シーン3:事故処理と制度の反応
医療班が去った後、フィールドには「何も起きていない時間」が戻ってきた。
教官たちは淡々と作業に入る。
感情は排され、手順だけが残る。
事故報告書は即日作成された。
・発生時刻
・関与装備
・弾道解析
・生徒の行動ログ
すべてが項目通りに埋められていく。
そこに形容詞は入らない。
結論欄には、短い一文だけが置かれる。
「個別事案として処理」
制度上の瑕疵は否定された。
装備は仕様通り。
管理は規定通り。
教官の判断も、手順に沿っている。
誰かが「条件を守っていた」という事実は、
評価にも、免責にもならない。
それは単なる付帯情報として、記録に残るだけだった。
学園側の処理は、ここで終わる。
これ以上掘り下げる理由がないからだ。
――――
同じ頃、学園の外。
暗殺側の管理室では、冷却された声でログが再生されていた。
弾道。
命中角。
防護貫通の瞬間。
「狙いではない」
「成功とも失敗とも言えない」
誰かがそう前置きし、だが否定はされなかった。
重要なのは結果ではない。
条件をすべて守った対象が、
条件の内側で死に得るという事実。
それが、再現可能な形で確認されたこと。
「……条件遵守は、安全保証にはならないな」
誰かがそう呟く。
それは評価でも、批判でもなかった。
ただの確認だ。
計画は修正されない。
撤回もされない。
むしろ、世界がどこまで無防備かが、
より明確になっただけだった。
――――
制度は正しく動いた。
世界も、想定から逸脱していない。
それでも、人は死んだ。
誰の悪意もなく。
誰の失策もなく。
正しさの総和の中で。
その無情さだけが、
静かに確定していった。




