前進するため
「はははははっ。そんなことになったのか。」
ナナとのことを話したら、ケイに笑われた。
「で、どうするんだ。」
「もちろんでる。」
「いやそこじゃねぇ。ウェポンのほうだ。おそらく出てくるのは無差別級だろ。」
「もちろんワイや。」
「おいっ。いきなり出てくんなブラフ。」
「おお。久しぶりだなブラフ。」
「久しぶりや、ケイ。」
ブラフが出てきた。いまや、実体化も可能で、大きさも人並みになることもできる。
「こいつワイ使わんと他のウェポンつがいやがんねや。けど、テラスに勝つにはワイやろ。」
グッと手を握っていってきた。
「……。」
「なんで使わねぇんだ。どうせはずせないんだし、お前のもんだろ。」
「そうだが、でも。」
「何度も言うとるやろ、あの時はしょうがないと。」
「俺もあの時の話は聞いたぜ。だから、お前がもう一度立ち上がることを望んでたんだ。だからたまに、受注所にもいってた。いつか、くるんじゃないかとな。」
「けど、俺は力がありながらも守ることができなかった。自分が許すことができないんだ。」
俺はうつむいていた。
「うっさいわ。何が力があっただ、過信しすぎじゃ。まだ、ワシに勝ったことないじゃろ。そのくせにワシができんといっとることをできるとぬかすんか。」
拳がとんだきた。
「くっ。」
「あれ以降使わへんし、こっちもなまってきてまうわ。いい加減覚悟決めて使えや。守るんやろ。」
「俺もそう思うぞ。あんなこと二度と起こさないために、起きたとき乗り越えるために、使っとくべきじゃないのか。」
二人にさとされてしまった。そうだ、俺は弱い、だが、越えられる力はあるんだ。だから、逃げるんじゃない。進むんだ。
「あぁ、わかった。いくぞ、ブラフ。ありがとな、ケイ。」
「おお。じゃあまたなケイ。」
「ブラフ、支えてやれよ。」
昔少しあっただけなのに、なぜかすごく固い友情があるようだ。ブラフは一度、消えていった。
「で、来たのはここか。まあ、妥当だな。」
「ただいま戻りました。長い間の留守をお許しください。」
来たのは道場。思い出が残っている場所だ。しかしすでに、廃屋のような汚さになっている。来たのは、あれ以来だ。当然だろう。
「とりあえず掃除だ。」
汚い場所でそのまま修練はしたくない。きれいにするのが道理だろう。
掃除は昔を思い出させた。ナナとの過去、ブラフとの出会い、日々の修練、そして師匠のこと、と。これから行うのは過去を取り戻すための戦いに備えるためだ。ここ以上に適している場所はないだろう。
「じゃ、始めようか。」
「かかってこい。」
ブラフとの組み手は何度か行った。使わなかったとしても行っていた。
「なかなかやるようになったな。気持ちだけでここまで変わるとはな。」
「強くなることを恐れてたのかもな。もし、力があるといわれても、守れないことがあるから。」
「けど、このままじゃ勝てんだろうな。」
「なぜだ。」
「もともと、俺とテラスは相性的にこっちに負がある。あと、テラスからの情報で無詠唱で打てるようになってるらしい。」
「なっ。無詠唱だと。」
「あんなでかいのもん連発されたら貯まったもんじゃねえ。」
「ブラフはテラスとやったことあるのか。」
「あるぞ。暇だったからな。」
「どうしてたんだ。」
「それは教えない方がいいだろ。もし教えたとしてもお前の力じゃない。お前は認めてもらうためにやるんだろ。」
「それもそうだな。」
同時におもいっきり一発放った。
「いい一撃だ。そろそろ休むぞ。」
「わかった。お茶淹れてくるよ。」
調理場の方へ向かった。
「おい、シンは大きくなったな。見てるか、この数日だけでこんなに変わるとはな、驚きじゃ。のう、ガネス。」
ブラフは空を見上げながらそう呟いていた。