5
わたしは雪みたいに真っ白なおやしきで暮らしてた。
おじいさまのそのまたおじいさまがとなりの国の兵士たちから村を守ったので、ほうびにこの土地を治めるようにと王さまからさずかったのだという。わたしはこの家が大好きだった。お庭には季節ごとにちがう花が咲いていて、いつもいい香りがする。小さいころから病気がちで家にいなくてはいけない日が多かったので、少しでもわたしを楽しませようとお父さまとお母さまがつくってくださったのだ。
そんな優しかったお父さまもお母さまも、わたしが十になる前にお亡くなりになった。それから三年がたち、わたしは広いおやしきでじいややメイドたちにかこまれて暮らしている。今ではじいやとばあやが親がわりのようなものだ。近ごろはすっかり体も丈夫になり、村のこどもたちと遊んだり外を歩きまわったりして村をかけまわっている。なので、ちっともさびしくなんかない。
――今日はあの、木のたくさんあるところまで行ってみようか。
体が大きくなると歩くのもはやくなって、今まで行けなかったところまで行けるようになった。少し遠いけれど、あそこまでなら夕方までに行って帰れるはずだ。
「きらきらひかる、夜空の星よ……」
夜眠るときにお母さまがうたってくださった曲をくちずさみながら、畑のあいだを歩いていく。真っ赤なトマトがまるまる太っておいしそうだ。とげだらけのきゅうりはくるりとまるまり、ひもをとおしてネックレスにできそう。今年は天気がよかったから、作物のできもいいと農家の人たちはよろこんでいる。
近づいていくうちに、森は緑のかたまりでなくなってきた。遠くからだとにじんではっきりしないからブロッコリーにしか見えないけど、枝があってはっぱがあって、森はひとつひとつの木が集まってできているのだということがよくわかる。
「わーん、ママン!」
「めっ、森に行っちゃいけないっていったでしょう!食べられちゃいますよ」
花をつみながら歩いていると、森のほうからこどもが走ってきた。お母さんらしき人に抱きつき、ときおり頭をなでられながらこちらに向かってくる。あれは知っている子だ。
「こんにちは、アラン、おばさん」
「こんにちは、アンジェおじょうちゃん」
おばさんはゆったりと顔をあげ、うたうように言った。
アランはよく一緒に遊ぶそばかすだらけの男の子だ。負けん気が強くって、小さいながらも村の子たちの中心にいてやんちゃをしている。そのアランが、お母さんのエプロンをつかんでぐしぐしとべそをかいている。めずらしこともあるものだ。
「なにかあったの?」
「ひっく、ひっ……」
こしをかがめてアランをのぞきこむ。でも、アランは顔をおおったまま答えない。おばさんを見ると、みけんにしわをよせていやそうな声をあげた。
「ああ、森でばけものが出たそうなんですよ。最近村の者の間でうわさになってるんですが……じょうちゃんも森には近づかないほうがいい。さ、おやしきに帰りましょう」
「はーい……」
わたしはアランと手をつないで来た道をもどった。無理に行こうとしてもおばさんにつれもどされてしまいそうだ。だからまた今度、人がいないときに来よう。
そうして、私は森をあとにした。
❁
森へ入れないまま帰ってきたので、おやしきについても空は青かった。それでもたくさん歩いたから、わたしはおなかがぺこぺこだった。厨房に行くと、メイドたちがにんじんやじゃがいもを切ったり、ことこと鳴るおなべをかきまぜたりしていておいしそうなにおいがした。今夜はシチューみたい。でも、できあがるまではまだまだ時間があるからと、じいやがおやつを用意してくれた。
