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プチダークな俺のハンターライフ  作者: 秋ノ永月
序章:ガチビギナーな俺のハンターライフ
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第11話:異なる世界の社会講義


「…っはー。なんか焦ったなぁ…」


 宿の自室に戻るや否や、俺は真っ先にベッドへと飛び込んだ。

 本を読み終えた時よりも、疲労が数段増している。

 あの気配はなんだったのだろうか…気のせい、か?


 書院の周辺には人の姿など全く見えなかった。

 だが、宿屋の近くでは人々がたくさん賑わっていた。

 これまでにみた景色と一緒だ。

 書院の周りだけが特別に廃れているのだろうか?


 司書の人も「若い人が来るなんて」と珍しがっていた。

 そもそも人が来ること自体が少ないのだろうか?


 …いや、それはない。

 なぜなら、昼間にスナッツと来た時にはそれなりに人通りはあった。

 決して多いとは言えなかったが。


「まぁ、いいか」


 考えて分かる事と考えても分からない事というのは、感覚的にだが見分けがつく。

 分からないものは分からない。

 少なくとも、今の俺には先程の"異常"が何なのか分からないのだ。

 謎が疑問を生み、疑問が困惑を生む。

 キリがない、疲れるだけだ。

 そんなことに労力を払うぐらいなら、今日手に入れられた知識の整理でもしたほうが得策だろう。


「…よっ、と」


 寝転んでいたベッドから跳ね起きる。

 今日読んだ本の情報を、今この場でまとめるとしよう。


 今日調べたことは、大きく3つに分類できる。

 1つ目は歴史。この世界の歴史だ。

 2つ目は地理。この世界の地理だ。

 3つ目は法学。この地域の法学だ。

 …うん。

 何のひねりもない内容だ。


 本当は魔法とか、魔法具とか、魔法陣とか、そういうの調べたかったんだが…。

 残念なことに、書院にはそういった類の本は置いてなかった。

 本当に残念だ。

 魔導書、とか置いてないのか。


 まぁそれはいい。話を戻そう。

 まず、この世界についての歴史について整理する。

 とはいえ、何冊か本を読んだ結果としては細々とした部分が本によって異なってい た。

 故に共通の記述をされていた部分のみを抽出することにする。


 文献として残っている最初の記録としては、大抵この一文で始まっていた。

 "神が世界を創った"、と。


 元の世界の常識から考えれば鼻で笑ってしまうところだ。

 だが、俺はその"神"によって二度目の人生を歩むことができている。

 笑うことなどできない。


 さて、世界を創造した神様は自分の他にも何人かの神様を創り、世界の管理を補助させた。

 同時に、世界の中では幾つかの生物が活動を開始する。

 さらにその中で、高い知能を持った2つの種族が進化していった。

 魔族と人族だ。

 魔族は個々の身体能力が高く、魔力の扱いが上手な種族。

 人族は集団の統制能力が高く、計画的な行動が得意な種族だった。


 世界創造の直後は仲が良かった両種族。

 しかし、生活に慣れ始めるとその関係は徐々に悪化していった。

 魔族が人族を見下し始めたのだ。

 自分たちよりも遥かに能力の低い人族を、軽んじるのは当然のことだったかもしれない。

 だがそれでも、人族は魔族たちに見下されて黙ってはいなかった。

 やがて魔族と人族は対立し、戦争が始まる。


 最初は集団を活かした戦い方によって善戦していた人間達。

 しかし魔族の高い身体能力と魔力操作によって、彼らの勢力は確実に弱まっていった。


 このままでは人族が全滅してしまう。

 そう危惧した何人かの神々は、世界を創った神…創造神にこの事を相談した。

 そして、このことを聞いた創造神は自分の創りだした世界を二つに分けた。

 一つは今俺達が生活している世界。

 もう一つは、魔族たちが生活しているとされる魔界である。


 魔族と世界を分けた人族達は争いをやめ、平和な暮らしを始めた。

 世界各地に生活域を広め、それぞれ異なった文化を育み始めた。

 しかし、人族が得た平和は長く続かなかった。

 突如として、凶暴な生物が出現したのだ。

 モンスターである。


 新たな脅威に人族は怯えた、そして神々に助けを求めた。

 だが、モンスターは消えなかった。

 神々が助けてくれなかった訳ではない、助力はしてくれた。

 しかし同時に、モンスターに助力した神々も居たのだ。


 この2種類の神々こそが、聖なる神と邪なる神である。

 

