こ、これは ナナ編
シンと別れてそのまま道なりに進んできた。モンスターが出るわけでもなく、トラップがあるわけでもない。シンのほうも心配することはないだろう。
「にしても、どこまで続いてるんでしょう。」
ずっと、同じような場所を歩いているだけなので進んでいる気が全くしない。なので、
「よし、スピードを上げましょう。」
長い修練を重ね、パフをかける魔法は少々使えるようになった。そのなかで、移動速度を強化し、走った。
そこから数秒走ると、先に青白い光が見えてきた。おそらく、目的地だろう。
「着きました。」
そこには水晶が周りにあり、真ん中に祭壇があった。明らかにあやしいのでそこに向かった。
「なんでしょう。何かを祭るものではあるんでしょうけど。」
するとかすかに声が聞こえた。
「中央に立て。」
空耳かと思ったが、それにしては内容がはっきり聞こえた。とりあえず祭壇の中央に立つことにした。
「これでいいのでしょうか。」
しばらく待っていると、祭壇の周りが光だし、それに共鳴するかのように周りの水晶も輝きだした。
すると、目の前に神を思わせる幻像が見えた。
「我が名はテラス。この場に来たものをためすものだ。そなたの名は。」
「私はナナ。師匠にいわれここに参りました。」
堂々とした態度で、臆することなく言い放った。
「そうか貴様が。あやつからよく話は聞いておる。魔法の才能が全くないと聞いているな。」
「うう。反論する言葉がありません。」
テラスは続けていった。
「貴様は膨大な魔力を秘めている。おそらく、このようなものはまれにしか見ないだろう。気にとめたのだろうな。」
「えっ。ばれてたんですか。」
「あやつから聞いてはいたが、想像以上だな。解放さえすれば、町一つつぶすのも容易だろう。しかし、うまく扱えないのだったな。そんな貴様に託すべきといわれていたものがある。受け取れ。」
テラスが手を前に掲げると、ナナの手元に武器があった。
「こ、これは。弓ですか。」
「そうだ。」
「でも弓って、誰でも使える簡単な狩り道具ですよね。」
「甘く見てもらっては困る。それは、一本の矢を放てば数発の矢が放たれる代物だ。そこいらの狩り道具とは違い、これはれっきとしたウェポンだ。しかし放つ際、本数に応じ魔力が大量に消費される。使い勝手はいいが簡単に使えるものではない。だから、誰も使わなくなり、ここに置かれていたということだ。われの魂もそこに打ち込まれている。」
「そうなんですね。魔力はあるけど、狙いが定められなかった私にとってとても好都合ですね。」
「そうだな。私が認めたものしかそれを扱うことはできない、他人に貸しても無駄である。」
「あっはい。大事に使いますね。」
「壊れはせん安心してつかえ。ではそろそろ戻ろうか。」
そういうと周りが光りだした。