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プチダークな俺のハンターライフ  作者: 秋ノ永月
序章:ガチビギナーな俺のハンターライフ
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第13話:就職難など露知らず



 さて、結論から言おう。

 念願にして、フォレストボアエルダーから頂戴した雷魔法"雷纏"についてだが…。


 …使えなかった。


 役に立たなかったという訳ではない。

 文字通り、使えなかったのだ。

 雷を纏うどころか、静電気の一つも起きなかった。


「やっぱり、ダメか…」


 朝の陽射しを受けながら、俺は切り株の上で項垂れる。 


 気分が高揚して早起きしてしまった俺は、街の外にある森へと出向いた。

 そして、ドキドキしながら"雷纏"を試してみたのだ。


 …だが、結果は全て不発。

 技名を唱えてみても。

 ポーズを決めたりしてみても。

 友人を爆殺された気分になって叫んでみても。

 …何も起きなかった。


 意気消沈である。


「そもそも…魔力っていうのがいまいちよく分からないんだよなぁ」


 ハンターカードのスキル欄を見ながら、俺は溜息を吐く。

 そうなのだ、よく分からないのだ。

 "雷纏"のスキル説明文には「体表周囲の魔力に…」と書いてあった。

 だが、そもそも俺の体表周囲に魔力があるのだろうか?


 セラが言うには、基本的にどんな生物にも魔力は宿っているらしい。

 しかしそれは、この世界における一般常識での話だ。

 俺はこの世界においては異常な存在。

 もしかしたらセラ達の常識で推し量れない身体かもしれない。

 そもそも、俺のアビリティに"魔力耐性"というのがあったはずだ。

 あれが悪影響しているという可能性もある。


 …いや、嘘だろ…勘弁してくれ…。


 溜息どころか、涙まで出そうだ。

 スキルを覚えることはできたというのに、使うことはできません?

 何それ、マジやばくない?

 詐欺じゃーん。


「…はぁ」


 悲しい…悲しみに包まれてる。

 一体全体、どうすればいいんだ俺は。

 教えてくれよハンターカードえもん…。


 手の中で、静かに光を反射させているハンターカード。

 だがしかし、カードは何も応えない。

 ただのカードなのだから当たり前である。


 カードを裏返し、俺は表面を眺めた。


 ロック=トライブ、Eランク、所属なし、無職。

 変わり映えのしない内容である。


 そういえば、ギルドには所属したほうがいいのだろうか?


