シーン7:再評価 ― 排除対象「候補」への移行 ―
評価は、感情では行われない。
常に、分類の更新として処理される。
暗殺側管理室。
先ほど特定された名前は、まだ赤にはなっていない。
ディアナ。
表示色は、警告黄。
現時点での結論は、一行で済んだ。
――排除は行わない。
理由は単純だ。
まだ“成果”を直接阻害していない。
弾は機能している。
制度は動いている。
事故条件も、消えてはいない。
彼女の存在は、
致命点に触れていない。
だが――
分類は、確実に変わった。
旧評価が、画面の端に押しやられる。
無害。
影響度低。
無視可能。
これまでは、
それで十分だった。
ディアナは、
勝たず、
目立たず、
制度に従っていた。
少なくとも、
そう見えていた。
新しい評価欄が開かれる。
再現性阻害要因。
判断遅延要因。
排除対象候補。
語調は淡々としている。
断定ではない。
だが、戻ることもない。
誰かが確認する。
「行動自体は、まだ規定内だな」
「違反はしていない」
その通りだった。
記録上、
ディアナは何も壊していない。
だが、別の声が続ける。
「問題は、行動じゃない」
画面に、先ほどのログ比較が再表示される。
リリアの慎重な足取り。
ディアナの先読み。
それらを繋ぐもの。
「説明だ」
制度は、
“知らない者”によって成立する。
平均化された装備。
数値で切られた安全。
誰もが同じ前提に立つことで、
世界は管理可能になる。
だが、
説明が入ると、その前提が崩れる。
知った者は、
もう同じ動きをしない。
慎重になる。
疑う。
止まる。
判断が遅れる。
そして――
判断が遅れる世界は、制御できない。
統括責任者が、短く整理する。
「彼女は、意味を与えられる」
それは、最も危険な資質だった。
力ではない。
立場でもない。
“なぜ起きるか”を語れる存在。
事故を、偶然のままにしておかない者。
世界を、
ただ進ませるのではなく、
理解させてしまう者。
「排除対象“候補”として登録する」
異論は出ない。
まだ、排除する理由は足りない。
だが、
放置できる理由も、もう存在しなかった。
画面上で、
ディアナの評価欄に
小さな印が追加される。
それは命令ではない。
ただの準備だ。
世界にとって、
最も危険なのは、
壊す者ではない。
意味を与える者だ。
だから、
彼女はまだ生きている。
そして同時に、
もう無視されることはなくなった。




