母親
私は、不幸だ。今まで、そう思って生きてきた。そして、これからもそれが変わることはない。きっと、私の一生はずっと不幸のままなのだ。そう思えば諦めがつく。私は幸せになれぬまま、一生を終えるのだ。
そう考えると、涙があふれた。何で、諦めたはずなのに、何で、何で…。何で、自由を求めるのだろう…?
朝は、誰にも起こされずに、寝坊もせずに起きる。中学に行くのに起きるには少し早い時間だ。私は鼻歌を歌いながら、物音を立てずに箱を取り出し、ふたを開ける。なにせ私は中学生。化粧したがるのはおかしくはない。化粧をする時間は、私の一番お気に入りの時間だった。
化粧をし終えて、私はメイク落としで拭う。上手く出来たとしても、拭う。それは、この家にいる限り絶対だった。
「紫苑、起きてる?」
「あ、はい!」
「そう。ならさっさと下りてきて朝食を食べなさい」
「はい!」
私は階下に降りる前に私は髪をポニテに結ぶ。これは私に一番似合う髪型で、私が男に見える髪型でもあった。
「おはようございます、母さん」
「おはよう、紫苑。今日もイケてるわね、真面目系タイプ」
…私は、女なのに…。もちろん、私だって普通の女子のような髪型をすれば女子に見える。なのになぜわざわざ男装するのかというと、お母さんが過去にお父さんなどの男性といろいろあって大変だったらしい。自分の母がなっているとなると少し嫌だが、お母さんの過去の話を聞けば同情くらいはできる。
お母さんは、最初は普通の人だったのだ。初めの彼氏に遊ばれて簡単にフラれ、お母さんは同じ事を何度も繰り返し、そして異性恐怖症になった。そのとき、お母さんに神のように舞い降りた天使が私のお父さんだ。お父さんはお母さんを大切にした。だが、それにも満足せずにお父さんにもっと愛を求めた。お父さんは困り切っていた。そこで私を置いて、一人で逃げた。お母さんは完全に壊れた。そして、女である私を嫌いになった。普通は男かと思うのだが、違った。違ったのだ。お母さんが付き合った彼氏は全て友達から紹介を受けたもので、あいつらは私を傷つけるために仕組んだのだ、とお母さんは言った。男は金欲しさにしたがっただけ。だから、女を憎む。私はおかしな話だと思うが、それでも嫌いなものは嫌いなのだ。私はそんなお母さんに同情した。そして、これから数十年、2人で暮らすのに、凶暴なお母さんの機嫌を損ねたら大変な事になる。
私は生きたい。私は、死にたくない。だから、私はお母さんが望むままに男装した。こうすれば、お母さんは女の私を忘れて、リラックス出来るらしい。私は、お母さんの望むままに生活した。お母さんの前では『母さん』と呼ぶし、部屋も、やることも男の子らしくした。そうすれば、きっとお母さんは私に愛情をくれる。女でない私には。
そう思っていたが、お母さんの望みは大きく膨らみ、望みや願いよりも大きいわがままな状態になってしまった。おかげで、今の私の自由は無い。だから私は今、男子校に通っている。女子ということをみんなに隠して通っている。お母さんのわがままで…。
あのとき、何でもかんでもお母さんのいう事を聞こうとしなければよかったかも知れない。だけど、もう手遅れ。もう、お母さんの暴走は止められない。
こんにちは、桜騎です!ヴァンパイア、ネックレスを読んでくださった方、すみません。少し飽きて、想像力不足になってしまったので、今回はこちらを書かせていただきました。多分新話の前に2話3話を手直しさせていただくと思います。なのでしばらくはこちらを楽しんでいただけたらなと思います。あと、きっと今回の話はつまらなかったと思います。次回からは思いっきり話が進んで私のいつものペースになると予定しておりますので、次回も読んでいただけたら嬉しいです!よろしくおねがいします。