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シーン10:章末 確定
ディアナは、勝たなかった。
剣を振るわず、引き金にも触れず、
誰かの前に立って称えられることもなかった。
英雄にもならなかった。
名前は記録に残らず、功績は評価されず、
彼女の行動は「余計なこと」として整理された。
世界を否定もしなかった。
制度は正しいまま動き、
判断は規定通りに下され、
誰も公式には間違っていない。
彼女がしたのは、ただ一つ。
世界が「事故」と呼んできたものに、
それでは足りない形を与えただけだ。
新しい事実を作ったわけではない。
真実を叫んだわけでもない。
すでに存在していた数値と記録と配置を、
事故では処理できない並びに整えただけだった。
それだけで、十分だった。
世界は、今日も正しく進んでいる。
誰も断罪されず、
誰も責任を負わず、
制度は健全なままだ。
ただ一つだけ、変わったことがある。
もう、同じやり方では殺せなくなった。
それは勝利ではない。
救済でもない。
ましてや、正義ではない。
それでも――
ディアナは生きている。
評価を落とし、立場を失い、
英雄になれなかったまま。
それで十分だった。




