第七章 「処理する大人たち」 シーン1:教官会議・再確認フェーズ ――判断はすでに終わっている――
学園上層、管理会議室。
生徒の立ち入らないその空間は、教育施設というより、行政機関に近かった。
円卓の中央に、淡い光を放つ魔導ログが投影されている。
数値は整然と並び、警告色は一切ない。
誰かの感情や迷いを映す余地のない、完璧な表示だった。
会議は定刻通りに始まった。
特別な招集ではない。
あくまで、定例の確認作業だ。
「装備ログは?」
「正常です」
即答だった。
詳細説明は不要という前提で、その言葉は受け取られる。
「魔力推移」
「許容範囲内。揺れは観測されていますが、前例あり」
「体調申告」
「制度に則って受理。対応済み」
「模擬戦の評価は?」
「問題なし。連携不足として処理されています」
淡々と、淡々と。
一つひとつの報告が、歯車の噛み合いを確認するように進んでいく。
誰も、「危険」や「異常」という語を使わない。
使われるのは、すべて制度が許容する言葉だけだ。
――想定内。
――前例あり。
――説明可能。
それらは評価ではなく、確認のための語彙だった。
主任教官は、円卓の光を見つめながら、静かに理解している。
判断は、もう終わっている。
ここで新しい結論が生まれることはない。
今日は、それを確認する日だ。
誰も声を荒げない。
誰も異議を唱えない。
必要な情報はすべて揃っており、規定から外れる要素は存在しない。
だから、この場で何かが変わることはない。
会議は続くが、結論は最初から動かない。
この時点で、すでに確定している。
――この件に関して、
これ以上の判断は、存在しない。




