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白いカトレアの花言葉(旧題:白いカトレア)  作者: 由布 叶
第1章  幼少編
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【2】   今の私、 私の家族

二歳児ってどこまで話せるのでしょ?


※一部修正しました。話の内容に支障はありません。(2014/08/30)

祖父…リュード

父…ジーク

母…シルヴィア

 初めまして、こんにちは。

 突然ですが質問です。ここはどこでしょう? 

 ベッド周りには囲いがあって一人では降りられない仕様になっている。

 私は今しがた至福のお昼寝から起床したところ。

 はい、答えは子供部屋です。子供たちが遊ぶための部屋。子供が大きくなったら勉強部屋になるらしい。

 これ、自室とは別です。知った瞬間どんだけ金持ちなんだとツッコんだよ。誰も気づかなかったけど。

 短い手足を使って起き上がる。自分じゃベッドから降りられない誰か人を呼ばなきゃ。

 喋れないんですけどね?

 私、なぜか今幼児やってます。


          ○●○


 転ぶ、と思った時にはもう手遅れだった。

 どうして子供は咄嗟(とっさ)に足を出して踏み止まる、ということができないのだろう?

「きゃあ」

 何もない所で(つまづ)き、それはそれは見事に転んだ。

 間抜けな声を出してしまった。

(なにがきゃあ、だよ! わざとらしっ! わざとじゃないけどさ)

 カトレアは無意識に自分が発した言葉に悶絶した。

 転んだことよりもこちらの方が恥ずかしい。


「カトレアっ! 大丈夫? 怪我したの?」

 なかなか起き上がらないカトレアに駆け寄ってきたのは可愛らしい少女だ。

 彼女はカトレアの六歳年上の姉、ネフティリアだ。

 母親譲りの金色の髪と翠の瞳が愛らしい。将来は絶対に美人になるといつも母と姉を見ながらカトレアは断言する。もちろん心の中で。

「いたい、ないない」

 大丈夫だとネフティリアに分かるように手を振ってみせる。

 言葉が上手く紡げない。言いたいことは山ほどあるのに文章にして話せないのだ。

(心の中ではすらすら話せるのに)

 二歳児の身体には難しいらしい。

 はぁ、とカトレアは幼児らしからぬため息をつた。

「うそ、お膝擦りむいてる」

 可愛らしい顔をしかめてネフティリアが言う。

 ちょっと見せて、と前置きして小さな手をカトレアの擦りむいている膝にかざした。


【我願う、我願う。我の声に(いら)えて叶え(たも)う。この者の憂いを晴らしたまえ】


 かざしたネフティリアの手元が仄かに光を発しだした。

 柔らかな光が擦りむいた膝を包み込む。

「おおっ!」

 遅々とした速度ではあるが治り始めた怪我に感嘆の声を上げる。

「しゅこい、しゅこい!」

 目を輝かせてカトレアは手を叩く。大喜びである。


 何度見てもすごいと思う。

 最初「すわっ! 魔法かっ!?」と思ったがどうやら魔法とは違うらしい。

 誰も教えれくれないし、上手く喋れないから質問もできない。すっごく気になるのに訊けない。もどかしい。

(あ、でも魔法もちゃんとあるんだよね。剣と魔法の世界だよ。ファンタジーの世界だよ)

 とても夢が詰まっているとカトレアは人知れず怪しい笑みをもらすのだった。


「もう大丈夫よ。立てる?」

 妹の素直な反応に少し照れて頬を染めるも手を差し出して立つのを手助けしてやる優しい姉に心が温かくなる。

「姉上ー、カトレアー」

 後方から呼ばれる声に姉妹は振り向く。

「どうかしたの? エヴァ」

 こてん、と首を傾げて問う姉にカトレアは内心で悶絶する。

(お姉様、可愛すぎます)

