シーン7:章末まとめ
会議の終わりは、決議ではなく、共有で締められる。
誰かがまとめる。
誰かが頷く。
反論は出ない。
――事故は、完全には防げない。
それは前提だ。
この場にいる全員が、最初から知っている事実だった。
だから次に置かれる焦点は、常に同じになる。
「誰が前に出るか」
「誰が、物語になるか」
事故そのものではない。
事故が起きたとき、
それが何として扱われるかが重要だった。
数値で説明できるなら、処理できる。
技術的逸脱なら、報告で終わる。
不運なら、記録に残らない。
だが――
意味を持ってしまった事故は、厄介だ。
正しい者。
善意を語る者。
皆の前に立つ者。
そういう存在ほど、
一歩前に出る。
そして、前に出た者から、
死に近づく。
空気を変える者は、
判断を遅らせる。
感情を持ち込む者は、
処理を難しくする。
善意は、
制度の冷却機構を停止させる。
だからこそ、
学園は安全装置ではない。
ここは、
危険を消す場所ではなく、
危険を物語にしないための装置だ。
英雄は、扱いづらい。
悲劇は、もっと扱いづらい。
最も扱いやすいのは――
語られない存在だ。
前に出ない者。
正しくならない者。
空気を変えない者。
消えるように振る舞い、
影響を残さない者だけが、
この制度の中で、
生き残る余地を与えられる。
会議は解散する。
記録は保存される。
判断は確定する。
そして、
誰も口にしない結論だけが、
静かに共有されていた。
――消える者だけが、生き残る。




