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【6】   ビーの悲劇+他

どうも、長らくお待たせしました。

また長らくお待たせするかもしれませんがなんとか書けましたので更新いたします。

※ 【注】は削除しました。

     ◆ビーの悲劇◆


 我が家には天使がいる。その愛らしさはどんなものも凌駕する。可愛さこそが正義である。この世の真理である。

 ……などと断言できるくらいには我が家の天使は最強だとカトレアは思っている。


「ねーしゃまー。かとえあねーしゃま」

 まだ舌っ足らずだが言葉を話すようになり、まだ足元はおぼつかないが一人で歩けるようになった。

 とてとて、と可愛らしい効果音が聞こえてきそうだ。

 その天使がカトレアの名を呼びながらこちらに向かって歩いてくる。

 魔術の勉強を終え、別邸から戻るとわざわざ待っていてくれたのか、弟のリシューが出迎えてくれた。


(家の子マジ可愛い!)

「リシュー!」

 にこやかに手を振り応えて、内心ではリシューの可愛さに悶えている。

 脳内には顔を真っ赤にさせて足をばたつかせ、ゴロゴロと転げまわるもう一人のカトレアがいる。

「お迎えに来てくれたの?」

「うん、かとえあねーしゃま、まってたの」

 表面上はいたって普通だが。

「ありがとう。それじゃ、戻ろっか」

「うん」

 二人で手を繋いで子供部屋まで行き、その日は夕食の時間までたっぷり遊んだ。



          ◆◇◆◇◆



 別の日。

 カトレアは用事があって母、シルヴィアとともに出かけようとしていた。

「カトレア、忘れ物はないわね?」

「うん。私、基本荷物ないから忘れ物はないよ」

「そうだったわね」

 うふふ、あはは、と笑いあう親子。深い意味はない。

 カトレアの場合、荷物は全て影の収納スペースにに入れてしまうので出かける時は手ぶらである事が大半だ。楽でいい。


「おかーしゃま、かとえあねーしゃま」

 シルヴィアとカトレアがそんな会話をしていると天使の声がした。

 声のした方に顔を向けると我が家の天使、リシューが階段を下りてくるところだった。

 一段一段ゆっくりと、片手はリリアと繋いでいて反対側にはウサギのぬいぐるみのビーを握っている。……握っている。


「まあ、リシューどうしたの? 危ないからゆっくり降りてくるのよ?」

 シルヴィアは朗らかに言い、待つ構えだ。

(片足ずつ降りてくる姿も可愛いっ!)

 カトレアの弟は可愛いのだ。

(可愛いのだけれど……無意識による残酷……)

 カトレアは内心涙目だ。


 ビーはまだ赤ん坊だったリシューの等身大で今のリシューより少し小さいくらいだ。

 座った状態で抱いているなら何も問題ない。むしろ可愛い。

 ……要するに何が言いたいかというと、リシューではビーを持ち運べないのだ。


(リシューぅぅぅ。あぁ、うちの子がぁぁぁー)

 しかも、リシューはビーの耳を握っている。

(耳がもげちゃうぅぅぅーー)

 ウサギの耳というのは当然ながら頭の上についている。それを握っているということは必然的に顔から

下は引きずられているということ。

 しかも、そこは階段。リシューが一段降りごとにビーはガツン、ガツンと全身を強打されている。

(ビーが可哀そうなことになってる……)


 カトレアのことを呼びながら降りてくるリシューはとても可愛い。けれど、それと同時に全身を強打しながら降りてくるビーが可哀想すぎる。

 製作の時点で施してある『浄化』と『復元』の魔術のおかげで壊れたり汚れたりすることはないが、あれは見ていて痛々しすぎる。

 作った身としては悲しい。

(あれ、おかしいな。目から水が出てきたや)

 ぐすん。


 リシューが歩くようになり、ビーを色々な所へ連れ回すようになった。

 それだけ気に入ってくれたと思えば嬉しいが現実を見ると心境は複雑だ。

(もう、今日は部屋に籠ろう……そうしよう)


 隣では無事に階段を降り切ったリシューを抱き上げ、シルヴィアが褒めている。

「お母様、私今日は出かけるのやめるよ」

「あら、突然どうしたの? どこが具合が悪いの?」

「うん、ちょっと(心が)」

 気遣わし気に尋ねるシルヴィアに、若干遠い目をしながら曖昧に答える。

(部屋にこもっていじけてやる……夕食の時間までいじけてやる!)

 時間限定の引き籠りを決意したカトレアだった。




          ◆◇◆




     ◆潜入調査◆

 

 どもども、皆さんこんにちは。お馴染みのカトレアです。

 さて、テンション高く実況をしている私ですが、いったいどこに居ると思いますか?

 ……答えは何と……厨房です! わーい。


 お母様には料理はしては駄目だと止められちゃいましたけど、私はどうしても料理がしたい。

 と、いうか和食が食べたい。

 それなら作ってもらえばよくね? とか思ったあなた。その通りです。

 でもこの世界のキッチン事情も気になるのです! だって色んなことが気になるお年頃なんです。

 そういうことにしておいてください。異論は認めない。

 

 でも、お母様は駄目だと言うのです。

 (爆発云々は置いておいて)確かに、お母様の言うことも分からないでもないのです。

 普通に考えて子供が料理なんて危ないですもんね。

 でも、「駄目」と言われたらやってみたくなるのが人の(さが)、心情といものだと思いません?

 しかし、見つかったら怖いのです。


 そこで私は思いついた!