 ハンターとして頑張るなら、ハンターズギルドに所属するのが普通だとセラは言っていた。

 だが、彼女が同時に教えてくれた三大ギルドの残り二つ…商人ギルドと教会ギルドについて、俺はあまり知識がない。

 焦ってハンターズギルドに所属してしまった後に、もし他のギルドに所属したくなった場合は困るのではないだろうか。

 脱退には高額なお金が必要です、とか言われたら困る。

 今日にでも、スナッツに話を聞いてみるか。


 それから…クラス。

 いつまでも無職と表示されるのは、さすがにちょっと心苦しい。

 どうにかして定職に就きたいものだ。

 …とはいったものの、このクラスについてはギルドと比べて勝手が違う。


 セラと会話した時、彼女はクラスについて何も知らない様子だった。

 彼女が言うには、ハンターカードにクラスなどという記載はないのだという。

 俺のカードが普通じゃないという可能性もあるが、セラにはフォレストボアの牙を取引した後に俺のカードを覗かれていたはずだ。

 それに、パーティーを組んだ時に交換したスナッツのカードにもクラスの欄はあった。

 俺のカードが特殊ということはないだろう。


 他には、セラがクラスという概念を知らなかっただけという可能性が浮かび上がるが…。

 …その可能性は極めて低いだろう。


 ハンターカードは、身分証明書みたいなものだと神様の手紙には書いてあった。

 ということは、町長程の役職に就いているセラがハンターカードを見る機会が少ないとは思えない。


 …となると、だ。

 他に思いつく可能性としては、俺にしか見えない項目という可能性がある。

 つまり、同じハンターカードを見たとして俺にはそのハンターのクラスが分かるが、普通の人には分からないという可能性だ。

 はっきり言って少し無理があるような気もするが…実はこの可能性を考えたのには理由がある。

 スキル欄と、アビリティ欄の存在だ。


 スナッツとカード交換をした後、俺は彼のカードの裏側も見たのだが…その時の反応が少しおかしかったのだ。

 裏には何も書いてないぞ、とスナッツは言っていた。

 アビリティ欄にもスキル欄にも何も書いていなかった為、最初は"両方とも持っていないから見るだけ無駄だ"という意味で言っていたのだと思っていたが…。


 今になって考えればあの時のスナッツの表情は少しきつかった。

 Cランクともなれば、カード交換の際に相手の情報をきちんと確認しているだろう。

 いや、スナッツの性格から考えるとしていない可能性もあるが…少なくともスキルやアビリティの把握をきちんとおこなうハンターもいるはずだ。

 なのに、スナッツは俺のことを奇妙なモノでもを見るかのような目で見ていた。

俺が明らかに変な行動をとっているかのようだったのだ。


 あの時、スナッツにはスキル欄とアビリティ欄が見えなかったのかもしれない。

 というより、一般の人間には見えないのかもしれない。

 それと同様にして、クラス欄も普通の人には見えないのかもしれない。

 そう考えれば、セラやスナッツとの違和感も納得できる。


 …とはいえ、全ては"かもしれない"という憶測の域を出ない話だ。

 だがそれでも、俺は自分が立てたこの憶測にしっくりときている。

 ハンターズギルドに行ったら他のハンター達とも交流してみようか。

 怪しまれない程度に探りを入れれば、それなりの成果を得られるだろう。

 どんなクラスがあるのかを調べることもできるかもしれない。


 ポケットから、スナッツのハンターカードを取り出す。

 スナッツ=ミックラル、Cランク、ハンターズギルド、重戦士。

 それが、カードに記載されている情報だ。

 裏を見ても、アビリティ欄とスキル欄は空白で埋まっている。


 …重戦士か。

 巨大な斧を振り回しているスナッツにぴったりの職業といえる。

 重ということは、軽戦士もいるのだろうか?


 クラスの種類を想像しながら、クラス欄の重戦士に指を添えてみる。

 すると、意外にも新たなウィンドウが表示された。


=============


クラスランク ll


戦士の上位職。

近接攻撃に長けており、大型武器の扱いを得意とする。

耐久力が高く、機動性は低い。


=============


 …おぉ。

 今度は説明文として理解しやすいものが表示されたな。

 "雷纏"も見習って欲しいものだ。

 というか、使い方を記載してほしい。


 まぁそれはさておき、"クラスランク"という新たな単語が登場している。

 説明文に「戦士の上位職」と書いてあるから、きっと戦士のクラスランクがlということなのだろう。

 ランクとかレベルとか、わかりやすくていいな。

 ほとんど同じ意味に感じるのだが…表示を使い分けている理由はあるのだろうか?


 というか、スナッツは上位職なのか…意外だな。

 Cランクハンターってのはそれなりに高いランクなのだろうか?

 それとも、クラスランクllというもの自体がそれほど高くないとか?

 …無職のランクはいくつなのだろうか?


 スナッツのカードをしまい、再び自分のハンターカードを取り出す。


 この世界に来た時、クラスの項目に手を触れても何も起きなかった。

 だが、説明文が変化した"盗取"の例もある。

 もしかしたら、無職にも何らかの情報が増えているかもしれない。


 僅かに緊張しながら、クラスの項目に指を添える。

 すると、俺の期待通りに新たなウィンドウが表示された。


=============


クラスランク -


最下位職。




=============


「…おぅふ…」


 表示された内容に、おれは思わず声にならない声を吐息と共に吐き出した。

 なんということでしょう…。

 アビリティやスキルに恵まれて、若干のオレツエーを堪能していたロック君。

 しかし、実のところ彼はクラスカースト最底辺の存在だったのです。

 最下位の存在だったのです…!!


