これが仕事
受付嬢の確認をもらい、俺たちは記念すべき最初の仕事へ向かった。ある程度の説明を受けたため、迷うことなくたどり着いた。
今回は、ハビバボアの討伐だ。国からのクエスト。大量発生を抑えろとのことだ。国からのクエストは門番に聞けばいい。手順がわかりやすいためおすすめされた。
「俺たちの初仕事か。」
これから毎日こんなことを繰り返す。覚悟を決めるため、小さくつぶやいた。
「行こうか。」
俺の声に二人は無言で返事をした。
すぐそこの草原にいるらしいハビバボアを10体狩る仕事だ。すごく簡単らしい。
「なにが簡単なんだ。」
想像以上の苦戦を強いられていた。一体倒すのに30分以上かかっているだろう。3人なのに。
「ナナ。打てるか。」
「は、はい。・・・あっ。」
さっきから何度か打ってもらっている。しかし、予想外の動きから当たらないのがしばしば。そして今回は、装填をミスしたらしい。
「くっ、ケイ。行けるか。」
「ああ。」
ケイは盾持ちの片手剣。バランスがとれているため初心者にもお勧めだ。
6体狩ったのだが。慣れてこない。そればかりか、一体にかかる時間が増えていっている。疲労と、早く終わりたいが故の不用意な攻撃、そして攻撃を食らうたびに増加していく恐怖心。これらが全員に溜まっていっている。
見れば二人とも息が上がっている。俺も少なからず呼吸が乱れ始めている。今までの修行に比べればと思っていたがあまかったようだ。
「ケイ。横から決めろ。」
「くっああ。」
ケイの一撃が横から入ったところでやっと7体目が狩ることができた。全員その場に倒れこんだ。
「・・・・・・」
誰も言葉を発さない。発せない。
「おいおい。大丈夫か。」
空を見上げていたところにいきなり顔を出された。見るからにおっさん顔だ。だからって反応している余裕はない。
「全員初心者でクエストとかなかなか無理するよな。受付嬢でもわかんないこともあるんだぜ。」
そのまま話を続けるおっさん。
「俺はゴードンってんだ。よろしくな、シン。」
手を差し伸べられる。俺はその手に応え、手を握った。
それから、ゴードンとシーカーとして足りなかった部分について、話してもらった。そこにあるゴードンの顔には、長く戦い抜いてきた目と、つらいことがあったような表情があった。
「・・・・というわけだ。わかったな。要は経験だ。初心者軍団で戦いにきても、訓練所主席だろうと絶対に討伐系は無理だ。」
「正直、それは肌で感じていました。まだ一つのクエストさえ終わってもないし。」
ゴードンの話には説得力があり、何か懐かしい感覚がした。
「そうですね。私は遠くから戦っているにもかかわらず焦ってしまっていました。」
ナナは、先ほどの話を聞き、反省点もわかっているようだ。
「俺は剣裁き、さらには防御すらままならなかった。まだまだです。」
ケイは経験を積むだけのはずだが、確実に学んでいる。
「俺は、攻撃の仕方がわかっていない。」
感じていた。俺の攻撃は、俺の拳はモンスターに全く決まっていない。ダメージになっていない。
「そうだな。しかし、その反省は今後のお前らを生かす。ただ、反省点ばかりのやつらは途中で動けなくなるほどの重傷を負っちまう可能性がある。それは、仲間として避けたいからな。どうだろう、俺についてくる気はないか。」
これは俺たちにとって、最高のお誘いだった。断る理由がない。
「ぜひお願いします。」
驚いたことに、今回口を開いたのはナナだった。
「二人もいいですよね。」
「まあナナがいいなら。」
「俺はお二人についていくのみです。」
三人とも意見は同じく、ついていくのみだった。この先に最悪の結末があると知らずに。