Ⅷ.確認と確信
洋子は、息を整えようとしながら、
視線をフランソワに戻した。
「……フランソワ」
自分の口から出た声は、
思っていたより落ち着いていた。
震えを抑えることだけに、意識を集中させる。
「本日の日付を、教えて」
執事は一瞬も迷わない。
「王暦三二七年、四月十三日でございます」
胸の奥が、冷たくなる。
「学園は……?」
「ヴァルツァーク学園でございます。
本日は午前より戦術理論、午後からは実技演習が予定されております」
最後の確認を、
一息で投げる。
「……次の大会は」
フランソワは、
ごく自然に続けた。
「月末に開催される、
第七回学園合同戦術大会でございます」
一致した。
日付。
学園名。
大会のタイミング。
どれも、
洋子が知っている進行と、
一つもズレていない。
胸の奥で、
何かが音を立てて崩れる。
これは夢ではない。
目覚めれば終わるものではない。
かといって、
知らない異世界でもない。
自分が、昨夜までプレイしていたゲームの中だ。
しかも――
立場は、最悪。
転生先は、
主人公でも、
ヒロインでもない。
強すぎるがゆえに、
物語から排除される役。
最強の悪役令嬢。
必ず死ぬディアナ。
洋子は、
静かに、しかし確実に理解した。
ここでは、
何もしなければ死ぬ。
そして、
目立っても死ぬ。
選択肢は、
最初から、
極端に少なかった。




