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サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


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54/99

シーン6:章末処理(延期という結論)

最終判断は、簡潔だった。


暗殺側の会議記録に残されたのは、三行だけ。


中止:否

実行:否

延期:是


理由の欄は、空白のまま提出される。


記録担当が一瞬だけ筆を止めたが、何も書かずに次の項目へ進んだ。

言語化できない理由は、存在しない理由と同義だからだ。


ノイズ源は特定できない。

異常値もない。

妨害行為も検出されていない。


それでも、全員が同じ感覚を共有していた。


――世界が、滑っている。


計画を立てたときに想定していた摩擦がない。

力をかけても、手応えが返ってこない。

引き金に指をかけた瞬間、理由だけが消える。


再現性がない事故は、事故ではない。

政治処理できない出来事は、起こしてはならない。


だから、延期。


中止ではない。

問題が解決したわけではない。


ただ、この周期ではない、という判断だった。


一方、学園では何も起きていない。


装備点検は通常通り終了し、

訓練は予定通り消化され、

評価表に新たな注記は増えない。


処分もない。

注意喚起もない。


世界は、平常運転の顔をしている。


ディアナは、その中にいる。


無言で、後方に立ち、

勝敗を動かさず、

誰かの判断を代行しない。


彼女は何もしていない。


規則を破っていない。

命令にも逆らっていない。

声を上げてもいない。


だが、確かに変わった。


前に出る存在ではなくなった。

物語を加速させる要因でもなくなった。


そして、誰にも気づかれないまま、

「計算に乗らない存在」になった。


それだけで十分だった。


章の終わりに、確定する事実は一つ。


計画は続く。

世界も続く。


しかし、ディアナの立ち位置だけが、

静かに――しかし決定的に――ずれている。

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