シーン2:暗殺側の最終配置
観測は、静かに更新されていた。
学園の外。
だが、遠くでも、暗くもない場所。
人の往来があり、記録が残り、偶然が成立しない公開空間。
そこに、判断だけが置かれる。
実行者の姿はない。
名も、顔も、動作も描かれない。
あるのは、整えられた数値と、短い言葉だけだ。
配置――完了。
射線――成立。
外乱――許容範囲。
そして、名前が一つ、再び確認される。
ディアナ。
分類は変わっていない。
「排除対象候補」。
再現性を乱す可能性。
判断を遅らせる存在。
説明できる、という一点において危険な個体。
だが、結論は即座に下される。
――今回は、見送る。
理由は明確だった。
公開空間であること。
観測密度が高すぎること。
貴族、軍、学園、記録装置。
どこにも「処理」の余地がない。
そして何より。
今は、王子が本命だ。
ディアナは、まだ使える。
彼女の存在は、周囲の判断を慎重にする。
慎重さは、遅延を生み、遅延は予測を可能にする。
殺すには、惜しい。
排除するには、早すぎる。
世界は、そう判断した。
ディアナ自身は、それを知らない。
誰も告げないし、ログにも残らない。
だが、結果だけは現れる。
誰も彼女に照準を合わせない。
誰も彼女を止めない。
誰も、彼女を守ろうともしない。
世界は、ディアナを殺さなかった。
代わりに――
利用する側に回った。
彼女が壊すかもしれない前提を、
彼女自身が最後まで見届けるために。
判断は下された。
実行は、これからだ。
そしてその中心には、
変わらず、王子が立っていた。