「なら、バレなければいいんじゃね?」

 と。

 バレないようにするにはどうしたらいいのか?

「魔術を使えばいいんだよ。だって私は魔女もの」


 私は一生懸命頑張りました。目的のためらなば努力は惜しみません。手段だって選びませんよー!

 私はやればできる子です。えっへん。


 会得したのは『存在の希薄(きはく)』という術。

 これは自身の存在感を限りなく薄くし周囲に意識をし辛くさせる術です。

 『鏡映し』の術と違い小声程度なら言葉を発しても気づかれないのが特徴でしょうか?

 道を歩く時、わざわざ意識して雑草を見て歩きますか? それと同じです。

 意識しなければ見つからない。それに、術者が優秀であればあるほど術は強固ですから。

 ここしばらくこの術ばかりを練習していた私の実力は伊達ではないのですよ。

「さて、いざ行かん」

 と乗り込んで今に至ります。


 ……テンションの高い実況はここまでにしようかな。疲れる。


 で、今は昼食が終わりその片づけも済んで誰もいない時間帯。

 私だっていきなり人がたくさんいる時間帯に潜入しようとは思わない。そこまで無謀ではないよ。

 それよりも、今はいろいろ観察したいんだ。


 中央に作業台があって、壁に沿って色々な器具がある!

 さて、まずはどこから見ようかな?


「おい、レーウ急げよ。急いでやらないと終わらねぇ」

「急いでるよ。元はと言えばイウンモルトが昼寝を始めたのが悪いんだろ!?」

 うわっ!? 危ない! あと一歩踏み出してたらぶつかってた。


「そこは、ほら、起こせよー!」

「起こしたよ! それでも起きなかったんじゃないか」

「起きなくても起さなきゃ、だろ?」

「だろ? じゃないよっ! その結果が今でしょ!」


 何やら言い争いながら厨房に駆け込んきた二人の少年。

 口を動かしつつ手も動かし、裏口へ歩いていく君たちがすごく気になります。

 きらきらと期待する目でついて行っちゃうよ。

 大きなザルと水を張ったボウルを持って何するの?


「だから急いでんだろ。あー重てぇ。やっぱ量が多いな」

「先に洗っといて正解だったろ? ほら、文句言わずに手を動かしてよ。イウンモルトのせいで遅くなったんだからボクより多くやってよね」

「へぇへぇ、分かったよ。やってやらぁ」


 あー、なるほどね。この少年たちは厨房の見習いだ。

 料理長に夕食の下ごしらえを任されてるんだね。

 裏口の横に水洗いされた野菜が何個も(かご)に山盛りになってる。

 野菜の皮むきとか、こういう基本から入るのはどこでも同じみたい。


 少年たちはまず、ジャイガイモにそっくりな野菜の皮剥きから始めるもよう。

「俺、こいつの皮むき苦手なんだよ」

「大雑把だから。まあ、丸いしでこぼこしてるから分からないでもないけど」

 苦手とか言うわりには上手いのね。

 ジャガイモみたいなのが次から次へとむかれていくよ。


 お次は? 玉ねぎみたい……赤だけど。

 でも、あっちにもあったよね。赤い玉ねぎ。

 もしかしてサラダによく入ってる赤いやつはこれなのかも。

 辛味がないから食べやすいんだよね。

 これは頭とお尻をカットして手で皮をむいておくんだ。へぇー。


 次は、次は? ……何? 

 一抱(ひとかか)えくらいある黒い物体。それは本当に野菜なの?

「これ硬いんだよ」

「押さえててあげるからさっさと切る」

 場所を少し移動してまな板の上にて包丁を入れてる。

 レーウとか呼ばれた少年、気が弱そうに見えて意外と言うな。

 真っ二つに割れた中身は

橙色(だいだいいろ)だ)

 中はきれいな橙色だ。これ、もしかしてカボチャ!? 割られた中身とまだ手つかずの黒い物体を見比べる。ちょっ、驚きなんですけど。


 カボチャ、らしきものをさらに小さく立方体にカットしてボウルへ入れる少年たち。

 知らなかった。カボチャっぽいのがあるな、とは思ってたけどまさかこんな見た目してたなんて……。

 地球のカボチャより球体に近いんだ。

 まだまだ下ごしらえしなければいけない野菜はある。

 早く、早く。次はどれにするの?


「あら、貴方たち夕食の下ごしらえかしら?」

「あ、リリアさん」

「どうしたの?」

 え、リリア? 何でこんな所に!?

「カトレアお嬢様にお出しするお茶とお菓子を取に来たのよ」

「もうそんな時間?」

「やべぇ、急げ!」

 もうそんな時間なの!? ヤバい! 急いで戻らなきゃ。

 うぅ、もっと見ていたいけど、部屋に居ないのがバレたら怒られる。

 仕方がない。ここは勇気ある撤退を!

「あらら、頑張ってね、二人とも」

「「はい」」

 リリアより先に部屋に戻らなきゃいけないんだよ。そして何食わぬ顔して魔術の勉強をしてなきゃ。

 急げ急げ。


 数分後、自室にて。

 昼食後からずーっと自室に居ましたよ、と素知らぬ顔をして魔術の本を開いていたカトレアの元にお茶とお菓子を持ったリリアが到着した。




・ビーの悲劇

 カトレアの内心絶叫を書きたかっただけ。

・潜入調査

 ダメと言われたらやりたくなるのはお約束。すべてはカトレアの食の充実のために!


 待っていてくださった皆様、ありがとうございます。

 カメの歩みではありますがゆっくりと更新していきたいです。

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