表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プチダークな俺のハンターライフ  作者: 秋ノ永月
序章:ガチビギナーな俺のハンターライフ
19/79

第18話:告白未遂

 ロゼッタとの和解が済んだ後、俺達は森の奥にあるロックビートルが確認された場所へと向かった。

 光剣を使ったことによって武器も魔力も消費してしまったロゼッタは一度トルテラへと戻り明日に再び向かってはどうかと提案してきたが…また町に戻ってから再び此処まで来るのも面倒だ。

 そう思い、俺は疲れてるロゼッタだけ町へと戻り、俺が単独でクエストを遂行してくることを提言した。


 すると、彼女はなんだか少しむくれた様子で「なら私も行きます!」と言って俺の前を歩き始めた。

 また怒らせてしまったのかと頭を抱えたが、今度は本当に原因が分からない。

 どうしたのだろうか?


 まぁそれはさておき、結果的に言えばロックビートルはとても弱かった。

 てっきり岩で出来たカブトムシが飛びかかってくるのかとでも思っていたのだが、現実のロックビートルは飛行する術なんて持っていなかった。

 背中が岩で覆われた巨大なテントウ虫が、ズリズリと鈍重そうに這っているだけだ。


 ロゼッタ曰く、ロックビートルは背中が非常に硬いものの腹部は普通の虫と変わらないため、そこを狙って討伐するのが定石なのだそうだ。

 だが、いちいちひっくり返すのも面倒だったため、俺は這い寄ってくる一匹のロックビートルを試しに蹴ってみた。

 すると、喜ばしいことにロックビートルの背中岩はものの見事に砕け散った。

 岩をほとんど失ったロックビートルはその場で動きを止めた。

 唖然とした表情で此方を見つめてくるロゼッタに確認したところ、この状態は既に息を引き取っているとのことだった。

 背中の岩を破壊しただけで討伐できるとは、全くもって楽な仕事だ。


 俺は周辺にいたロックビートルの岩を片っ端から破壊して周った。

 勿論、呆然と立っているロゼッタの周囲の安全は常に確認しながら。


 そして数分後、夕日が照らす森の中には壊滅済みのロックビートルの群れが広がっている。


「想像以上にちょろかったなぁ。ロゼッタ、これだけ倒せば十分かな?」

「えっ…あ、はい。十分だと思います、けど…」


 驚きを隠せないといった様子で肯定するロゼッタ。

 うんうん、分かる。その顔はスナッツの時と同じだ。

 ただ少しばかり、いや桁違いに、スナッツよりも可愛らしい顔をしているが。


「じゃ、もう帰ろうか。…って、討伐クエストってどうやって報告すればいいの?倒しました、って言っても証明するものがないよね?」


 役目も果たしたことだし、町に戻ろうと思ったその時。

 俺は大事なことに気がついた。

 暴れるだけ暴れて帰っただけでは、俺がロックビートルを倒したことの証明にはならないのではないだろうか?


「…?ロックさん、以前にフォレストボアの討伐クエストをクリアしたんじゃなかったんですか?」


 すると、依然として驚いた表情のまま首を傾げるロゼッタ。

 確かにフォレストボアは倒したが、あれは偶然セラが襲われていた場所に出くわしただけだ。

 というか、俺はクエストを成功したことがない。

 たった一度だけのクエスト報告も、エルダーフォレストボアのせいで失敗に終わったからな。


 ロゼッタにそう説明すると、彼女は苦笑いを浮かべながらクエストについて教えてくれた。


 まず、モンスターを討伐すると、討伐したハンターの持つ魔力に変化が起こるらしい。

 その変化によって、何のモンスターを何匹倒したのかが分かるのだそうだ。

 確かに、クエストに出かける前には例の"魔力照合"とやらを受けた。

 クエスト報告時にも再び魔力照合を行い、その差分で判断されるらしい。

 本当に便利だな、魔力。


 ちなみに昔は討伐した証にモンスターの亡骸を持ち帰ったそうだが…。

 こんな岩の塊みたいなモンスターを持ち帰るなんて、それだけでも一苦労だろう。

 技術の進歩は素晴らしい。


 それから、クエスト報告の話を終えると同時に彼女は懐から小さくて透明なガラス玉を取り出した。


「それは、何?綺麗だね」

「これは魔力結晶です。今は透明ですが、魔力が溜まっていくと色が変化するんですよ。モンスターを倒した後は、モンスターの体に残る魔力をこの結晶に吸収させるのが一般的らしいです。ロックさんは、お持ちではないですよね?」

「あぁ、そんなものがあるなんて知らなかったよ」


 ロゼッタの持つ透明な魔力結晶に目を落としながら、俺は武器屋の店内を思い出す。

 スナッツと店内を回っていた時、赤色の綺麗な玉が売っていた。

 あの時は「武器屋なのにアクセサリーも売っているのか」程度に思っただけで気にも止めていなかったが…おそらく、あれも魔力結晶とやらだったのだろう。

 使い道は分からないが、武器屋においてあるということは魔法結晶は武器になるのだろうか?


