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サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


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53/99

シーン5:暗殺側に生じる違和感(観測の失調)

観測室は、学園から遠く離れた場所にあった。

窓はなく、壁面には魔導解析盤が並び、静かな光だけが室内を満たしている。


映し出されているのは、生徒たちの行動ログと魔力推移。

数値は整っている。異常値はない。警告色も出ていない。


担当者の一人が淡々と報告する。


「魔力推移、想定範囲内。装備ログも正常です」


別の観測者が頷きながら補足する。


「感情由来の揺れも、前回と大差なし」


問題はない。

少なくとも、数値上は。


しかし、誰も次の判断に移らない。


解析盤の一角に表示された戦績予測グラフ。

そこだけが、微妙に歪んでいる。


「……勝率が下がっているな」


誰かが呟く。


急落ではない。

誤差と呼べる範囲だ。


だが、継続的だった。


「出力ピークが発生していません」


「以前は、必ず立ち上がる局面があった」


記録を遡る。

確かに、戦局が収束する直前に現れていたはずの鋭い立ち上がりが、消えている。


魔力は流れている。

判断も行われている。


だが、決定的な一点が来ない。


予定されていた条件――

「前に出る者」

「場を一気に単純化する存在」


それが、揃わない。


解析責任者が腕を組む。


「異常はない。だが……再現性が低い」


その言葉に、室内が静まる。


暗殺計画において、異常よりも厄介なのは、説明できない揺らぎだった。

異常なら排除できる。

原因があれば修正できる。


しかしこれは違う。


誰も妨害していない。

誰も逆らっていない。


それなのに、結果だけが変わっている。


「この状態で実行する意味は薄いな」


「成功確率を計算できない」


短いやり取りが交わされる。

感情は含まれていない。合理的な判断だ。


「もう一周期、様子を見る」


結論は即座にまとまった。


延期。

中止ではない。


計画自体は維持される。

だが、踏み出す足が、一度だけ止まった。


それが、彼らにとって初めての感覚だった。


妨害者はいない。

抵抗もない。


それでも、引き金を引く理由が、数式の中から消えている。


――計画は、この瞬間、初めて「躊躇」という現象を生んだ。


誰もその原因を特定できないまま、観測室の光は静かに落とされていった。

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