 聖なる神は平穏を求めていた。

 誰もが幸せに暮らせる、平和な世界にしようとしていた。

 一方、邪なる神は進化を求めていた。

 魔族に比べて、人族達はあまりに非力だと考えたからだ。

 そこでモンスターという天敵の出現を活用して、人族を進化させようとした。

 争いは、文明を加速させるからな。


 かくして、人族は自力でモンスターと戦うこととなり、現在に至る。


 これが、俺が知ることのできたこの世界の大まかな歴史だ。


「…ふぅ」


 次に、地理について。


 この世界は、2つの大きな大陸と、1つの小さな大陸によって構成されている。

 アメリカ、ユーラシア、オーストラリアの3大陸みたいなものである。


 大きな大陸の内の1つは、此処トルテラが在る自然豊かなグリュネ大陸。

 もう1つの大きな大陸は、魔法技術が発達しているジルバ大陸。

 それと最後に、小さくてモンスターの活動が活発な為に人族の生活が困難なメラン大陸だ。


 気候等の違いは勿論だが、それぞれの大陸では生活している種族にも違いがある。

 それぞれの大陸の性質に合わせて、個性的な進化を遂げた人族がいるのだ。

 その中でも有名なのは、グリュネ大陸の獣人とジルバ大陸の鉱人である。


 地理については、この他に覚えておくことはあまりなかった。

 というより、覚えておけることがなかった。

 これ以上のことを調べようとすると、それぞれの大陸やその国の詳細になってしまう。

 情報量が多すぎるのだ。

 時間も足りないし、何より今は必要性を感じない。


 その上、調べている内にやる気が落ちてしまった。

 …どうせ生まれ変わるなら、ジルバ大陸の方が良かった。そう感じてしまったのだ。

 理由など、言うまでもあるまい。


 とはいえ、動物好きな俺としては是非とも獣人にあってみたい。

 やっぱり猫耳とか生えているのだろうか。

 尻尾とか生えているのだろうか。

 元の世界では少しばかりニッチな萌え要素だったが、獣人はどうだろう?

 この世界の楽しみが、また一つ増えた。


 しかし一方…鉱人というのは一体どんな種族なのだろうか。

 身体が鉱石で出来ているとか?

 …いや、それはもはや人ではないよな。ゴーレム的な何かだ。

 うーん…想像がつかん。

 また今度調べるとしよう。


 さて、最後に法学だ。

 これについては、幾つかの点のみ気にしていれば問題はない。

 元の世界で一般的に"犯罪"とされていたことは、ほとんどがこちらでも"犯罪"だからだ。

 物を盗めば犯罪だし、人を殺せば犯罪だ。


 しかし、刑罰に関しては大きな差がある。

 元の世界では懲役程度で済まされていた罪も、簡単に死刑にされてしまうのだ。

 物を盗むだけでも、盗まれた側が望めば死刑に処することができる。


 それから、この世界には貴族という特権階級が存在する。

 国や町といった大きなコミュニティは、基本的に貴族が仕切っているのだ。

 貴族というのは、調べた限りではイメージ通りの存在だった。要するにお金持ちだ。

 一般人では犯罪として罰せられることの中でも、貴族の場合は無罪とされるものが多い。


 貴族が一般人を殺したとしても、「反逆を目論んでいた」と一言理由をつければ殺人は正当化される。

 なんとも強きものに優しくて、弱き者には容赦がない法律である。


 ただしこれは、まぁ仕方のないことなのだろう。

 元の世界だって大差はない。

 圧倒的な社会的権力の前では、一般人など無力だ。

 …俺もそうだったからな。


 第一、お金持ちの貴族様なら大金使ってなんでももみ消せる気がする。

 お代官様、ここは一つこの饅頭でどうか…。

 ぐへへ、お主も悪よのう。

 …的な。


「…はぁ」


 まぁ、今日得た知識はこんなところだろうか。

 明日は魔法について調べに行きたい。

 ハンターズギルドに顔を出してみるか。

 もしかしたら、魔法使いがいるかもしれない。

 さらにもしかしたら、その魔法使いは親切な人で、魔法の使い方とか教えてくれちゃうかもしれない。

 …さすがにそりゃないか。


 一人ベッドの上で寂しく笑いながら、俺はポケットからハンターカードを取り出す。

 ついでに、ハンターカードの形状変更とやらも試してみようか。

 どんな見た目にしよう…スナッツは確か指輪にしてると言っていたな。

 アクセサリーにするのはセンスが良いかもしれない。


 ブレスレット…ネックレス…ピアス…。

 どんなアクセサリーにしようかと悩みながら、俺は何気なくカードを裏返した。


「…!?」


 別に、何かを確認しようと思ったわけではない。

 持て余した手が勝手にカードをひっくり返しただけだ。

 だがそれでも、偶然にもひっくり返したカードによって、俺の疲れは遥か彼方へと吹き飛んでいった。


「…"雷…纏"…?」


 カードの裏側…スキル欄に増えていた項目、"雷纏"によって。


いよいよ、主人公の能力が目覚めていきます。


閲覧ありがとうございました。

気になった点等ございましたら、報告してくださると助かります。

感想等もお待ちしております。

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