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プチダークな俺のハンターライフ  作者: 秋ノ永月
序章:ガチビギナーな俺のハンターライフ
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第30話:空飛ぶ鉄塊

 アイアンビートルは、とてもビートルしていた。

 ロックビートルとは違い、此方は鈍重そうな見た目をしつつも飛行能力を備えていたのだ。

 まさに、大きな鈍色の角を持った巨大なカブトムシだ。


 ノソノソと歩いている姿は、子供たちの大好きな昆虫らしい愛嬌がある。

 だが、一度宙に浮かんでしまうとグロテスクな口やら腹部やらが露わとなり、生理的に受け付けないビジュアルへと変貌してしまった。

 それはもう、激萎えである。


 とはいえ、これから戦うという時に萎えたなどとは言っていられない。

 敵意を向けた此方に対して、アイアンビートル達は襲いかかってきた。


 今回の戦闘では、今まで行ってきたようなスナッツを基点とした防御陣形を崩した。

 パーティーメンバーの隙をカバーしながら、襲撃してくるアイアンビートルの攻撃を躱し反撃する。

 カウンター戦法とでも言えばいいのだろうか。


 アイアンビートルは数匹で群れを形成するモンスターだ。

 今回遭遇した群れには4匹のアイアンビートルがノソノソしていた。

 おまけに、アイアンビートル達の飛行速度はそれなりに速い。

 その為、すべての攻撃防ごうとするとどうしても押され気味になってしまうのだ。


 アイアンビートルの甲殻はロックビートルのソレとは比べ物にならない程硬く、素手で殴ると少しだけ痛かった。

 一方、気持ち悪さのあまり可能な限り直視したくない腹部はとても脆い。

 ロックビートルのクエストを受けた時にロゼッタが言っていた通りだ。


 とはいえ、弱点の腹部を素手で殴った時の感触は最悪。

 おまけに緑色の体液が付着するという悲惨な状態になったため、途中からは腰に下げていたダガーを使って攻撃することにした。


 使い慣れてない上に、誰かが使っているイメージもあまり湧かないダガーでの戦いは非常に効率が悪く、効果的にダメージを与えることが出来ていなかったと思う。

 しかし、ダガーでの間合いや振り抜き方は不思議と直感的に感じ取ることができていた。

 まるで、自分の手足の延長線のような感覚だ。

 一度も実践で使ったことはなかったのだが…もしかしたら、魔力操作の修行のおかげかもしれない。


 此方が安定して反撃するようになると、傷ついたアイアンビートル達は闇雲に跳びかかってこなくなった。

 だが、彼等は飛ばなくなってしまえば硬さだけが取柄の可愛らしいノソノソビートルである。

 角による攻撃のいなし方を理解する頃には、アイアンビートルに対する脅威は全く感じなくなっていた。


 最初の群れを撃破した後も2つ程群れを撃破し、合計14匹のアイアンビートルを倒した所で俺達は帰還することにした。

 空を見上げれば、まだ太陽が燦々と輝いている。時刻は昼過ぎだ。

 いつもに比べれば大分早いが…それにはきちんとした理由がある。

 服が汚れてしまったのだ、かなり。


 森の水辺で洗うこともできるが、そこまでするぐらいなら街に戻ってしまおうということで結論が付いた。


 緑色の体液が飛び交う中で激戦を繰り広げた俺達の全身は、見事なまでにベタベタしていた。

 別に、多少不快なだけで実害はなく、服を脱いでしまえば問題もない。

 スナッツは鎧を着ているから難しいかもしれないが、俺の場合は装備による耐久力の底上げも行っていないから可能である。

 だが、年頃の女の子(19)であるロゼッタの場合は難しいとかそういう話ではすまなかった。


 短めのローブのような上着の下で、ペタリと素肌に張り付いている白いシャツ。

 体液が緑色なおかげで肌が透けて見えるということはなかったが、くっきりと浮かび上がるボディラインには少しだけドキドキした。

 スナッツも女の子と狩りをする時のこういった状況は想定していなかったらしく、目のやり場に困っていたようだ。

 眼福である。


 尚、今回の報酬は銀貨28枚。

 小銭…といえるほど低い価値ではないが、多数の硬貨を渡されると改めて思う。

 …とても不便だ。


 まず、持ち歩くのに不便だ。

 周りの人間を見る限り、革袋のようなものを財布代わりにして持ち歩いているようだが、どう考えても重い。

 俺の場合は重たくて疲れるということはないのだが、元の世界のお札を考えるととても頭が悪そうに感じる。


 そしてなにより、数量が不便だ。

