再登場と危機
ナナが負けて、今回ナナと戦うことはできないだろう。敗者復活などない。
「今回は意味がなくなったのか・・・なら棄権しても。」
いや、違う。ナナは俺と戦った。師匠から教えも受けていた。それが簡単に負けてしまった相手仮面T。ならば仮面のやつらと戦ってみたい。強さについて知るために戦うべきだ。わざわざ休みをとって応援に来てくれたカノンのためにも。
「ブラフ、頼む。」
「やるんやな。」
「当たり前だ。この大会で何かが分かるかもしれない。」
「じゃ、こっちもそろそろ本気だしたるわ。」
「今までて抜いてたのか。」
「こちとら精霊やぞ。前のお前やったら一瞬で魂ごともってとるわ。けど、今やったら大丈夫かもな。」
「くそっ。本気のお前を倒したるわ。」
「はっ。一発でも当てたら師匠越えや。」
組み手を始めた。
「準備をしてください。」
「くっ。」
「ははは。まだまだや。」
結局、一発も当たらなかった。
「さぁ初戦で鉄壁といわれるゴドフリーとの戦いを一瞬で決めたシン。今回はどんな戦いをしてくれるのか。そして対するは豪腕で有名、大剣二本を振り回すベクレスだ。」
「よろしくお願いします。」
「げへへへ。ゴドフリーのやろうは油断してやられたみたいだが容赦しねえぜ。」
不気味な笑いかただ。
「では開始。」
距離を一瞬で詰め寄った。
「正面にくるとは、バカなやつだな。」
右手の剣を降り下ろしてきたので、それをはじいた。
「さすがにさっきみたいにいかないか。」
豪腕といわれるだけあって、握力も半端じゃないようだ。
「まだまだいくぜぇぇぇ。」
「ここまでだ。」
今度は弾くための手元、剣先を狙わなかった。
歓声が沸き起こった。
「今回も見せてくれたぜ。武器場外ではなく、武器破壊をやってくれた。シン、お前はどこまでいくんだぁぁぁぁ。」
「ぐぁぁぁぁ。」
ベクレスが素手で襲ってきた。
「諦めろ。」
ベクレスを吹っ飛ばした。
「勝者シンんんん。次が楽しみだぁぁぁ。」
歓声の中、部屋へ戻っていった。俺はそのまま順調に勝ち進んでいった。仮面の二人も。
「さぁ準決勝第2回戦だぁ。1回戦は仮面Tが圧倒した。だが、次は互いに圧倒的な強さを見せている二人。武器破壊、武器場外と一瞬で決めていくシン。対するは、剣の捌きは超一流、まだ何かを隠しているはず仮面S。」
「よろしくお願いします。」
「ふふふふ。そろそろ正体を明かしてもよいですかね。」
そういうと仮面をはずした。
「な、あんた。」
「つ、ついに仮面の正体が明らかになった。なんと、あのサンライトだぁぁぁ。魔剣士として名を知られ、その名に恥じない功績を残している。武道祭無敗の伝説を残しているあのサンライトだぁぁぁ。。」
「せ、先生。何してるんですか。あとなんで偽名を。」
「あなた方が出ると聞きましてね。私も加わりたくなったんですよ。偽名はサンライトなんてあったら皆様棄権する人がいますので。」
「じゃあ、もう一人の仮面はチナですか。」
「知ってるんですか。久しぶりにあって、私が武道祭に出ると知ったら、自分も出ると言いましてね。」
「あいつは偽名の意味がないんじゃ。」
「それは気分ですよ。」
「はぁ。」
「では、そろそろ。」
お互いに構えた。
「では、はじめぇ。」
互いに動かなかった。それは数秒にもわたっていた。
「ケイ、なんで動かないんでしょうか。」
カノンが素朴な疑問を問いかけた。
「うーん、なんでだ。」
「互いに警戒しているのですよ。」
いきなり後ろから声がかかった。
「ナナ。もう大丈夫なのか。」
「ええ。」
ナナの目頭が赤くなっている。
「それにこれはシンが私を納得させるための戦いです。見ているだけでも問題はありません。」
「ふふふ。」「ははは。」
「くっ、何かおかしいですか。」
少し笑ったことを怒られた。
「いや、ツンデレだな。」
「ですね。けど、渡しませんよ。」
カノンは笑顔で言っているが、気迫がすごい。
「はぁ。」
ナナもそれにつっかかった。
「シンとあなたはそういう関係ですか。」
