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サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


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83/99

シーン2:王子死亡条件の再現 ― 条件は偶然を装って完成する ―

王子ルッツは、前に出ていた。


自ら志願したわけではない。

配置として、そこが空いていただけだ。


前線と後衛の境目。

支援が届き、かつ全体を見渡せる位置。

評価上も、政治的にも「正しい」場所。


誰かがそこに立たなければならなかった。

そして、その役割は自然に王子に回ってきた。


射線が、集まり始める。


意図されたものではない。

敵味方の移動に伴う、自然な集中。

複数の角度から、細く、重なる線。


その中心に、ルッツはいる。


実弾が混入した装備ラインと、

その射線が交差していることを、

誰も意識していない。


数値上、問題はない。

重量も、反応も、許容誤差内。

混入は、依然として「存在しない」扱いだ。


制度は、沈黙している。


教官の指示は妥当。

配置変更も合理的。

判断はすべて、規定の内側にある。


危険を示す言葉は使われない。

使う必要がないからだ。


ディアナは、動かなかった。


動けなかった、ではない。

動いても、意味がないと理解していた。


(もう、避ける位置じゃない)


ルッツは、条件の外にいない。

かといって、条件を踏み越えてもいない。


ちょうど、そこに収まっている。


(次に起きるのは、事故じゃない)


偶然を名乗るには、

揃いすぎている。


再現を否定するには、

配置が正確すぎる。


ディアナの中で、言葉にならない確信が形を持つ。


王子は、選ばれていない。

狙われてもいない。


ただ、結果が発生する位置にいる。


世界は、誰にも強制されず、

誰の意思も介さず、

予定通りに進もうとしていた。


王子ルッツの死は、

決断でも、犠牲でもない。


条件が完成したとき、

自然に現れる“結果”として、

すでに輪郭を持ち始めていた。

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