決戦前に
ついにやってきた武道祭の日。毎日寝る、起きる、食事、組み手しかしていなかった。そういえば誰とも会っていなかった。
「ふふっ。シン、緊張してますね。」
「おお。カノンか。」
見るだけでこんなにも安心できるとは。体の緊張がとける感覚がした。
「どうですか。その…今日の」
少し恥ずかしそうに言ってきた。体調のことかな。
「元気だぜ。病気とかいってられねぇよ。」
「そんなこと見ればわかります。」
怒られてしまった。じゃあなんだ。
「今日もやってんな。でも、毎日心配してたぜ。大丈夫かどうか。そりゃもう仕事がてにつかないほど。自分が出場するみたいに。」
薄気味悪い笑みを浮かべているのはケイだ。
「あわ、あわ。なにいってるんですか、ケイ。
「ありがとな、カノン。」
「ふんっ。」
怒っていらっしゃる。
「応援してるからな。観客席から見てるぞ。」
「おう。ありがとな。」
去り際のカノンが目に入った。今日は受付嬢の格好じゃないようだ。
「カノン。」
「なんですか。」
「今日もかわいいぞ。」
「な、な、な。なに大声で言ってるんですか、。」
ほめたのに怒られた。しかし、カノンの顔は喜びが隠せなかった。
「なんか今日カノンが怒ってない。」
「まぁあんなことすりゃ怒るわな。」
肩に乗っている小型のブラフに話しかけていた。
「言うタイミング悪すぎやろ。」
「そうか。また、後でいえばよかったのか。」
「違うわ。お前が元気だぜとかいったときや。会ったらすぐ気づけや。」
「その時だったのか。」
「朝からのんきですね。」
しょげていた顔を起こすとその声の主はナナだった。
「どれだけ緊張しても結果は変わりませんがね。無駄な努力とともに夢も打ち砕いてあげます。」
「やらなければわからないことだってある。」
「楽しみにしてますよ。あなたが地面に這いつくばる姿を見るのを。」
「「なんか、変わったよな。」」
ブラフと俺は口揃えていった。
「そうですね。なんかどころか、すごい豹変です。」
ナナの肩に乗っているテラスが答えた。
「無駄話は終わりです。」
後ろを振り向き去っていった。
「どうだブラフ。」
「矢は無限だな。魔矢の方が威力は劣るはずだが、あいつは違うだろうな。」
「弾切れは無理か。」
ナナの成長が見られた。
「あいつがお前に話しかけたのは、同じ事をするためじゃねえか。」
「ばれたとしても、やらないとな。」
手の内はほとんどばれた状態で始まった武道祭だった。