帰還します
誰かを守るためにさづかった力のはずなのに、誰かに守られていた。それから、俺は誰もを避けた。ナナもケイも、近寄るものすべてに。一人で狩り、一人で食べ、一人で寝ている。
「これが、俺が一人でいる理由だ。」
これまでのいきさつをすべて語った。時間も気にしないで。
「ふむ。理解はしたんだがな。」
何か腑に落ちない顔をされた。チナには何か感じるところがあるんだろう。
「なあ。お前そのゴードンがお前のせいで死んだとは思ってないか。」
「・・・・・・。」
言い返す言葉がない。否定はしたいのだが、否定する気にならない。どこかでそう思っていたのかもしれないのだ。
「まあ、仕方がないのかもしれないな。大きな力を持っている人は必ずそうなるだろう。サンライト師匠も一度あったといっていた。」
「えっ。先生が。というか師匠だと。」
「ああ。いってなかったな。今でさえこんな生活をしているが昔はついていっていた身だ。弓も師匠に教えてもらった。」
「そうだったのか。それで、先生が悩んでいたこととは。」
「いつの日か友を失ったといわれていた。自分をかなり責められたそうだ。自分にもっと力があれば、もっと鍛錬を積んでいればと思われていたそうだ。だが、ある友人に救われたともいわれていた。だから、私にも後悔をしないように努力しろ、そして苦しそうな人がいれば助けろともいわれた。」
「そうだったんだな。俺の師匠は力だけを残していった。扱いきれない力を。」
この発言にチナはいきなり立ち上がったが何も言わなかった。ただ俺のほうを向いていた。
どれくらい続いただろう。お互い何も言葉を交えなかった。
「そろそろ帰ったほうがいいだろう。」
沈黙をたったのはチナだった。外を見れば日が昇りはじめていた。
「そうだな。」
そういい俺は荷物をまとめた。この言葉を最後にお互いに何も話さずにその場を立ち去った。
考え直さなければならないのかもしれない。今日語ったことでそう感じていた。
「ちょっとねぇ。」
頭のなかに響く声が聞こえた。
「なんだ。」
「ほんとに心配したんですよ。森のなかは魔力が届きにくいから探索できないのに。今までなにやってたんですか。」
カノンだった。声の大きさから本気の度合いが伝わってくる。
「すまない。オークとの戦闘で怪我をおってな。恩人と少しな。」
「ほんとに。ほんとに心配したんですからね。」
すすり泣く声が聞こえてくる。
「ありがとな。すぐに帰るよ。」
それ以降なにも聞こえなかったが、心配をかけてしまったため全力で走って帰っていった。帰って謝ることを最初にしようと考えて。