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シーン3:「誰も悪くない」の確認 ――責任の分解――
議題は短く、しかし明確だった。
もし、何かが起きた場合。
責任は、どこにあるのか。
主任教官は感情を挟まず、項目としてそれを分解していく。
教官。
規定通りに判断し、裁量の範囲を逸脱していない。
学園。
管理体制に瑕疵はなく、必要な点検と記録はすべて完了している。
装備。
仕様通りに作動し、想定された出力と補正を維持している。
生徒。
自己判断による危険行動は確認されていない。
どこにも、責任はない。
正確には、責任が発生しないように、すでに処理されている。
それは誰かの怠慢ではない。
手順通りに行われた結果だ。
主任教官は、静かに理解する。
これでいい。
誰も悪くない。
その結論に、ためらいはない。
誰かを免責する意図も、誰かを切り捨てる意識もない。
ただ、制度として正しい形が整っただけだ。
そして同時に、
誰も守られないという事実には、思考が向かわない。
守るべき対象を想定しなければ、
守れなかったという問題も生まれない。
責任は消え、
判断だけが残る。
会議室の空気は変わらない。
誰も声を上げず、誰も顔を伏せない。
「誰も悪くない」という結論が、
この場で最も扱いやすい真実として、確定する。