 金銀銅、それぞれの硬貨は30枚ずつで上位のモノと価値が釣り合うようにできている。

 ということは、最大で29枚の同じ硬貨を持ち歩く必要があるということだ。

 勿論、釣り銭をもらうこと前提で高価な硬貨だけを持ち歩くこともできるだろうが…店側だって釣り銭を豊富に持っているとは限らない。

 そもそも、この世界ではほとんどの商店が個人経営だ。

 よほど大きな規模の店でもない限り、釣り銭に気を遣うような余裕はないだろう。


 ハンターズギルドで両替は行ってくれるが、頻繁に交換してもらうのも結構面倒だ。

 魔力認証などという画期的な個人認証が可能なのだから、カード払いをさせてくれる銀行ぐらいあっても良いと思うのだが…。

 スナッツやロゼッタにそれとなく聞いたところ、そういったサービスをしている業者は聞いたことがないようだ。


 とはいえ、この世界にも銀行というシステムは一応存在する。

 大きく栄えている街などでは独立した業者がサービスを行っているが、小さな町では役所がサービスを行っているそうだ。

 トルテラは後者に分類され、役所が銀行を兼ねている。

 といっても、此方は完全にローカルな銀行だ。

 全国に支店などがあるといったことは無い為、セキュリティの高い貯金箱みたいなものである。

 業者の方はいくつの街で支店があったりするのだとか。


 商人ギルドが提供するギルドメンバー限定の機能の中にはお金の貸し借りを行ったり、各地でお金を引き出したりといった事が出来るモノがあるらしいとスナッツが教えてくれたが…彼も友人から聞いただけで詳しくは知らないそうだ。

 ロゼッタのおかげで教会ギルドに関する話はそれなりに聞けるが、商人ギルドだけは未だに未知数な部分が多い。

 調べようともしていなかったのだから当然といえば当然だが…調べて分かるものなのだろうか?

 商売において情報は命も同然なのだから、調べて分かる事も少ないかもしれないな。

 …一応、調べてはみるか。


 報酬で受け取った28枚の銀貨は3人で等分配しようとすると銅貨が発生するため、銀貨4枚を使って全員の新しい服やら食事やらで使うことにした。

 今までは適当に雑貨屋で見繕った服で活動していた俺だったが、軽装と私服は別物だとスナッツに指摘されたため防具屋に売っていた丈夫で手入れのしやすいシャツとジャケットを購入する。


 たかが服だと侮っていたが、実際に来てみると防具屋の服は着心地もかなり良かった。

 動きやすいのだ、肩周りなどは特に。

 デザインも思っていたより普通で、ジャケットの内側にはポケットがたくさんついている。

 投擲武器や回復薬などを入れておくスペースなのだそうだ。


 …回復薬、自分で使ったこと無いな。

 今までで一番の重傷を負ったエルダー戦においても、ハンターズギルドの医務室で消毒やら包帯やらで少しだけ処置してもらっただけだ。

 どれ程の効果があるものなのだろう…ゲームのように、体力回復を瞬時に行えたりするのだろうか?

 それとも、即効性の傷薬?はたまた自然治癒力の上昇?


 そんな回復薬に対する疑問をスナッツにぶつけると、答えは至極簡単なものだった。


「色々だな」


 …そうだよね、薬だものね。

 用法用量、色々あるよね。


 しかし、これは結構大事な話だ。

 今はパーティーのバランスもいいし、ロゼッタの魔力干渉による治癒もある為に必要とされたことはなかった。

 だが、これから徐々にクエストの難易度を上げていった場合、今と同じようなやり方で済むということはないだろう。

 万が一ロゼッタが戦闘不能になってしまった時、俺達は傷も癒せぬまま彼女を守り切ることが出来るのだろうか。

 …保証はない。


 遅めの昼食を済ませ、着替えを購入した後、俺達は冒険者用道具屋へ行くことにした。

 特定の街に拠点を持ったりせず、世界各地を転々としているハンターのことを冒険者と呼ぶらしい。

 ちなみに、先程行った防具屋もこれから行く道具屋も、スナッツの知り合いの店なのだそうだ。

 冗談抜きで友好関係広いですね、スナッツさん。


遅れ気味の更新となってしまいました…すみません。

第一章は年内に落ち着かせることを目標としていますが、正直ギリギリかもしれません。

ストックはないので、次回更新日も怪しいですが…とりあえずは、定期的に更新できるようにしていきたいと思います。


閲覧ありがとうございました。

気になった点等ございましたら、報告してくださると助かります。

また感想等、心よりお待ちしております。

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