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【3】   使用人は語る

別邸勤務の使用人さんが語ってくれます。

 本邸から少し離れた所にシゼリウス家の先代が住まう家がございます。

 奥方様がまだご存命だった頃は数十名の使用人と共に暮らしておりましたが、今では先代と数名の使用人しか居りません。

 

 静かでゆったりとした時間が流れる別邸に、数年前から可愛らしいお客様が訪れるようになりました。

 そう、言わずと知れたカトレア様でございます。

 魔女としての才能を持って生まれたカトレア様は魔術師である先代に師事しているため頻繁に別邸を訪れます。

 別邸に勤める使用人は私を含め、比較的高齢者の者が多く、みなカトレア様のことを自分の孫を見るような目で見ております。

 ちょうどカトレア様のくらいの孫がいるものが多いのです。

 かくゆう私もカトレア様より一つ年下の孫がおります。

 

 休日に会いに参りますと「おじーちゃん、おじーちゃん」と舌足らずに呼ぶ姿が可愛いの、可愛くないのと言ったら可愛いに決まっております。

 きっと目に入れても痛くはないでしょう。

 

 先日、久しぶりに会に行きました折にも私が訪れるのを今か今かと玄関で待っていてくれたそうです。


 あ、これは娘に後で聞いたこのとなのですがね。


「わたしがぬったの」

 と言って刺繍されたハンカチを受け取った時には思わず泣いてしまいました。

 そうしたら

「おじーちゃん、どこかいたいの?」

 と心配してくれたのです。心の優しい子に育っていて胸がいっぱいになりました。

 感慨深く思っているとさらに溢れる涙が止まらず、孫がくれた刺繍入りのハンカチが早速役に立ちました。

 私の孫にはきっと先見の明があるのでしょう! 間違いありません。


 そう、思い返せばつい先月の事なのですが娘夫婦と共に植物園に参りました。

 孫と手を繋いで園内を見て回りました。

 異国の花や珍しい薬草、変わった形の木など、たいへん興味深く孫も終始ご機嫌でたどたどしくはありますが、植物の紹介が書かれた板を一生懸命に読んでおりました。

 その姿が微笑ましく、また愛おしいのです。

 植物園を一周してそろそろ帰宅しようかという頃。遠方より来園した方向けでしょうか? 記念品をやちょっとした小物を売っている一画(いっかく)がありました。

 孫はそこへ駆けていき、並べてある商品を熱心に見るとその中から左右の手に一本ずつリボンを持ち、片方を私に差し出しながら言ったのです。

「おじーちゃん、わたしとおそろいにしよう?」

 可愛い、可愛い孫とお揃いです。同じものです。「お揃い」なんと素晴らしい言葉でしょう。

 もちろん、一瞬たりとも迷わず購入いたしました。

 植物園にある植物で染めてあるそうです。

 孫は早速そのリボンで髪を結ってもらい、私も男性にしては長めの髪を束ねていたリボンを孫とお揃いものに交換しました。

「いっしょ、いっしょ」

 と笑い、嬉しそうな孫を見ていますと愛しさがこみあげてきます。

 私の孫が世界で一番可愛いのです。


 忘れるこのとのない、それは昨年のことでございます。

 その日は孫の………………。


 おや、もうこんな時間です。私としたことが少々熱くなってしまいました。いやはやお恥ずかしい。

 本日は昼食後、カトレア様がいらっしゃいます。

 実は、昨日買い出しに出かけた折にカトレア様が好みそうなお菓子を見つけて購入してしまいました。

 カトレア様は私どもから貰ったお菓子をネフティリア様やエヴァ様にも分けて差し上げているようです。

 以前

「ありがとう。美味しそうだからお姉様とお兄様にも分けてあげていい?」

 と訊ねられました。

 当然

「構いませんよ」

 と誰もが答えるのです。もちろん私もそうお答えいたしました。

 きょうだいの仲がよろしいようで私どもも微笑ましく思います。

 

 そうそう、以前このようなことがございました。

 別段示し合わせたわけではないのですが、別邸に勤める使用人全員がカトレア様にお菓子を差し上げたことがあるのです。

 同じ日に、全員です。

 普段は二・三人程度のなのですが、その日に限りなぜか全員が重なってしまったのです。

 両手いっぱいにお菓子を持つカトレア様を見た先代当主、リュード様に「甘やかし過ぎだ」とお叱りを受けてしまいました。反省しております。

 しかし、王都へお出かけになる度に必ずお土産を買ってくるリュード様ほどではないと思います。が、賢明にもその事は誰も言わず口を(つぐ)んでおりました。英断でありましょう?

 厳しくするのは親の役目、甘やかすのは祖父母の役目。孫は甘やかしていいのです。


 いやはや、お恥ずかしい。またやってしまいました。

 そろそろカトレア様がいらっしゃる頃でしょう。お出迎えしなくてはなりませんね。

 それでは失礼いたします。




カトレアが別邸を訪れる日はだいたい決まっています。←主に勉強の時。

が、たまに予告なく訪れることもあります。←主に遊びに来た時。

リュードに言われてからカトレアへの餌付け(?)は順番になりました。(ローテーション組んでる)

月の始めにはお菓子差し入れの順番を決める大じゃんけん大会が勃発。(別邸、使用人専用の食堂にて)

毎回白熱してます。カトレアが別邸を訪れる日は即行で埋まったり。

いつまでも遊び心を忘れない人たち。

……そんなどーでも裏設定があったりなかったり。

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