Ⅶ.理解
ディアナ。
その名前を、洋子はよく知っている。
何度も操作した。
何度も戦わせた。
何度も、死なせた。
悪役令嬢。
学園最強。
単独無双。
誰とも群れず、誰にも頼らない。
そして――
最後に、必ず死ぬ存在。
フランソワの声が遠のく。
部屋の豪奢さも、
柔らかすぎるベッドの感触も、
一気に意味を失った。
代わりに、
記憶の奥から、
ゲーム画面が鮮明によみがえる。
砂埃の舞うフィールド。
貴族学園主催のサバゲー大会。
歓声と銃声。
魔法障壁。
そして――
鳴り響く、異音。
実弾。
誰かの悲鳴。
止まる画面。
唐突に表示される、死亡ログ。
事故。
そう処理されるイベント。
ディアナは、
どのルートでも、
そこに立っている。
勝っていても。
負けていても。
完璧な戦績でも。
彼女だけは、
逃げられない。
「……嘘でしょ」
声が、震えた。
否定したかった。
偶然だと思いたかった。
何かの勘違いであってほしかった。
だが、
知ってしまっている。
この世界は、
物語であることをやめていない。
そして、
物語はいつも、
ディアナを殺す。
喉の奥が、ひくりと鳴る。
死ぬ。
このまま進めば、
自分は、あの大会で死ぬ。
それが、
ゲームとしてではなく、
現実として訪れる。
理解した瞬間、
恐怖は、
静かに、しかし確実に、
洋子の全身を支配した。




