表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/99

シーン6:暗殺側の再観測 ― ノイズが個体化する ―

観測は、常に遅れて意味を持つ。


暗殺側の記録卓には、

いつもと変わらない大会中盤のログが並んでいた。


数値は正常。

弾道も平均内。

警告域に触れる項目は、ひとつもない。


それでも――

違和感だけが、積み重なっていた。


最初に浮いたのは、リリアの行動ログだった。


移動が慎重すぎる。

遮蔽物への寄り方が、平均より半歩深い。

射撃判断までの遅延が、微妙に長い。


致命的ではない。

評価を下げるほどでもない。


だが、「癖」としては不自然だった。


「……前日まで、こんな動きだったか?」


分析官の一人が、過去ログを重ねる。


一致しない。

訓練時のリリアは、もっと素直だった。


安全と判断された地点に、迷わず踏み込む。


制度が想定する、正しい生徒の動き。


それが、今はない。


次に引っかかったのは、ディアナだった。


位置が、わずかにズレている。


後衛配置の範囲内。

規定違反ではない。

だが、最適解からは外れている。


視線の向き。

待機時間。

魔力の立ち上がりのタイミング。


どれもが、

「起きてから対応する」動きではなかった。


起きる前に、構えている。


室内の空気が、少しだけ変わる。


「偶然か?」


誰かが言う。


確率的には、そう処理できる。

二人とも規定を守っている。

数値異常もない。


別の声が、遅れて返す。


「……いや」


画面を切り替え、

二つのログを並べる。


リリアの慎重さと、

ディアナの先読み。


単独では説明がつく。

だが、同時に起きる理由がない。


「説明が入っている」


その言葉で、

室内の全員が理解した。


制度は、説明されないことを前提に動く。


生徒は知らない。

だから従う。

だから平均に収まる。


だが今、

“知った後の動き”が混じっている。


誰かが、世界の構造を渡した。


「誰が?」


問いは短い。


画面に映る後衛の少女。


名前も、履歴も、

これまで問題になったことはない。


正しい配置。

正しい判断。

正しい沈黙。


そのはずだった存在。


解析官が、静かに答える。


「……ディアナだ」


その瞬間、

ログ上の異常は、初めて意味を持った。


ノイズではない。

誤差でもない。


個体化した、介入。


名前を持った変数。


それは、排除可能な対象として

ようやく定義されたということだった。


暗殺側は、記録を更新する。


対象評価欄に、

新しい注釈が加えられる。


――ノイズ源、特定。


初めて、

世界の歪みに名前が付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