シーン4:リリア、正論を公言(条件破壊)
リリアは、視線を逸らさなかった。
ディアナの小さな動きは見えていた。
首を振る、ほんの一瞬の合図。
意味を考える余裕はあった。
だが、理解するには、時間が足りなかった。
胸の奥に残る違和感が、消えない。
魔力を流すたびに感じる、あの引っかかり。
数値が正常であることと、感覚が正常であることは、同じではない。
リリアは息を整える。
声を荒げない。
不安を煽らない。
誰かを責めない。
ただ、事実として感じていることを言葉にする。
「数値は……問題ないのは分かります」
そう前置きしてから、続ける。
「でも、魔力を流すときに、装備が少し遅れて補正している感じがして……」
言葉を選びながら、慎重に。
「均してはくれるんですけど、追いついていない瞬間がある気がします」
事故、という言葉は使わない。
危険、という断定もしない。
あくまで感覚の話。
検討の余地があるかもしれない、という提案。
場の空気を壊すつもりはない。
教官の判断を否定する意図もない。
むしろ、協力したいという姿勢だ。
だからこそ、その発言は――正論だった。
誰かが何かを言い返す前に、
解析室は一瞬だけ、静まり返る。
数値は正常。
規格内。
手順も間違っていない。
それでも、当事者が、公開の場で疑問を提示した。
その瞬間。
制度が前提としていた条件が、ひとつだけ崩れる。
「安全宣言が出る前に、
安全が疑われた」
それだけで、十分だった。




