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第6話 家族

 忙しさも時には特効薬になる。命を奪ったという重圧もそうだった。


 ダドゥがいなくなって、ダドゥのゴーレムが崩れてしまったため、代わりに俺のゴーレムに仕事を任せた。監督する改造人間たちの話を聞いて仕事の内容を覚えさせた。ゴーレムがいなくとも、改造人間の負担は増えるが塔の機能を維持できそうな辺り、ダドゥは自らがいなくなった後について考えていたのかもしれない。


 改造人間たちは課せられた命令を続けた。期限付きの命令を終えた者は、各々の許されている範囲で生活を営んだ。ダドゥと交流がほとんどなかったようで、死を悲しむ者はいない。

 このまま放ってはおけない。改造人間について調べることにした。


 改造人間の素性は身寄りのない奴隷だ。足りなくなれば子供を買ってきた。

 と言っても、重労働はゴーレムが担い、衣食住を与え、大人になったら働けるように勉強をさせたという、日記のような記録が残っている。

 当初は改造などしておらず、やんちゃな子には手を焼いたらしい。まるで孤児院のような印象だ。一人一人の名前を記し、あれこれ対策まで練って、慈しんでいた。


 記録も進むと、桁違いな長寿のダドゥと比べて、初期の子らから年老いて亡くなっていく。ダドゥの深い悲しみが文章から伝わってくる。

 次第に月日の間隔が空いていき、内容が不穏になっていった。主に命や死についてだ。

 悲しみがこの世への憎悪に変わったところで、記録が終わっていた。おそらくその後、心を病んだダドゥは、改造も辞さなくなってしまったんだろう。


 たぶんダドゥは相手と心通わせた景色が見えていたんじゃないだろうか。だから親しくなろうとした。親密になるほど別れが辛い。今の俺なら少しわかる気がする。その辛さを何度も経験する苦しみは計り知れない。


 シロには見せたくなかったが、


「ヒロ一人に背負わせはしません」


 そう言って手伝ってくれた。


「ヒロと一緒にいるうちに、私にも他の家族がいたのだろうかと考えたことがあります」


 少し寂しそうなシロに、何て声をかけてあげられるだろう。何も思いつかない自分が歯がゆい。


「ヒロと同じですね」

「同じ?」

「今の二人とも、家族はお互いだけです」


 家族か、シロはどんな家族だろう。どんな単語も近いようで遠い。

 でも、家族というくくりに当てはめると、しっくりくる。


「うん、僕とシロは家族だ」


 シロはポンポンと俺の頭に手を乗せた。


 調査は続く。

 改造人間を元に戻せるかどうか。途方もなくて挫けそうだ。

 ならばせめて、記憶を取り戻せないだろうか。忘れたくなかった思い出があるかもしれない。もしシロを忘れてしまったらと考えるだけでゾッとする。

 でも、果たして取り戻すべきなのだろうかとも思う。奴隷だった頃の記憶を思い出しても苦しむだけなんじゃないか。

 どうするにせよ、まずは記憶を取り戻す術を探してみることにした。


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