シーン7:即時対応 ――処理の開始――
反応は、速かった。
発砲から数秒。
教官の号令が、重なり合って飛ぶ。
「全員、射撃停止!」
「フィールド封鎖!」
「医療班、前進!」
訓練は即座に中断される。
迷いはない。
声に感情もない。
このための手順が、
最初から用意されている動きだった。
医療班が駆け込む。
担架。
応急魔法。
止血処置。
倒れた生徒は意識がある。
痛みで声を上げるが、
それは「生きている」証拠として受け取られる。
教官の一人が、魔導ログを確認しながら淡々と告げる。
「想定外の事象が発生した」
「個別事故と判断する」
「現在、原因を調査中だ」
周囲の生徒は動かない。
指示されるまで、立ったまま待つ。
混乱は起きない。
叫びも、怒号もない。
制度は、
こういう瞬間にこそ最も滑らかに機能する。
セシルは、その場に立ち尽くしている。
銃は下ろしている。
引き金から指は離れている。
自分が何をしたのか、
論理的には理解している。
引き金を引いた。
弾が出た。
誰かが倒れた。
だが、
「悪意」や「過失」という言葉が、
自分の内側に結びつかない。
彼の中に残っているのは、
ただ一つの事実だけだ。
――自分が、引き金を引いた。
それ以上でも、それ以下でもない。
誰も、セシルを責めない。
教官は問い詰めない。
生徒も、視線を向けるだけで言葉を投げない。
必要がないからだ。
事故は事故として処理される。
個人の意思や感情は、
原因として採用されない。
だから、
誰も悪くならない。
責任は分解され、
制度の中に溶けていく。
その結果として、
事件は成立する。
非難もなく、
糾弾もなく、
ただ「起きたこと」として。
ディアナは、少し離れた場所で立っている。
教官の指示。
医療班の動き。
公式用語の選択。
すべてが、
予想通りだった。
ここから先は、
もう誰の意志でも止められない。
処理は、始まった。