「そうですよ。」
「なっ。シンにそんな度胸があるとは思いませ。」
「ナナ、事実だ。しかも、シンから迫ってる。」
カノンは思い出したのか顔を赤くして無言になった。ナナは舞台の方をゴミを見るかのように見ている。
歓声が沸き起こっている。
「速い、速すぎるぞ。音しか聞こえません。」
先手をきったのはサンライトだった。魔法を使うことのできるサンライトは優位に立っている。
「あなた方にリベンジですよ。」
「いやいやあの時は二人がかりですよ。」
「それもそうですね。」
サンライトは笑顔で攻めてくる。こっちは手一杯で反撃の隙をつけない。
「おい、やられとるやないか。」
「くっ。」
ブラフがしゃべってきた。
「こんなやつわしとくらべらたら遅いし、軽いやろ。」
一旦距離をとった。
「そろそろ本気を出しなさい。そんななめられた人じゃないと自分でも思うんですがね。」
たしかに本気を出していない。しかし、出せないのだ。俺の攻撃には溜めがいる。魔力は無限といっても作り出すのが無限というだけ。使う際にためなければならない。溜めの時間そこは動かない。やろうとすればすぐさまやられる。
「まだまだいきますよ。」
怒濤の攻撃が始まった。受けるしかない。
「そうか。ブラフできそうか。」
「できるな。」
確認をとった。
「シンなんと舞台の真ん中にとまった。なにをするのか。」
観客からも期待の視線を感じる。
サンライトから攻撃を一方的に受けることになっている。防御はしているが意識が飛びそうだ。
「いくぞ。反撃だ。」
動かなかった足をおもいっきり下へ踏み込んだ。
「なっ。」
今までの速度と段違いだ。
「真ん中でやったのは誘い込むためだ。どこから来るか分かりにくくするためにな。」
踏み込む度に足場が悪くなっていく。
「おい、シン。足元大丈夫なのか。」
「早めに決着をつけるさ。」
攻撃しているのだがあまりきいていない。
「おい、まさか。」
「ふふ。気づきましたか。」
サンライトは自分の体を覆うようにシールドを張っていたのだ。
止まってはいけない。次は全力で倒しに来る。だからといって策はない。
「シンー。頑張って。」
カノンの声が聞こえる。隣に座っているのはナナか。
そうだ、あいつを守るために俺は負けるわけには。その時俺になにかが流れ込んで来ている気がした。
「右手を握って突っ込め。」
ブラフが言ってきた。信じるしかない。今の力をブラフを。
「おおお。」
サンライトの正面に突っ込んだ。今までにない感覚。強すぎる感覚。気づけば勝負は決まっていた。
「サンライト場外。・・・勝者シンだぁぁぁぁ。」
歓声が聞こえる。
「ほんとに強くなりましたね。シン。」
起き上がってきたサンライトから称賛を受けた。
「いえ。これもあいつのおかげです。」
ケイたちがいる席の方を見た。ナナはすでにいない。後から聞けばカノンが声を上げたあとすぐに去っていったらしい。
カノンの姿も見えない。ケイは何かしゃがみこんでいる。周りの視線もそこに集まっている。
「カ、カノン。」
そこでカノンが倒れている。
「シン。次は決勝だ。どこへいく気だ。」
その声を無視して観客席の方へいった。
「おい、カノン。どうしたんだ。」
「さっきいきなり倒れたんだ。」
ケイから聞いた。
「おい、どこへいく気だ。」
「治療がいるだろ。修道院だ。」
「そうか。行け。」
カノンを抱えて走った。
「シンは棄権したため仮面Tの優勝となった。俺も見たかったがしょうがないでしょう。皆さんお疲れ。また、次会おうぜ。」
武道祭は終わった。
「すいません。お願いします。」
修道院に着いた。カノンはまだ起きていない。
「過労ですね。しばらく安静にしていましょう。」
俺は胸を撫で下ろした。命に関わりはない。
「うう・・シン。どうしてここに。」
「カノン。お前は倒れたんだ。無理しちゃダメだろ。」
「すいません。」
「無事でよかった。」
「ありがとうございます。」
カノンの変わらない笑顔を見ると安心できた。