何がですか」
「今までこんなこと言ったら、あいつは特別だ、調子に乗ってやがるやつだとか何とか言って寄ってこなくなるやつばっかだった」
「ひどいです。ただ正直に言っただけなのに」
ナナは半泣きした顔で言った。続けて
「そんなこと言ってきたみんなに、今日勝ってやりましょう」
「そうだな」
いつも勝っているのだが、ナナがやる気を出しているのでそれは伏せておいた。