こ、これは シン編
ナナと別れてから全力で走っている。というか、走らされている。
「なんなんだよ。ここはーー。」
四方から矢が撃たれ、床は不安定、背後より壁が迫ってきている。止まろうものならハチの巣になりつぶされてしまう。ナナと別れて以来数秒後より走り続けている。
「ぐわああああ。師匠のあほーー。」
届く勢いで叫んでいた。やっとの思いで広い場所にたどり着いた。そこで矢はやみ、壁も止まった。
「着いたのか。」
そこは、緋色のクリスタルが輝き、真ん中に祭壇があった。近くに行き、真ん中に立った。そうすると周りの光が一層強まった。
「くっ。」
目を覆い、光を遮った。しばらくしてから視界を開けると、そこには巨人がいた。
「我は、ブラフ。この場に来たものをためすもの。貴様の名は。」
「俺は、シンだ。」
「ほう。貴様が。よく話は聞いておる。」
「えっ。師匠ですか。」
「そうだ。貴様が入門した時からすべて聞いておる。貴様、あやつからよく言われたことを覚えているか。」
「ああ。武器の性能には頼るな。いざという時だけ使え。と、よく言われていた。」
「そうだ。お前はなぜそういわれるか。聞いたことはあるか。」
とても優しく言われた。
「ありません。ですが、自分でも納得はしています。自分の力を過信してしまうからと思っていましたが。」
「それもあるだろう。あやつの戦い方もそうだった。しかし、それだけならば毎回言わなかっただろう。」
「えっ。ほかにあるのですか。」
師匠が俺に伝えきれなかったことがあったとは。そう考えると、もっと深い理由があるに違いない。そう思い答えを待った。
「ウェポンを使う際にうまく使いきれなかったことはあるか。」
「よくありました。」
「それがなぜかわかるか。」
「ウェポンの調子が悪いと思っていましたが。違いますか。」
「違うのだ。あやつより貴様がここに来た際教えておいてくれと頼まれていた。貴様には魔力がないのだ。」
「えっ。では、発動できなかったのは使い切れなかったわけでなく、ウェポン内の魔力が尽きたからということですか。」
「そのとおりだ。」
俺は愕然とした。ナナは膨大な魔力を持ち、かたや俺は全くない。
「そうか。」
「おもうたより早く受け入れたな。」
「まあな。あがいてもないんじゃ増やすこともできないし、師匠のいうことだから本当のことだろう。」
このとき、受け入れはしたが、先が見えず絶望をしていた。
「しかし、それゆえあやつは貴様に期待をしていた。」
「師匠が。」
「ああ。ここはあるウェポンを守るための場所であり、我はその守護神である。」
「何を守ってるんだ。なにを守っていようと俺には関係がないだろう。使うことができないだろうし。」
「いや。貴様にしか使えないだろう。」
「なにっ。」
その言葉は俺を絶望から救い上げた。
「ここにあるウェポンは無限の魔力を生成する。我は魔力を作り出す源だ。しかし、私は他のものの魔力を寄せ付けないのだ。それゆえ、作動しないどころか、勝手に装備解除されてしまう。それを、あやつは知っておった故、期待をしていただろう。しかし、それだけではなさそうだがな。」
「そんなものがあったのか。」
「気に入ったのならば渡してくれと頼まれていた。どうだ、受け取るか。」
「いや。遠慮しとくよ。今まで魔力がなくても戦えこれたし、これからだってやってやる。ナナにも最近勝負に負けたが追いつかれたりはしないようにする。だから、やめとく。」
「ふっ。そうか。」
「ああ。あんたと師匠には悪いがな。」
「我もか。」
「俺が使わなかったらあんたたぶんこれから一生このままだろ。だから。」
「それもそうだな。しかし、知って間もないやつに心配されるとはな。」
「そうだな。」
「気に入った。我はついていこう。」
「えっ。でも、さっき。」
「貴様に拒否権はない。」
そういうと、周りがまた強く光りだした。
「うわっ。」
腕と足に少し衝撃がはしり、少し圧迫感がする。
再度目を開けるとそこに巨人の姿はなかった。さっき衝撃があったところを見ると。
「これは。」
「見たことないから無理はないだろう。」
「これはウェポンじゃなくて。防具だろ。」
腕と足に鎧がつけられていた。
「れっきとしたウェポンだ。試しに岩を殴ってみろ。」
そういわれしぶしぶ床を殴ってみた。するとそこに隕石が落ちたかのようにクレーターができた。
「すごい。」
「これが守護神ができるものの威力だ。これは一部でしかない。土魔法と同じようなことも可能になる。」
「そうなのか。」
強さに納得した。
「おい待て。外すことはできんぞ。」
言われた通り外すことはできない。
「受け取らないっていったじゃないですか。それに勝手に外れるのに、意図的には外せないんですか。」
「拒否権はないといっただろう。外せないのはよくわからん。地上まで行くぞ。」
「えっ。ちょっと。」
周りが光に包まれた。