これからよろしく
俺たちは新たなシーカーとして受注所で挨拶をしていた。普通はどこかギルドに入るのだが、二人で別のギルドに入るのが嫌というナナの意向があって。お互いに断念した。今回は珍しくもう一人いるようだ。
「新しくシーカー訓練生となりました。ケイです。」
シーカーにはなる方法が二つある。一つは俺たちのように修練所卒業。もう一つは、一般シーカーについていくことを条件にクエストをこなせ、報酬ももらえる。そして、時折ある国からのクエストをこなせば晴れて一般のシーカーとなれる。いわば、実地訓練だ。
周りの人々は手をたたき。俺たちが前からいなくなると各々散っていった。
これから周りの者たちについていくことになるやつ。どんな顔を見てみた。顔立ちはよく。短く切りそろえられている髪が印象的だ。見ているとそちらからも見返された。そして、最初に発せられた言葉は
「お前あんときの。」
「えっ。」
全く記憶にない。こんな奴に絡まれる時なんて。修練所でもろくに話してないんだぞ。うーん。やっぱり思い出せない。
「どこかで会いましたか。」
「くっ。俺はお前の顔を忘れたことは一度もない。そして隣の子も。」
顔がにやけている。
「シン、昔私がシンを追いかけたときにナンパしてきた人ですよ。」
「えっ。ああ。あいつか。」
ナナは俺に隠れるようにして立ち言った。
「そうだ。思い出したか。お前ら修練所卒業したんだよな。」
「ああ。」
「だったら。」
いきなり膝をつき頭を床につけた。
「お願いします。着いていかせてください。」
「へぇぁ。普通つてがあるからやることなのに、ないから俺たちにと。」
最初に変な返事をしてしまった。
「わかるなら話が早い。頼む。お前たちしかいないだろう。」
「シン、受けてあげましょう。」
「むう。ナナがそういうならば。」
もとよりナナと二人のはずだったが、一人増えた。
「よろしくな。」
「ああ。」
互いに手を取った。
さて、記念すべき初仕事だ。どれがいいのか全く分からない。
「ふふふ。お困りのようですね。」
いきなり横から飛び出てきた。見ると俺より少し年下のように見える。
「お前は。」
ボスの登場したかのように反応してしまった。
「かわいい子ですね。」
ナナは微笑んでいた。ここでケイが何か言うと思ったが。何も言わずスルーのようだ。ナナはナンパしたくせに。
「へへっ。私はカノンです。今日よりここの受付嬢となりました。ですが、ちゃんと学んできています。なので、わからないことがあれば私に聞いてくださいね。」
とても誇らしくいっているようだ。
「おっ、これいいんじゃねえか。」
俺はというと、行けそうなクエストを探していた。
「ちょっと、聞いてたの。」
「ああ、聞いてたよ。」
目を外した。
「む、嘘ですね。」
「嘘が下手ですね。」
「もうちょい演技できないのか。」
全員にばれた。くっ、しかたがない。
「すいません。聞いてませんでした。」
「最初から素直にそういえばいいのに。カノン、受付嬢に本日よりなりました。お願いしますね。」
「あぁ。よろしく。」
「よろしくお願いします。カノン。」
「よ、よろしく。」
俺たち四人はお互いに手を取り合った。