砂時計がさらさら落ちきって、じいやは白い花柄のカップに紅茶をそそぐ。銀色の台にはサンドイッチとスコーンとケーキがかわいらしくならんでいる。わたしはスコーンをふたつにわって、白ばらのジャムとクロテッドクリームをたっぷりつけた。
焼きたてで湯気がたちそうなほどさくさくだ。今日もおいしいわと笑いかけると、それはよろしゅうございましたとじいやもほほえむ。じいやは使い終わったお茶っぱを持つと、それでは失礼しますとうやうやしく立ちさろうとした。
「あ、ねえじいや」
「なんでしょう、おじょうさま」
「ばけものってなに?」
「は……」
じいやはぱちりとまばたきすると、心持ちまゆをよせていぶかしげな顔をした。
「あのね、今日アランが森でばけものに会ったらしいの。泣きながらお母さんに手をひかれて歩いててね」
「あのアランが?」
「そうなの。よっぽど恐ろしかったのでしょうね」
かわいそうに、とつぶやいて、アールグレイをちびりと飲む。わたしは熱いのが好きなので、冷めてしまわぬうちに香り高い茶を少しずつかたむけていった。すん、とはなやかなにおいをかいでいると、じいやはあごにぎょうぎょうしく手を当てて、こほんとせきばらいをした。
「……おじょうさま、もしや森に行ったのですか?」
「うん、行こうとしたんだけどね、途中でアランとおばさんに会って、あぶないからっておやしきまでつれもどされたの」
じいやはそうですかとまゆをさげて、ほっと息をもらす。そして、んっ、んん!とせきばらいをすると、厳しい表情をつくった。
「おじょうさま、ばけものとは危険でおぞましいもののことを言います。昔はおとぎ話に出てくる魔女や妖怪をさしたり、うらみつらみのあるものが年月をへてばけたものをそう言っていました。しかし、今ではそういうものは迷信やたとえ話で、おそらくいないということになっています。今の時代では、ばけものはふつうとはちがうものや、見たことのない奇妙なもののことを言うのでしょう」
「ふーん……」
わたしは曖昧にあいづちをうち、ハムとキュウリのサンドイッチにぱくついた。ふつうとはちがうものや見たことのないもの!それはいったいどんなものだろう?ああ、考えるだけでわくわくする。
「おじょうさま、好奇心がおうせいなことはよろしいですが、一歩まちがうと取り返しのつかないことになってしまうこともありますよ」
じいやはわたしの心を見すかしたように瞬時にくぎをさした。
「もしおじょうさまに万が一のことがあったら、私はだんなさまと奥方さまにいったいなんとおわびをすればよろしいのでしょう」
そうして、ちらと暖炉の上の仲むつまじい写真に目をやり、白いハンカチで目のふちをぬぐう。
「ううっ…その言いかたはひきょうだわ……」
こうやって、じいやはいざとなるとお父さまたちの話を持ちだすのだ。病気がよくなって興味のおもむくままに村中をかけまわるわたしをお父さまは元気でいいことだとよろこんでくれたけれど、おぼれそうになっている子を助けようと川に飛びこんで流されそうになったり、かえるとり競争に夢中で夜になってももどらなかったり、となりの村の子とけんかをして泥だらけで帰ってきたり(もちろん相手は傷だらけだ)……などなど、あまりに無茶をすると、おやしきに帰るたびにお母さまと一緒になって泣きながら抱きしめてくれたものだ。でも、そんなふうに心配して愛してくれた人はもういない。もう帰ってこない人について言われるとどうも弱かった。
「とにかく、村の者に話を聞いてみましょう。ばけものの正体がわかるまでは森へは近づかないこと。いいですね?」
「はあい……」
「……おじょうさま」
じいやはまゆをしかめてじろりと見おろす。
「はいはい、わかりました。わたしもみすみす食べられにいくのはいやですからね。そうしますよ」
「それでよろしゅうございます。では失礼」
