あなたたちは可能性
その日はそのままねることにした。ナナは倒れてしまうほど疲れていたようだし、俺も疲労を感じたからだ。
しかし、腕と脚の鎧はついている感じがしなかった。寝心地はいつもと変わらないようだ。
次の日、修練所に着いたとき問題が起こった。
「おい、待て。」
「はい、なんでしょう。」
「その防具はなんだ。」
あまりに違和感がないので着けているのを忘れていた。そして、
「おい、そっちのやつもだ。」
「あっ、はい。」
呼ばれたのはナナだった。
「お前はその指輪だ。」
俺は焦った。俺は外れないし、ナナはかたくなに拒んでいた。しかし、
「おはよう。」
「「「おはようこざいます。」」」
来たのは先生だった。サンライト先生。この修練所の長。いわゆる、君たちの世界の学校の校長みたいな人だ。近接戦闘のさることながら、魔法も自由自在、人当たりがよく、皆から慕われている。男の中にはファンクラブができているらしい。信じられないが俺たちの師匠と古くからの友人だ。
「彼らの住んでいる道場の師匠は先日お悔やみになったのだ。それらは彼の形見だろう。通してあげなさい。」
「そ、そうでしたか。さぞ、大切なものでしょう。他のものにも伝えておきます。」
「ありがとうございます。」
サンライト先生のお陰でそのまま通ることが可能になった。お礼はいっておかなければならないだろう
「いいんだよ。昨日の今日だ理由ありなのは目に見えていた。あと、さっきの子を連れて訓練が終わった後に部屋まで来てほしい。大丈夫かな。」
「はい。わかりました。」
ナナには後で言っておいた。いわれた通り訓練終了後先生のいつもいる部屋に向かった。
「シン、ナナ。参りました。」
「あっ。来ましたね。」
入ると窓際に立っていた先生がこちらを向いて微笑みながら言った。
「では、こちらに。」
先生は手を差し伸べ。俺たちは指示された場所に座った。
「では、聞きたいことはたくさんありますので、始めましょうか。」
「はい。」
それから、語った。昨日あったこと、授かったものについて。そして、お互いに師匠のことについて。
「ふふふ。そんなことがあったのですね。変わりませんね。」
「そんなに前からなんですか。」
「そうですね。私がシーカーとして初めて組んだ時からずっとですね。」
「そうなんですか。」
「面白かったです。しかし、あなたたちを見ているとその時を思い出せそうな気がします。もう会えないですがいい思い出をたくさん作らせてただきました。」
「そうですね。師匠といて飽きることは、そうそうありません。」
「ありがとう二人とも。新たなウェポン。慣れるのに時間はかかるでしょう。しかし、ここで教えられえることはありません。あなたたちの努力次第で、最弱にも最強にもなるでしょう。研鑽なさい。」
「「はい。」」
そう勢いよく返し、その場を立ち去った。
勢いよくドアが閉まった。その後、サンライトは空に向かってつぶやいた。
「あなたも感じたのでしょう。あの子たちは私たちに似ていると。片や大量の魔力を秘めているもの、片や全くないもの。私たちではたどり着かなかった。少し違うけれどそれとなく似ている。私たちより極端になっている。そんな彼らなら私たちのまだ見ない、あのウェポンの先を見せてくれるはず。願うならばもう一度、あなたと一緒に戦いたかった。」
届かない言葉を淡々と重ねていったサンライトの頬には、滴が流れ落ちていた。