奇妙な出会い
戦闘は防戦一方となっていた。
新種のオーク闇オークとなづけておく。闇オークは、従来のオークとは全くの別物だ。動きは早く、攻撃後の隙もないといっていいだろう。こん棒を振り下ろした際、当たらないにせよ風圧で体勢を崩されてしまう。そのために、攻撃にすぐ転じられない。
倒せないので離脱しようと試みたが、移動速度が速く逃げ切ることができない。
そんなこんなで相手の攻撃をずっとかわし続けているのだ
「こんなんいつまでもつのやら」
よけ続けることができてはいるが、それがいつまで続くのかはわからない。
そんな時、足に倒木に引っかかりそのまま転んでしまった。今までの疲労のせいかすぐに起き上がれなかった。おそらく、もう逃げられないだろう。俺は覚悟を決めた。
「カノンとの約束守れなかったな」
そのとき
「そこの貴様伏せろ」
そう叫ばれた。取り合えず伏せた。その直後、ひゅっというカザキリ音の後に爆発音が聞こえた。
「なに」
すぐに俺は顔を上げた。
今の音からするに通っていったものは矢だ。ゆえに武器は。しかし、俺はそんなのを使うやつを一人しか見たことがない。そしてほかの者たちも。しかし、そいつはもう。
「ナナ・・・」
そういって俺は気を失った。そしてその声は、続いて聞こえている爆発音であちらには聞こえていないだろう。
気を失ってからどれくらいだろう。もしかしたら死んでしまっているかもしれない。目を開けたら辺り一面銀世界なんてこともあるかもしれない
そんな思考は感覚がすぐに戻した。左肩の痛みで目を覚まし、背中の痛みからごつごつした岩場で寝ていることに気が付いた。
「む、気が付いたか」
声をかけられすぐさま戦闘の体勢に入り構えた
「お前は誰だ・・というか服を着ろ」
目の前のやつは何も身に着けていなかった。俺が起きたからといって特に焦ることなくそのまま立っていた。即座に目を背け、服を着るのを待った。
「そんなことをいう貴様も着ていないのだがな」
自分の体を見た。といっても上半身だけしか出ていないのだが。しかし、肩はもちろん全身に処置が施されている。
「お前がやったのか。ありがとうな」
「なに簡単に応急処置したまでさ。このままではいけないと思ってな」
こいつは信用できるやつだなと心で思った。
鞄からとりあえず着るものを取り出し着替えた。着替えが終わったころにあちらも着替えが終わったらしい。
「とりあえず助けてくれてあらためて礼をいう。ありがとう」
「なに困っているときはお互い様だろう」
「いきなりですまないがここはどこでおまえはだれだ」
「ふむ、ここは私の住処だ。そして私はチナなんにもしていないただの旅人だ。といっても、ここが気に入って長くとどまっているがね。16歳から今まで2年旅を続けている」
「俺同じ歳なのか」
「貴様も18歳であったか。この出会いは何かの縁かもしれんな。貴様も名乗れ」
「ああ、すまない。シンだ。シーカーをしている。よろしくなチナ」
「よろしくたのむシン。ところでこちらの質問もいいだろうか」
「ああ」
「あのオークはいったい何だ」
「わからない。オークを狩っていたら偶然遭遇しちまった。今までのやつらとは全然ちがう。すべてにおいて群を抜いていた」
「貴様もわからないか」
「すまないな」
「あともうひとつ、詮索するようで悪いがナナとはいったいなんだ」
「おまえいつどこで」
「ここまで運ぶ間お前がずっと小声でつぶやいていてな。気になったんだ」
「ここまでしてもらって答えないのも悪いな。ナナは昔のパーティーメンバーの一人だ。武器は弓だ」
「ほう、私と同じか。珍しいな」
「ああ、弓を使うやつはチナとナナの二人しかいないと思う」
「弓は矢を魔力で生成して打ち込むものだからな。相当な魔力量がないと務まらない」
「そう、しかし魔力があるやつはみな魔導士になるからな。弓を使おうとするやつはまずいない。弓は自分で作るしかないしな」
「私のほかにもいたのだな弓使い、アーチャーが」
「ナナは魔法がうまくなかった。打つことはできるが狙いが定まらない。そんな状況だったんだ。魔力は膨大に持っていたから先生たちも魔導士にさせようと努力はしていた。けど一向にうまくならなかった。そんな中、ナナは古い文献からアーチャーという戦い方を見つけ出しそれを目指したんだ」
「ほう興味深い話もあるもんだな。そいつとはまだ仲がいいのか。今度会わせてくれないだろうか」
「無理だ」
「そうか。もうパーティーではないということは、いざこざがあったのか。そして今ソロになってしまっているのか」
「違う。パーティーメンバーははいつも仲が良かったし、ソロは俺がそうなりたいからなっているだけだ」
「ならばなにがあったのだ」
「ちょっと長く話していいか」
「ああ聞こう」
そして俺は過去をすべて話すことにした。