新たな生活
光が収まり目を開けると師匠がよく座っていた場所に戻されていた。隣を見るとナナがこちらを見ていた。その手には、弓と思わしきものが握られていた。
「えっと。ただいま。」
「うーむ。どう返すのが正解でしょうか。私もいまいま戻ってきましたし。とりあえずおかえり。ですね。」
話からすると同じタイミングで戻されたらしい。
「じゃあ。おかえり。」
「はい。ただいまです。」
にしてもナナに疲れの色が見えない。ナナに抜かされるほど、修練がおろそかになっていたと反省をした。
「ナナ、その弓は。」「シン、その恰好は。」
声がそろっていた。お互い気になっていた。弓は一般用のものだ。戻ってきたら鎧を付けている。
「落ち着いて。話そうか。」
そういい、師匠がいつも座っているように座り。ナナも同じように座った。
「じゃあ。俺から話すよ。」
「はい。」
と、お互いに聞いたことを話した。
「にしても、弓がね。そんなにも。」
「そんなこと言ったら、そっちも一見ただの防具じゃないですか。」
「それもそうか。」
お互いにあったことをすべて話していた。魔力のこと以外は。
そのままそこで話していると、いきなりお互いの武器が輝きだした。
「なんだ。」「なんでしょう。」
驚いていると
「よっしゃ。出てこれた。」
「やっと。出られました。」
ちいさいやつらが出てきた。
「おっ。久しぶりやな。テラス。」
「そうですね。ブラフ。五百年前以来でしょうか。」
「そんなに前か。長いことおったな。」
「ちょっと待って。なんであんたが。」
「そらそうやろ。そいつに宿っとるんやで。」
どうやら同じような会話をナナのほうでもしているらしい。
「にしても、あの子めっちゃ可愛いな。」
「そうだな。結構周りの目を集めてるし。」
「好きなんか。」
「それはないかな。あくまで同じ門下生同士だし。」
ナナのほうを見ると少しふくれっ面をしている。なんかあったのかな。
しかし、これからずっとこんな生活をするのか。常にまとわりついていられる感じだ。正直いい気分はしない。
「なあ。性格変わったな。」
「まあ。そうやな。あっちでは一応守護神やしそういう感じでやらんとな。」
「大変だな。そういえば、いつまでいられるんだ。この状態で。」
「わからんな。たぶん、一時間程やないかな。あっちで実体化できとったのもそんくらいやし。」
それを聞き胸をなでおろした。
「けど、いつでもしゃべれるで。」
「えっ。」
「いつでもしゃべり相手になるで。」
「まあいいけど。訓練所とかではやめてくれよ。」
「わかった。そろそろ、限界みたいやな。早いがたぶん出てくるのに手間取ったからやろ。次はもうちょいあるで。疲れたし寝るわ。またな。」
「ああ。」
そういい、消えていった。ナナのほうでも同じことが起こっていた。
「ナナ。」
「はい。」
「にぎやかになりそうだな。」
「そうですね。」
そう、微笑みあった。
「この弓どうしましょう。持ち運ぶの大変そうだな。おいてくのも忍びないし。」
悩んでいると。
「ナナ。それは魔力によって構成されたものです。実物は指輪です。指輪を思い浮かべてください。」
言われた通りにすると下から消えていき最後消えると手の中に指輪があった。
「すごい。きれいです。」
「弓を思い浮かべればつけたままでも具現化できます。しかし、魔力を少々つかいますので、気を付けてください。では。」
そういい、それ以降返事しなかった。少し無理をしてくれたのかもしれない。
「シン。」
目を輝かせこちらを見ている。
「あの、ですね。大変無礼なお願いなんですが。」
「無礼って。同じ年だろ。」
「これを、私につけてください。」
「いいよ。」
「いいんですか。ほんとに。うれしいです。」
子どものようにはしゃいでいた。こんなナナもかわいいと思う。
「では、お願いします。」
ナナは指輪を俺に渡し、左手を出した。どの指かわからずとりあえず人差し指に着けようとすると、すかさず
「薬指にしてください。」
と言われた。いわれた通り薬指にしてやると、ナナはそのまま顔を真っ赤にして倒れこんだ。熱でもあったのかな。そういって確認しても熱はなかった。目を覚まして、その状況を見たナナは、また気を失い、その時、少し熱が上がった。しかし、顔はとてもうれしそうだ。
「シンが・・・ふふっ。・・・・・はっ。」
飛び起きた。布団にいたので夢落ちを想像して指を確認すると、そこには薬指にはめられた指輪があったので、そのまま喜んでいた。
「起きたのか。」
「えっ。はい。」
もう一度状況を考えてみるとそこは自分がシンを運び、寝かせた場所だった。もう一度、倒れそうだったが心配させてしまうだろうため、踏みとどまった。
「すまんな。緊急だったから。用意されていたものつかちゃって。」
「いえ。ありがとうございます。」
「えっ。」
「いや。気にしないでください。」
「夕飯作ったけど食べるか。」
「はい。」
今日より二人の(正確には二人と二体の)新生活が始まった。