ではこちらへ
俺はシン19歳で、シーカーだ。始めてから3年目の安い家賃でのひとりぐらし。
「ふぁぁぁ・・。じゃ今日も行くか。」
大きく伸びをして、俺は一般に向けたクエストの受注所へ向かっていった。シーカーたちは、モンスターの素材を売ったり、それを集め依頼者に渡したり、討伐の依頼をこなし稼いでいる。かくいう俺もその一人だ。クエストは、各ギルドごとに頼まれるものと、俺が今向かうように一般向けがある。
「さて、今日はどれにするかな」
「あ、来たんですね、シン」
こいつは、この受注所の受付嬢の一人といっても二人しかいないが、カノンである。俺と同じ時期に仕事を始めた、いわば同期である。それ以来しつこく声をかけてくる。まったく、うっとうしいことこのうえない。
「おはよう。はぁ」
「ため息つきましたね。幸せ逃げちゃいますよ。まったく私が話しかけるたびに、ため息つくんだから」
「お前もそれ分かってるなら、話しかけんなよ」
「ぐすん。シンが、話しかけるなって。話しかけるなってぇぇ。どうせ私はいらない子なんです。いても邪魔なだけなんです。」
そうそう、いってなかったがカノンはすぐに泣く。そして今も泣かれてしまった。
「また泣かしてる」
「ほぼ毎日じゃないか」
「なかいいよな」
くそっ、このままでは俺が泣かせる趣味でもあるように見えてしまう。まあ、すでにそんな噂はたっているいが。たくっ、めんどうだな。
「わかった、わかったから。話しかけてもいいから、なんならクエスト終わってから食事にでも付き合ってやるから」
「ほんとに」
「ほんとに」
「食事はおごりで」
「俺のおごりだ」
「やった。ありがとシン」
そういって、カウンターに戻っていった。
切り替え早いんだよなあいつ。しかし、これで何回目だ。毎回狙ってないか。そう思った。また痛い出費である。日にちはさっき約束したから越えられないし。軽いのを2個ほどかな。
じゃあ、と悩んでいるといきなり
「シン、悩んでるならこれなんてどう」
いつ戻ってきたのか、これを進めてきたのはカノンだった。しかし、報酬は10mと相当高かった。依頼内容は、と見たところで気が付いた。
「お前これ4人以上推奨って書かれてるじゃないか」
「シンならいけますよ。それか、パーティー組めばいいじゃない」
カノンはちらりと周りの人々を見た。そして、周りから視線も感じた。
「お前な」
「まだ、引きずって」
「俺は二度とパーティーは組まないし、ギルドにも属さない。ずっとな」
「じゃあ。私もずっとここの受付嬢ね」
「お前ならどこかのギルドでやっていけるだろ。そっちのほうが給料いいんだろ」
「いやだよ。シンの来ない受注所なんて。それに信じてるから。いつかシンが自分のギルドをもつこと」
「そうかよ。立ち上げる気はないし、金が圧倒的に足りんわ」
「大丈夫だよ、シンなら。それにお金なら私も・・」
「ま心配ありがとな。とりあえず俺行くわ」
と、適当なクエストを2個とり、カノンに差し出した。それを、カノンはあわただしくとり、確認した。受注者に無理がないかどうか見極めるのも受付嬢の仕事だ。確認し終えると
「この町郊外のリザードの群れの討伐と同じく森オークの討伐ですね。気を付けて、いってらっしゃい」
「おう」
そういい俺はさっさと外へ向かっていった。