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プチダークな俺のハンターライフ  作者: 秋ノ永月
序章:ガチビギナーな俺のハンターライフ
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第20話:名を連ねる少女

「…それは冗談じゃないんだよな?」


 真剣な顔をしたスナッツが問う。

 俺と、俺の側に立っているロゼッタを交互に見つめながら。


「あぁ、真面目な話だ」


 ハンターズギルドの待合エリア。

 ここで俺とロゼッタ、そしてスナッツの3人は話し合いを始めた。

 論点は唯一つ。

 ロゼッタを俺達のパーティーに入れたいというものだ。


 話し合い、などというほど公平なものでも無いか。

 俺からの一方的な申し出だ。


「あ、あの…お許し頂けませんか…?」


 ロゼッタが、上目遣いでスナッツに願い出る。

 決して、彼女が狙ってやっているわけではないと思うが…その上目遣いは卑怯なのではないだろうか。

 俺だったら無条件で受け入れてしまいかねない破壊力だ。

 場所が場所なら、ドンペリぐらい入れたくなってしまう。

 これぞ女子力…いや違うか。


「ロック…てめぇ…!!」


 ロゼッタの笑顔に我を忘れかけていると、スナッツの視線が鋭くなった。

 怒られるかもしれない…それぐらいは覚悟していた。

 エルダーとの死闘を乗り越え、二人で頑張ろうと言っていた矢先の出来事なのだ。

 はっきり言って、これは俺の我儘である。

 だが、譲るつもりもない。

 ロゼッタは無くてはならない存在なのだ、今後の俺のためにも。


 スナッツが、拳を握りしめた。

 そして…俺の両肩に強い衝撃が加わる。


「…よくやった!お前はやっぱり最高だ!」

「…えっ」


 眼前に広がるのは、満面の笑みを浮かべるスナッツ。

 俺の肩を何度か叩いた後、サムズアップまでするおまけ付きだ。

 そんな彼の行動に、俺は困惑する。

 …怒ってたんじゃないのか?


「怒って、ないのか?」

「ん、なんで俺が怒るんだよ?…俺はスナッツだ。よろしくなお嬢ちゃん!」

「あ、えと…ロゼッタ=ビスク、です。よろしくお願いします!」


 驚いていたのはロゼッタも同じだったようで、スナッツの自己紹介に対して呆気に取られていた。

 だが、すぐさま輝かしい笑顔を見せると、二人はハンターカードの交換を行う。


「わ、スナッツさん、Cランクハンターだったんですか…?すごいです!」

「いやいや、そんなことねぇよ、ハハッ!」


 交換を終えて早々、ロゼッタのわっしょい攻撃が炸裂する。

 可愛らしい少女の褒め言葉に、スナッツも悪い気はしないようだ。

 …というか、かなり嬉しそうである。

 デレデレしすぎじゃないか、おっさん。


(あの、ロックさん…私の魔法のことは…)


 いい気になって浮かれているスナッツを冷ややかに見つめていると、傍らのロゼッタが小さく囁いた。

 隠し事は極力せずに済ませたいところだが、これは大事な話だ。

 彼女が自分で話す決心のついた時にすべきだろう。

 俺にも隠し事はあるしな。

 …自分のことを棚に上げている気もしなくはないが。


(ロゼッタが話していいと思った時に話すといい。それまで俺は何も話さないでおくから)


 そう囁き返すと、ロゼッタは「はい」と頷きながら、小さく笑った。


「おいおい、なんだよ二人とも。いきなり内緒話か、除け者か?」


 俺達のやり取りを見て、それまで照れ笑いを浮かべていたスナッツが頬を膨らませる。

 …やめろ、おっさんが頬を膨らませても何も可愛くない。


「スナッツが格好良いって話をしてたんだよ」

「…えっ、ロックさん!?」


 不貞腐れたおっさんも面倒臭いので、適当にはぐらかす。

 …つもりだったのだが、ロゼッタが顔を真っ赤にして狼狽し始めた。

 もしかして、図星だったりするのだろうか…?


「はは、それは嬉しい限りだな」


 一方、スナッツ本人はどこか乾いた笑いを浮かべている。

 冗談だと通じているようだ。

 さすが、ちょび髭を携えているだけはある。


「まぁ、何はともあれ…これで俺達のパーティーは3人になったわけだ」


 そう、3人になった。

 結成して日も浅いというのに、もう3人だ。

 この世界では、パーティーというのは何人ぐらいになるのが普通なのだろう?

 というか、職業…クラスの兼ね合いとかはどうなっているのだろうか?


