シーン4:外部との接続 ――判断の引き渡し――
対外調整担当教官は、会議室を出ると、そのまま執務区画へ向かった。
廊下の照明は一定で、足音だけが規則的に反響する。
彼の役割は明確だ。
判断をすることではない。
判断されたものを、正しく外へ渡すこと。
端末を起動し、学園管理ログを呼び出す。
抽出されるのは、すでに内部で処理が完了した項目のみだった。
装備ログ。
魔力推移。
訓練評価。
体調申告の記録。
そこに、解釈は加えない。
疑問形も、補足説明も、注釈も付けない。
提出される文言は簡潔だ。
不安定要素:数値上なし。
特記事項:当事者申告あり(制度内処理済み)。
管理状況:適正。
それ以上でも、それ以下でもない。
対外調整担当教官は理解している。
外部が求めているのは、事実ではない。
「判断が済んでいるかどうか」だ。
このログは、その条件を満たしている。
送信操作を確定させる指先に、迷いはない。
情報は誠実だ。
虚偽も隠蔽も含まれていない。
ただし、十分ではない。
だが、それで問題はない。
十分でない情報が、
制度的に問題を生まない形で整えられていることこそが、
この提出の目的だからだ。
外部は、このログを受け取り、
「学園側の判断は完了している」と理解する。
それ以上、踏み込む理由は生じない。
対外調整担当教官は端末を閉じる。
その瞬間、判断は完全に引き渡された。
ここから先、何が起きても。
学園は、すでに正しく処理を終えている。
彼は席を立ち、次の業務へ移る。
空気は変わらない。
判断だけが、静かに外へ流れていく。