 鼻血ものである。赤い飛沫の幻覚が見えそうだ。

 当然表面上はポーカーフェイスを装っている。

 ポーカーフェイスを会得している二歳児とかイヤだな、と他人事のようにカトレアは思った。自分のことだけど。


「こんな所にいたんだ。母上が探してたよ」

 とことこ、という表現が似合いそうな少年は近づきながらそう言った。彼はカトレアの四歳年上の兄、エヴァートン。

 みんな愛称で呼ぶから、カトレアは最初「女の子みたいな名前だな」と思っていたのは内緒だ。

 父親譲りの鳶色の髪に翠の瞳は母親譲り。姉同様将来は有望だと自分の姉兄に悶絶する日々だ。当然心の中で。

「あら、そうなの? 何かしら?」

「そう言えば、今日はお客様がいらっしゃるって言ってなかった?」

 歩き出したネフティリアに手を引かれてカトレアも短い手足で歩き出す。反対の手はエヴァートンと繋いでいて両側から支えられているような状態だ。

「ああ、言ってた気がするわ」

 今思い出した、とネフティリアがのんびりと答える。

「おきゃくしゃん?」

「うん、誰が来るんだろうね」

 


 そう遠くに居たわけではないのですぐに着いた。

 どこぞの世界の豪邸かっ!! とカトレアが誰に気づかれることなくツッコんだ我が家は屋敷と言って差し支えのない広さをしてる。

 エヴァートンが玄関の扉を開けようと手をのばす。あと少しで手が触れようとした瞬間、突然内側から扉が開いた。

「おおっ! ここに居ったのか。ネフティリア、エヴァ、大きくなったの。カトレアはもう歩けるのか」

 そう言いながらカトレアを抱き上げた。

「……」

「まあ、お祖父様。ごきげんよう」

 驚き固まっているエヴァートンに対し、ネフティリアはマイペースに挨拶をする。

 父、ジークと同じ鳶色の髪には所々に白が混じっていて、若い頃はさぞモテたであろう祖父、リュードはジークが年を重ねればこうなるであろう容姿をしている。

「おいーしゃま!」

 カトレアは祖父(リュード)が大好きだ。

「父上、扉は丁寧に扱ってくれるかい」

「三人とも一緒なのね。エヴァったらそんなに驚いたの?」

 リュードに続き美しい男女が出てきた。カトレアの両親だ。

「エヴァ、それくらいで動揺していてはいざという時に冷静な判断を下せないぞ」

 ジークは騎士である。

「……っ!? 父上、母上。あ、お祖父様こんにちは」

 ジークと母、シルヴィアの声にエヴァートンは我にかえる。

 エヴァートンも将来は父のような騎士になりたいと日々努力している。

「カトレア、お義父様に会えて嬉しそうね」

 そりゃあもう、大好きですからテンション上がりまくりです。

(だってお祖父様には夢が詰まっているからね)

「カトレアはますます祖母様に似てきたの」

 肩口で切りそろえられた銀色の髪を撫でながらリュードは懐かしそうに目を細めた。

 

 お祖父様(リュード)の奥さん、(ジーク)の母はネフティリアが生まれる前に亡くなったそうだ。

 一目で親子と分かる姉兄と違い、カトレアは祖母とそっくりな容姿をしているらしい。

 肖像画を何度か見たことがあるが、銀の髪に紺の瞳はカトレアと同じ色だ。

 祖母は独特な雰囲気をもった人だったらしい。どこか浮世離れした、しかししっかり自分をもっている不思議な人。

 

 彼女は占師であったそうだ。

 母と姉は法術を操る聖女――男性の場合は聖人――で父と兄、ついでに伯母夫婦は騎士。そして祖父は魔法使いだ。

 先代、祖父の代は魔法使いとして。当代、父の代では騎士として。代々「カーメルセ」の家位をいただく才能豊かな家系だ。

 カーメルセ、とはこの世界での爵位のこと。

 剣と魔法とたくさんの夢が詰まった世界にカトレアは生まれた。


 カトレア・カーメルセ・シゼリウス


 シゼリウス家の娘。それが今のカトレアだ。


カトレアは魔法が大好き=魔法使いの祖父が大好き。夢が詰まってます。

名前の表記は「名前・家位・苗字」になります。


「カーメルセ」は一代限りの家位です。

次話で色々説明を入れたいと思います。

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