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サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


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シーン4:ディアナの唯一の介入

ディアナは、動かない。


走らない。

叫ばない。

誰の前にも立たない。


その代わり、彼女は視線を落とす。


観測装置の補助端末。

大会用に設置された、一次ログとは別系統の記録領域。

「参考値」として扱われ、

事故処理の際には真っ先に切り捨てられる場所。


誰も、重要だとは思っていない。


彼女は、そこに触れる。


新しい数値は入れない。

改竄もしない。

削除もしない。


あるのは、すでに存在している記録だけだ。


弾道ログ。

――誤差範囲内。


魔力干渉値。

――揺らぎはあるが、異常なし。


装備反応。

――規定通り。


どれも、単体で見れば「問題なし」。

これまで、何度もそう判断されてきた。


ディアナが行うのは、並べ替えだけだ。


時間軸を、ほんのわずかに詰める。

照合順を、評価用から解析用に切り替える。

相関を、個別ではなく同時発生として表示する。


それだけ。


画面上に浮かび上がるのは、新しい真実ではない。

今まで、ずっとそこにあった事実だ。


だが――

並んだ瞬間、それは変わる。


弾道の逸れと、

魔力干渉のピークと、

装備反応の遅延。


同一フレーム内で、重なる。


偶然では、説明できない一致。


事故処理のテンプレートが、噛み合わなくなる形。


「想定外」で片付けるには、

整いすぎた並び。


ディアナは、入力を終える。


指は止まり、

端末は、ただ静かに記録を保持する。


彼女は、何も証明していない。

誰も告発していない。

世界に、新しい意味を与えてもいない。


ただ、事故として処理できない形に、

事実を整えただけだ。


真実を作らない。

勇気も示さない。

正義も語らない。


それでも――


この瞬間から、

実弾は「事故」では終われなくなる。


世界は、初めて足を止める。


説明が、用意できない。


そしてディアナは知っている。


これは、勝利ではない。

英雄譚でもない。


ただ一つ、

世界が最も嫌う行為。


前提を、壊しただけだ。

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