おとなしくチョコレートケーキを切っていると、じいやは今度こそぱたんと出ていった。
――そうは言ったけれど。
わたしはケーキをつまみつつ、算段をめぐらせる。
このままおとなしく待っているつもりはさらさらない。森に行かずに情報に集めるには、森に行ったことのある人かばけものを見たという人に会いに行かなくては。わたしはにまりとあがった口のはしをかくすようにナプキンでふき、部屋をあとにした。
❁
長い廊下を歩いていると、手を上に下へと動かして熱心に掃除をしているメイドが見えた。リズミカルな動きにあわせて長い黒のスカートがひらめく。かたわらにはたっぷりと水の入った鈍色のバケツがおかれていた。
「ねえハンナ」
「なんでしょう、おじょうさま」
窓をふいていた手をとめて、ハンナはこげ茶のおさげをゆらしてふりかえる。
「森にばけものが出るって知ってる?」
「ええ、聞いたことがありますが……どうかなさったんですか?」
「どんなばけものが出るのかなって思って」
「さあ……私は村に来たばかりでよく知りませんが、村の人たちのうわさでは、たいそう大きなばけもので、大のおとなたちもすくんでしまうほどの恐ろしさだそうですよ」
「ふうん、そうなの」
「村にそんなのが住みついてるなんて、なんだか気味が悪いです。おじょうさま、あぶないから森に行っちゃだめですよ」
「……みんなお見とおしなのね」
「みんな?」
ハンナはぞうきんをたたみかえて首をかしげる。
「じいやよ」
ぶうっとふてくされてつぶやくと、ハンナはああ、と納得したように顔をゆるめ、うんうんとうなずいた。
「それで、じいやさんはなんとおっしゃってましたか?」
「ばけものの正体がわかるまで森へ近づくなって」
「ああ、じいやさんならそう言うでしょうね。ええ、それがいいですよ。森はきれいですが、毒のあるきのこがはえてたり、人を食べる凶暴な狼がいたり、恐ろしい野盗がいたり、いいことばかりじゃありませんからね。背の高い木がたくさんあって目印になるようなものがないから、なれている人でないとどちらから来たのかわからなくなって迷子になってしまうかもしれませんし。たとえばけものがいなくても、ひとりで行っちゃだめですよ」
ハンナは真剣な顔をして、念をおすように言った。
おとなたちはみんなそうだ。あぶないからいけません、まだこどもだからだめ――わたしのためを思ってくれているのだということは十分わかっているけれど、やっぱりおもしろくない。そんなこと言って、おとなたちだけで楽しいことをひとりじめしているのじゃないかしら?だめだと言われ内緒にされると、よけいにのぞきたくなってしまうのはどうしてだろう。
「……でも、気にならない?」
わたしよりずっと大きなハンナを、まつげのすきまからちらりとうかがう。秘密を知りたくなってしまうのは、きっとこどもだけじゃないはず。そんな気持ちをわかってほしかったのだ。ありきたりな忠告に素直にうなずいてしまうには、わたしは気が強すぎた。
「そりゃあ、まあ……」
ハンナは茶色の眉を下げて苦笑する。彼女にもきっと覚えがあるのだろう。わたしはほらね、と勝ちほこりたい気分になった。
「でも、そんなおぞましいもののことなんて、考えたくないですよう。どうせならかっこいい殿方のこととか、甘いおかしのこととか、ダンスのこととか、楽しいことがいいです」
えくぼをつくって、ハンナは無邪気に笑う。わたしは心の中にすうっと風がとおっていくのを感じた。そう、女の人はそういうものが好きだ。きれいで、楽しくて、しあわせで、他愛のないことが。こどものうちは男の子と一緒に虫とりやおいかけっこに夢中になっているけど、おとなになったらみんなかわってしまうのだろうか。もしかして、わたしも?