「では、今回は私が魔力回収をしておきますね。初めてなので、上手く出来るかわかりませんが…」


 そう言うと、ロゼッタは魔力結晶を持ったまま両手を体の前に伸ばし、まるで魔力結晶を何かに捧げるかのようなポーズをとった。

 同時に、彼女の手の上にある魔力結晶が仄かに光を放ち始める。

 赤い夕陽に包まれた金髪の少女が生み出す幻想的な光景に、俺は思わず息を呑んだ。


「…ふぅ、どうやら上手く出来たみたいです!」


 ほんの数秒後、ロゼッタは手に持つ魔力結晶を大事そうに抱えながら此方へ持ってきた。

 先ほどまでの無色透明とは違い、僅かにだが水色に変色している。

 本当に色が変わるんだな。


「魔力結晶は、何に使うんだ?」

「えと、溜めた魔力に応じてギルドが買い取ってくれるそうです。内部に溜め込んだ魔力を自分で使うこともできますが、使う人はあまりいませんね。…使える人があまりいない、と言ったほうが正しいかもしれません」

「なるほど」


 ただ単に魔力を溜めておけるだけ、って感じか。

 携帯用充電器みたいなもんだな。

 RPGに登場するMP回復アイテムみたいな立ち位置なのかもしれない。

 そう考えれば、武器屋に売っていたもの納得はできる。


 魔力回収も終えた俺たちは、夕暮れの中街への帰路に着いた。

 ちなみに、魔力回収用の魔力結晶はハンターズギルドにて銅貨数枚で購入できるらしい。

 大きさとか色々あるのだそうだ。


 空が紫色に染まる頃、森を抜け、街が見え始めた。

 魔力を操る方法を教えてもらうことはできなかったが、まぁ焦ることはないだろう。

 ロゼッタとは結構打ち解けた気がする。

 彼女にとって魔法が好ましいものではないかもしれないという可能性も十分に残っているが…さすがに此方も引き下がるわけには行かない。

 これからも何度か教えてもらえるようアプローチを仕掛けていこう。

 うん。


「あの…ロックさん」

「ん?」


 当面の目標としてロゼッタの好感度上げを決意していると、傍らを歩いていたロゼッタが小さな声で俺に話しかけてきた。

 元気がないな、疲れているのだろうか?


「その…ロックさんはEランクハンターなのにとても強くて、優しくて…すごく格好いいです、憧れます」

「え、あぁ…ありがとう?」


 唐突な絶賛に、思わず疑問形で礼を返してしまった。

 わっしょいの件はクエスト開始直後で終わりじゃなかったのか?


「それで、ですね。あの…私みたいな存在がこんなことを願うなんて図々しいのかもしれませんが…その…」


 徐々に、隣を歩いていたロゼッタの歩行ペースが減速し始める。

 やがて、彼女は立ち止まって俯いてしまった。


「ロゼッタ、どうかしたの?もしかして、怪我でもしてる?」


 様子がおかしいな。

 さっきまであんなに明るく笑っていたのに。

 …もしかして、また俺が何か変なコト言ったか?


「い、いえ、怪我はないです!そうではなくてですね…えっと…」


 俺が問いかけると、彼女は顔をブンブンと横に振って否定する。

 そして、彼女はギュッと拳を握りこんだ。


 …え、もしかしてこの流れ、殴り掛かられる?

 や、やばいなそれは。折角仲良くなったのに、まずいぞ。

 とりあえず謝っておくか…!?


「私と…私と…固定パーティーを…!」

「すいませんでした!」


 腰を斜め45度の角度に曲げ、誠意マックスの謝罪を行う。

 …って、あれ?

 何か、彼女の言葉を遮ってしまったような…。


「…」


 下げた頭を少しずつ上げ、チラリとロゼッタの表情を伺う。

 すると、彼女は呆然とした様子で此方を見つめていた。

 そして、大きなエメラルドグリーンの瞳からは大粒の涙が浮かび始める。

 …完全にミスった気がする。


「…ロゼッタ?」

「そ、そうですよね…私みたいな弱くて情けない魔女なんて…ロックさんと釣り合わないですよね…。あはは…私ったら馬鹿だな…変に期待したりなんかして…そんなこと、あるはずないのに…」

「ま、待てロゼッタ!違う、違うんだよ、今のはそういう意味じゃなくってだな…!」


 ポロポロと涙を零すロゼッタをなんとか宥めようと弁明するが、少女の涙は止まらない。

 終いには、彼女は両手で涙を拭いながら泣きだしてしまう。


 その後、俺の早とちりが起こしてしまった事態を収束させる頃には、空がすっかり暗くなってしまっていた。




すいません、やはり2日は間に合いませんでした…。

次回も少し怪しいです…。


閲覧ありがとうございました。

気になった点等ございましたら、報告してくださると助かります。

感想等もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