 …あまりにもあんまりだ…。

 せめて、何かもう少し説明してくれない…?


 まるでバッサリと切り捨てるかのような説明文に、俺は落胆するしかない。

 これはひどい、目も当てられないよ。

 単語一つで説明終了されたら、カバーのしようもないじゃないか。


 露骨にがっかりする俺。

 するとその時、説明文の下の部分にあった謎のスペースが仄かに光り始めた。

 な、なんだ?


=============


クラスランク -


最下位職。


【選択】


=============


 …【選択】?


 光っていた場所に、文字列が浮かび上がった。

 何かを…選べるのか?


 半ば流されるかのように、【選択】という文字列へ指をスライドさせる。

 すると、再び新たなウィンドウが展開された。



=============


クラス選択


・無職

 ・戦士

 ・



=============


 …戦士。

 無職というクラスの他に、戦士というクラスが表示されている。

 また、"盗取"のスロット表記のように「・」のみの表示もある。

 無職と戦士の項目が階層分けされているように見えるが…。


 クラス選択欄を観察しながら、戦士の項目に軽く触れてみる。

 すると、"戦士"の文字が一瞬だけ輝き、直後に表示されていた全てのウィンドウが消滅した。


 俺の視界に映っているのは、自分自身のハンターカードだけ。

 クラスの項目には先ほどまで表示されていた"無職"ではなく…"戦士"と表示されている。

 …同時に、なんだか少しだけ身体が軽くなった気がした。


 再びクラスの項目に指を添えると、クラス説明のウィンドウが表示される。


==============


クラスランク l


近接攻撃を主として行う。

耐久力、機動性がやや高い。


【選択】


==============


 …なるほど。

 スナッツの重戦士に似たような説明文だ。

 確か、重戦士の説明文には戦士の上位職と書かれていたはず。

 元のクラスが持つ特徴を、さらに特徴的にしたクラスを上位職と呼ぶのだろうか?

 というか、戦士のクラスランクは予想通りlだったな。


 【選択】部分に触れると、先程と同じクラス選択ウィンドウが展開された。

 カードから指を離してしばらくすると、ウィンドウは自然と消滅する。


 戦士、か。

 これで俺も、晴れて定職に就けたらしい。

 先程のクラス選択ウィンドウから察するに、他にも色んなクラスを選択できるようになりそうだが…。

 選択できるようになるのに条件があるのだろうか?

 というか…俺は何時、戦士を選択できるようになったのだろう。

 やはり、エルダーとの戦いの中で何かキッカケとなる出来事が起きたのだろうか?


 …いや、選択条件は今は置いておこう。

 考えても分かる気がしない。


 今わかることは、俺が戦士というクラスを選べるようになったということ。

 それから、複数のクラスを選べるようになる可能性があるということ。

 最後に、クラスを変更することによって何らかのパラメータが変化するということだ。


 パラメータと称したのは、クラス説明文にあった"耐久力"や"機動性"といった要素についてだ。

 クラスを戦士に変更した瞬間、自分の身体が軽くなった気がした。

 気のせいかもしれない、といったらそれまでだが…これが気のせいでなかったとしたら、クラスによって素早くなったり丈夫になったりするはずだ。

 わざわざ選択できるようになっているのだから、何かしらの意味があると考えたほうが普通だろう。

 ただの飾りという可能性もゼロではないが…他人には見えない部分では飾りにもならない。

 故に、この可能性も極めて低いはずだ。


 …もしかしたら、魔法使いというクラスに就くことで魔法を使えるようになるのかもしれない。

 ありえる…ありえるぞ。

 その可能性は、十分にありえる!!


「…クククッ…」


 また一歩、魔法に近づくことが出来たような気がする。


次回、新キャラ登場です。

むさ苦しい男どものじゃれあいも、これまでです。

やっぱり、女の子が必要なのです。

私も筆が進みます。

ふへへ。


閲覧ありがとうございました。

気になった点等ございましたら、報告してくださると助かります。

感想等もお待ちしております。

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