「で、二人に聞きたいわけだが…パーティーって何人ぐらいがベストなんだ?」

「ん、基本的には4~5人がベストだな」


 ここで、Cランクハンタースナッツの出番である。

 咄嗟の質問にもさらりと答えられる辺り、さすがはCランクハンター。

 ちょび髭は伊達じゃない。


「そうなのか、戦闘の…隊列とかはどうなってるんだ?」

「ベストなのは前衛2、後衛2、それから司令塔が1ってところだな。全体を見渡せる人間がいると戦闘も大分楽になる」


 なるほど、司令塔か…。

 少し意外な返答だったが、確かにそれは言えているのかもしれない。

 戦況を把握している人間が先を見据えた行動をすれば、それによるメリットは計り知れないだろうからな。


「後衛ってのは、魔法使いってことか?」

「魔法使いも後衛だが…中々見かけないな。基本的には射手だ」

「射手?」


 射手というクラスは聞いたことがない。

 魔法使いの話題が出た時に一瞬だけロゼッタの表情が曇った気がしたが…今はおいておこう。


「射手ってのは、弓とか銃で戦うやつのことだ。銃は結構手入れとかが面倒な上にコストも高いからな…ほとんどの射手は弓だ。それでも、前衛に比べたらかなり少数だけどな」

「へぇ…」


 この世界では銃も武器としてあるのか。

 先日スナッツと見にいった武器屋では見かけなかったと思うが…。

 魔法を使えるようになったら、少し手を出してみてもいいかもしれない。

 銃、格好いいよな。



「まぁ、結局のところ後衛ってのはそもそも数が少ないんだよ。だから、前衛しかいないパーティーだって珍しくもないんだぜ。それと女の子も少ない」


 チラリ、とロゼッタに視線を向けるスナッツ。

 確かに言われてみれば、ハンターズギルドで女性を見かけることはあまりないな。

 スナッツに紹介してもらったハンターも男だけだったし。

 だから、先程は馬鹿みたいに嬉しそうにしていたのか。


「そ、そうですね…。女の子はあまり見かけません…。だから私、中々友達とかもできなくて…」


 すると、意外なところからロゼッタのテンションが下がり始めた。

 同性の友達というのは、仕事をする上でもプライベートにおいても大切だろう。

 魔法に関しても負い目を感じていたようだったし、結構な苦労をしていたはずだ。


「ロゼッタ、今は俺とスナッツがいるだろ?女の子にはなれないけど、何かあったら相談してくれ。スナッツも、こう見えて面倒見の良い馬鹿なんだ」

「おいロック、褒めながら馬鹿にするのはやめろ」


 すっかり表情が陰ってしまったロゼッタの頭に軽く手を置く。

 …俺がいる、か。

 少々青臭いことを言ってしまった、恥ずかしい。

 複雑そうな顔で此方を睨んでくるスナッツが居なかったら、照れ臭くてロゼッタと顔を合わせられなくなるところだ。


 なんとか顔が熱くなるのをこらえていると、俺の手元でロゼッタが小さく笑った。


「ふふっ、そうですね。これからよろしくお願いします」

「あぁ、もちろんだ」


 これ以上、臭いことは言えない。

 元の世界にいた頃は、こんな台詞を言うことが訪れるなんて思いもしなかった。

 漫画のキャラクターにでもなった気分だ。


「そういえば、ロゼッタちゃんの獲物は何だ?見たところ丸腰みたいだが…」

「あぁ、えっと…昨日のクエスト中に壊れてしまいまして…。普段はショートソードを使ってます」

「壊れた?…あー、まぁロックビートルなら仕方ないかもな。ダメだぜ、ちゃんと弱点を狙わないと。あいつらの背中はそのまんま岩だからな、こっちの手がやられちまうよ」


 スナッツが、ロゼッタの装備を見渡しながら呟いた。

 話の流れからして、彼女がロックビートルの背中岩を殴ってしまい折れたと勘違いしているようだ。

 此方としては好都合である。

 ロゼッタも苦笑いを浮かべながら「気をつけます」などと相槌を打てているしな。

 しかし、そうか…武器か。


「ロゼッタ、替えの武器はないのか?」

「ごめんなさい、スペアは用意してないんです…。時間ができたら買いに行こうと思っていたんですが」


 俺の問いに、申し訳なさそうに応えるロゼッタ。

 昨日壊れて今朝早くから集合だったからな、新しく買いに行く時間なんてなかっただろう。


「じゃぁ、今日はロゼッタの武器を買いに行くとしようか。いいよな、スナッツ?」

「あぁ、構わないぜ。だけどロック…分かってるよな?」

「ん?…あぁ、分かってる分かってる」


 俺の提案に賛同しながら、確認するように苦笑うスナッツ。

 「分かってるよな?」というのは…おそらく武器の購入のことだろう。

 スナッツの時はよく分からないまま金貨2枚の斧をプレゼントしようとしてしまったが、そこまでの高級品を他人に贈与するのはかなり意味深なことらしい。

 端的に言えば、求婚クラスの行為なのだ。

 同じ過ちを二度も繰り返す俺ではない。

 しかも、今度は女の子だ。洒落にならん。


「えと、いいんですか?私の買い物に付き合ってもらって…」

「構わないさ。さぁスナッツ、一番いい店を頼む」

「任せておけ。ショートソードだったよな、剣に特化した店があるんだ」


 こうして、俺達は武器屋へと向かっていった。

閲覧ありがとうございました。

気になった点等ございましたら、報告してくださると助かります。

感想等もお待ちしております。


…余談ですが…買って2年のマシンが壊れてしまいました。

しばらくはサブマシンで執筆することになります…。

…パワーが足りないです(´・ω・`)


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