行き詰まり
「シンですね。あちらの部屋でお待ち下さい。」
出場者全員に個別に部屋がある。部屋は入ったら出場まで開かない。
誰もいない部屋に入っていった。椅子が1つとだだっ広い部屋。それだけしかなかった。魔法は壁に吸収されるためなにをしてもいい。周りから音は聞こえないので、瞑想することもできる。
ブラフがいるから瞑想はできないので、とりあえず軽く組み手をかわした。
休憩中に配布された対戦表を見た。戦う順番はランダム。いつ来るかはわからない。
「俺とナナは・・・。」
反対側だった。決勝でしか戦うことはない。もう1つ気になるものがあった。仮面Sと仮面Tというものがあった。武道祭は匿名にもできたが、匿名にする人は今までいなかった。
ナナは初戦で仮面Tと戦う、俺は仮面Sと勝ち進めば準決勝で戦うことになるだろう。半年に一回の武道祭、毎回見ているが見たことはない。しかし、仮面Sと必ず戦うことになる予感はした。
扉が開く音がした。
「出番です。準備をしてください。」
扉の方へ歩いていった。
「今日1日扉から舞台までお供するリンカです。」
「あぁ。よろしく。」
不正をなくすため部屋へのウェポン、アーマー以外の持ち込みは禁止、扉から出ると一人一人に監視がつく。
あれ以降無言のまま舞台へ着いた。
「魔力の回復を行います。」
そういって手を俺の方へ向けた。
「すいません。抵抗しないでください。」
少し怒りぎみに言われた。なにもしてないんだけど。
「早くしてください。これも任務なんですが。」
「ごめん。ありがとう。」
謝って、お礼をするという訳のわからないことをいい、舞台へ上がった。ところでナレーションが入った。
「さぁ始まりました。秋の大会。今回は初出場揃い。初出場は誰も個性派揃い、出てくる度に紹介してくぜ。今回の注目はマギニファート・ワッフから出場のナナ選手だ。そして、ダークホースのシン選手。」
「ぶっ・・・」
俺かダークホース。仮面の方じゃないのか。
「謎の選手仮面S、T。今回の武道祭は見ものだぜ。では、第1回戦初戦、大きな盾で守りぬく隙あらば相手を切り裂いてしまう。守って戦うゴドフリー。」
歓声がおこった。毎回4本指にはいる実力の持ち主だ。
「対するは初出場。エントリーシートにウェポン、アーマーと始めに書き、訂正を頼めば悩んだあげく、なしと書く。俺も意図が全くわからんシン。」
嘲笑がおこった。あの時と同じ。てか、あのナレーターどこまで知ってんだよ。
「よろしく。」
ゴドフリーからあいさつされた。
「よろしくお願いします。」
歓声と、嘲笑が混じったなか始まった。
勝負は一瞬だった。
まず、蹴りで盾を吹っ飛ばした、そして間髪いれずに剣をはたき落とす。ここで相手が降参した。
勝ちかたは、舞台より落とすか、気絶する、または降参だ。負けはその反対だ。大会使用上大きな怪我を負うことはない。
誰もが息を止めた。ナレーターも声が出なかった。
「シンー。」
カノンが叫んでいる。右手拳を上に上げた。
「勝者シンーー。」
一斉にどよめきがおこった。
「試合は一瞬。何が起きたかわからない。どういったことか、気づいたときにはゴドフリーの盾と剣は場外へ。これはこれがシンの実力だぁぁぁ。」
ゴドフリーと握手をしていた。
「完敗だ。君ともっと早く出会えばもっと強くなれたかもしれないな。」
「いえ。恐縮です。」
「波乱の幕開けとなった今大会、どんなことが待っているのか。では、次の試合だ。」
部屋へ戻るとき仮面をつけたやつとすれ違った。懐かしさを少し感じる。
部屋へ戻り改めて対戦表を見た。ゴドフリーの名前が消えている。負けたら名前が消えるようだ。
眺めていくと。
「なっ。」
ナナの名前はなかった。戻っていく間に負けてしまったのだろう。
俺が戻ってからそう時間はたっていない。
「一瞬で決まってしまったのか・・・。」