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【1】   最高傑作

「10話 誘拐事件」の前。買い物に行きます宣言、の直前の話になります。


※一部修正しました。話の内容に支障はありません。(2014/08/30)

祖父…リュード

父…ジーク

母…シルヴィア


【注】・本編に入れられなかった小話や補足・蛇足になります。

 ・さらっと読めるように文字数は少なめです。

 ・書けたものから投稿しますので時系列はバラバラになります。

 ・内容が短すぎるものはまとめて投稿しますので、サブタイトルはその話の一番目のタイトルをつけます。

 爽やかな初夏の風が吹くある日。

 カトレアはお気に入りである噴水の縁に腰を下ろして魔術の自主練習に勤しんでいた。

 照りつける太陽は溶けてしまいそうなほどではないが、じんわりと汗がにじむ程度には暑い。


 この暑さを緩和するためにカトレアは『冷気』の魔術で適温を保ちつつ、他の魔術を使うという練習をしている。

 無詠唱でできればなお良い。

「夏だねぇ。この世界にも四季があるとは驚きだけど、春と秋が短いのがイヤだな。うーん、でも暑いか寒いかの二択よりはいいのか?」


 独り言を呟きながら噴水の水を凍らせて歪ながらも氷柱を作る。

 次に直径十センチ、高さ二十センチほどのそれを風の刃で削ってゆく。

 慎重に、慎重に。細かい部分まで丁寧に。

 その目は真剣そのもだ。

 氷柱の周りをうろうろ、行ったり来たりして様々な角度から削ってゆく。

 噴水の縁に置かれているのでやり辛い部分もあるが、それもまたいいと言いますか、燃えると言いますか……。


 普段は面倒臭がりのカトレアでも魔術に関することは別である。それはそれ。これはこれだ。

「……っし。……ふう」

 小さく息を吐き出してカトレアは一歩下がって出来上がった物を眺める。

「……っふ、完璧」

 流れてもいない汗を拭い不敵な笑みを浮かべる。

 クリッとしたつぶらな瞳。赤ちゃんらしいぷっくりとした頬にぽっこりとしたお腹。まるまるとしたボディラインは滑らかで寸分の狂いもない。

 過去幾度が今日ほど完璧に出来たことはない。

 初夏の陽光を浴びてキラキラと光るそれは


「キュ○ピー(笑)」


 である。

 カトレア会心(かいしん)の出来だ。

「……れか、誰かカメラを。カメラを持って来て!」

 この傑作を後世に遺さぬは罪である。

 しかし、カトレアの叫びも虚しくそれに応える者はいない。

 カトレアがよくここで魔術の練習をしているのを知っていて、邪魔をしないように皆あまり近づかないようにしているので当然だった。

 幼い魔女への配慮だ。思いやりだ。優しさだ。残念だね。合掌。


「携帯でもいいからっ!」

 でもカトレアは諦めない。

 昨今の携帯はデジカメにも劣らぬ性能であると聞く。

「ああ、急いでぇ」

 その声は悲痛だ。

「あれ、ほら撮ってすぐに写真が出てくるあれとか!」

 名前は覚えていないらしい。

「ああ、溶けちゃうよー」

 カトレア涙目。

 だがしかし、このタイミングで衝撃の事実に気がつく!!

「って、あー!! この世界に転写の技術はなかったー」

 もちろん携帯なんてもの存在しない。

 膝をついて絶望の声を上げる。

 

 そんな彼女は永い歴史を持つお家のお嬢様だ。とてもそんなふうには見えないが。全くそうは見えないが。

 重要なことなのでニュアンスを変えて二度言ってみた。

 そんなこと叫んでる暇があったら『維持』の魔術をかけるか、影の収納スペースに放り込んでおけ、とかいうツッコみはどうか控えていただきたい。主にカトレアの心が折れないために。

 カトレアが独り、三文芝居……茶番げ……何か色々やっているうちに「キ○ーピー(笑)」は溶けて

「で、これ何だったの?」

 と言われてしまう状態になってた。要するに溶けた。

 完。


          ◆◇◆


 失意の底にいるカトレアの元に誰かがやって来たのはしばらくしてのこと。

「あら、カトレア……どうかしたの?」

 ガックリと肩を落として項垂れるカトレアにその人は問う。

「ううん、何でもないの。ただ、人生って上手くいかないことばかりだなって思って」

 うふふ、と口から漏れる笑いは少々不気味だ。

 視線は一昨日の方向を見ていて何かもう人生悟っちゃった、という感じに危うい。

「ええ、そうね。人生はどんな時も思い通りにはいかないものよ」

 再度、近くから聞こえる声にやおら顔をあげるとそこにはなぜか母、シルヴィアがいた。

「お、お母様?」

 何故ここに居るのだろう? 小首を傾げる。

「さあさあ、なにがあったのかは知らないけれど気分転換にお母様とお買い物に行きましょう」

「え? 買い物? 今から?」

「そうよ。あなたも来年から学校へ行くでしょう? そうすると色々要りようになるから今から少しずつ買い揃えておくのよ」

 カトレアの手を引いて立たせると繋いだ手をそのままに、早く早くと急かして歩く。

「お母様、待って速いよ」

 小走りになりながらついていく

「着替えて準備をしていらっしゃい」

 屋敷に着くと玄関ホールで背中を押されカトレアは渋々と一度、自室へ引っ込んだ。


モデルをキュー〇ーにしたのはカトレアのただの思いつきです。過去にも何度か作ってます。

キュー〇ーの他にも某アニメのキャラとか健全(?)に動物とかも作ってたりする。

ただ、今回作った作品があまりにも上手く出来てしまったしまったための暴走でした。

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