表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/99

第八章 「大会開始」 ―― 学園サバゲー大会本番 ―― シーン1:開会前ブリーフィング (安全が宣言される瞬間)

屋外模擬戦フィールドは、朝の光に均一に照らされていた。

人工的に整えられた地形、射線を意識して配置された遮蔽物、上空を周回する記録用魔導装置。そのすべてが、すでに「使用されること」を前提として沈黙している。


観客席には貴族の関係者が並び、装飾過多な席と簡素な席とが、明確に分けられていた。誰もがこの行事を「競技」として見に来ている。そこに疑いはない。


生徒たちは整列し、装備を身につけたまま、指示を待っていた。

緊張はある。だが、それは個々の勝敗や評価に向けられたもので、危険そのものに向けられたものではなかった。


前に立った主任教官は、いつもと変わらぬ声量で口を開いた。


「本日は、定例行事である学園模擬戦大会を実施する」


魔導装置が反応し、フィールド全体のログ表示が空中に浮かび上がる。装備規格、出力制限、判定方式。

一つ一つが淡々と読み上げられ、確認されていく。


「使用装備は、事前点検を通過した規格品のみです」

「出力は制限され、統制された状況下で運用されます」

「評価基準は、従来通りとします」


そこに、「事故」という言葉はない。

「防止」という語もない。


代わりに繰り返されるのは、

「想定訓練」

「統制」

「評価」


すべてが、説明可能であることを前提とした語彙だった。


主任教官は生徒を見ていない。

彼の視線は、規定と記録と、過去の前例に向けられている。


やがて、一歩前に出るよう促され、王子ルッツが前列に立った。

形式的な位置。象徴としての立ち位置。


彼は一瞬、観客席を見渡し、それから生徒たちに視線を向ける。

だが、何も語らない。


改革についての言葉はない。

安全への強調もない。


彼はここで、王子ではあっても、制度の外には立たない。

学園の一構成要素として、静かにそこにいるだけだ。


「それでは、模擬戦を開始する」


その一言で、空気が切り替わる。


誰かが安堵し、

誰かが気合を入れ、

誰かが何も感じない。


だが、この瞬間、確かに成立していた。


――大会は、安全であると宣言された。


それは願いではなく、判断でもなく、

ただの前提として。


誰も異議を唱えないまま、

世界は、次の段階へと進み始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