「そう……ありがとう」
夕食までちょっと村を散歩して来るわと言って、わたしはおやしきをぬけだした。
❁
つぎは、村のこどもたちのところに行くことにした。本当はアランに会いに行きたかったけれど、今日の今日だし、家まで行っておばさんに見つかるとやっかいだ。だから私は、川の近くのしげみをのぞきにいった。
水辺は涼しい風がふいている。この村は日射しをよければそんなに暑くはないけれど、それでも夏は日が長いから、川のまわりはとっても気持ちよかった。草のにおいのまじった空気をうでを広げてすいこむ。耳をすますと、きゃーははは、うふふ……と、なにやら楽しそうな声が聞こえてきた。
「あれえ、アンジェだ」
「えっ、アンジェ?」
ひざの上まで育った草をよけながらがさがさ分け入っていくと、草の上で遊んでいたこどもたちはくりっとふりむいた。そして、わたしの名を呼びうれしそうな顔でわらわらよってくる。ここは大人たちの知らない秘密基地だ。青青とおいしげった草の一部をなぎたおしてならした上から草の屋根をかぶせて作ってあるので、外から見てもわからないようになっている。川辺の草原の中の、緑の空間だ。
「どうしたの、今日はおそいじゃん」
「うん、ちょっと遠くまで歩きにいってたの。みんなはずっとここで遊んでたの?」
「そうだよー!お昼までは畑仕事手伝ってたけど、そっからは追いかけっこしたり、かくれんぼしたりしてたんだ」
「わたしはお皿をあらうのを手伝ったの!」
「ぼくは草ぬき!」
「そうなの、えらいねえ」
感心したふうに頭をなでてあげると、小さい子たちはえっへんと胸をはった。この村で働いていないこどもはわたしだけだ。そのことに気が引けることもある。でも、そのかわりわたしは小さいころから家庭教師をつけられて、異国の言葉を学んだり、過去と現在の世界の動きを知ったり、お勉強することはたくさんあった。どれも楽しかったけれど、体を動かすことが好きなわたしは村の人たちのしている仕事が知りたくて、お勉強の合間にこどもたちにまぎれて小麦を刈ったり牛の乳をしぼったりすることもあった。そのおかげか、「村一番のおやしきに住んでいる病気がちできれいなこども」を遠まきに見ていた子たちもだんだん遊んでくれるようになったのだ。
あいさつもすんだところで、わたしはここに来た目的をはたすことにした。
「ねえ、森のばけものの話、知ってる?」
「ああ、あれかあ……」
森のばけもの、という言葉で、こどもたちは顔を見あわせ、おびえたような、いやそうな目をした。
「知ってるっていうか、見たんだよ、おれたち」
「えっ、どうだった?」
こんなにはやく見つかるなんて。わたしは興奮のあまり草に手をついて、一番背の高いアンドレに向かってのりだす。するとこどもたちは、待っていましたというようにせきを切って話しだした。
「すんごくおっきくてえ、村で一番おっきいジャンおじさんふたりぶんくらいあるの!」
「ばっか、そんなにはでかくなかったよ。おじさんよりはあったけど、枯れ木みたいにひょろ長いからそう見えただけだ」
「手も足も大きかったけど、指が小枝みたいに細くて、風がふいたら飛んでっちゃいそうだったよ」
「その上すけるみたいに色が白くて……もしかしてあれ、幽霊なんじゃない?」
「きゃー、いやだあ」
「髪の毛が鳥の巣みたくぐしゃぐしゃで、すんごく不気味なの」
「そうそう、真っ黒で悪魔みたい!」
「いーや、それよりも、あのぎょろっとした目!」
「うん、あんな目で見られたらもうたまったもんじゃないよ。くぼみからいつこぼれ落ちるかわかりゃしない。ああ、思い出すだけでも気持ち悪い!」
こどもたちは次々にばけものの特徴を並べていく。
「まあ、ばけものってけものじゃないのね」
わたしはちょっとおどろいて口をはさんだ。髪の毛がはえているということは、毛もくじゃらな動物じゃあないということだ。体中に毛があればそんな言いかたはしないだろう。でも、わたしは人のほかに毛のはえていない動物を知らなかった。
「動物よりは人に近そうだけど……とてもおなじ人間には思えないね」
「悪魔か幽霊か……どちらにしろ、恐ろしいものにはかわりないよ」
こどもたちはうんうんとうなずきあっている。みんながこんなに恐がるなんて今までなかったことだ。暗くなるまで遊んでお母さんやお父さんにしかられるのを恐がる子もいたけど、それは自分が悪いことをしたと思ってるからだ。もしそうじゃないなら胸をはって「ちがう」って言えるはず。怒られたってへっちゃらなはずなのだ。ばけものを恐がるのとはわけがちがう。ばけものは、目の前にあらわれただけでみんなを恐がらせる。姿が恐ろしいから、見たことのないものだから、なにをするかわからないから、みんな自分を守るために逃げるのだ。そんな存在を、わたしはほかに知らない。実物を見ていないわたしはひとりばけものの想像をふくらませてわくわくしていた。
「ところで、みんなはどこでそのばけものを見たの?」
「森の入り口にいたんだよ。近くで遊んでて、うしろからなんか聞こえたからふりむいたらいたんだ」
「ふうん……どうしてそんなところにいたのかしら」
ブロッコリーのかたまりみたいな森を思い浮かべながらつぶやくと、それをきっかけにこどもたちはまたわいのわいのと小鳥のように話しはじめた。
「ぼくはね、ばけものはたぶん森の中から出てきたんだと思う」
「森に住みついてるのかなあ?こわいよう」
「あいつ、きっと森にだれも入らせないようにたってたんだぜ」
「なんのためにだよ」
「そりゃあ、だれだって自分の住みかを荒らされるのはやだろ。おれたちだっておとなに秘密基地見つけられてこわされたら怒るに決まってる」
「でも、あの森はもともと村のみんなで使ってたんだろ?あとから来たくせになんだよう」
「そんなこと言ったって、ばけものに話が通じるわけないだろ」
「もしかして、森の奥に宝物でもあるのかな?」
「ああ、お姫さまを殺して宝石をうばって逃げた野盗がたたられて死んだとか」
ぐさっと短剣をつきさすような仕草に、女の子を中心にきゃあ、と悲鳴が上がる。それを見て、おとなびたフランシスがあきれたようにため息をついた。
「森の番人だよきっと。村の人たちが森を荒らさないよう見はってるんだ」
「森の、番人……?」
聞いたことのない言葉に、首をかしげてくりかえす。みんなも目をぱちくりさせて、なあに、それーとフランシスのそでをひっぱった。
「人里をはなれたところにある森にはどこもいるらしいよ?木がくさってたおれたり、雪の重みでなだれがおきたり、火事が起きたりしてたらたいへんだから、森の中の見回りするんだ。あそこは村の畑があるところからそんなにはなれてるわけじゃないけど、けっこう大きな森だから、番人がいてもおかしくないよ」
「さっすが、フランシスは物知りだなあ」
「フランシスおにいちゃんすごい!」
「となりの村から来た商人に聞いただけだよ」
アンドレや小さい子たちが目をかがやかせてほめても、フランシスはふいと横を向きそっけない返事をするだけだった。でも、その目はまんざらでもなさそうに笑っている。
村で一番大きな畑を持っているフランシスのお父さんは村の人たちのまとめ役のような感じで、わたしのお父さまとも仲がよかった。そのせいか、息子の彼はこどもたちの中で一番村のことにくわしかったし、村の外のこともたくさん知っていた。その上おとなたちを言いくるめてしまうほど頭も回るから、みんなフランシスをたよりにしているのだった。
森の番人なら、きっと森のことをよく知ってるんだろうな。番人と一緒なら、森の中でも迷子にならずに遊べるんじゃないだろうか。だけど、その番人はばけもので、みんなが逃げ出すほど恐ろしいらしい。じいやもハンナもばけものの正体がわかるまで森に行っちゃだめって言ってたし……ばけものに会ってはみたいけど、怒らせて食べられたくはない。ひとりじゃだめならみんなをさそって行ったらどうだろうと考えたけれど、これだけ恐がってたらだれもついてきてくれなさそうだ。とりあえず、明日先生が来たら森の番人とばけものについて聞いてみようか。
それから日が暮れるまで川原でおにごっこをして、わたしはシチューのふんわりしたにおいのただようおやしきにもどった。