Ⅳ.違和感の覚醒
最初に意識に戻ってきたのは、感触だった。
柔らかい。
沈む。
身体の輪郭が、曖昧になる。
まるで、
自分が布に包まれて溶けていくような感覚。
「……え?」
声が、かすれて出た。
瞼を開くと、
視界いっぱいに白が広がる。
白い天蓋。
過剰なほどに厚い布地。
縁を飾る金糸の刺繍。
その奥に、
彫刻が施された天井が見える。
一つの部屋とは思えないほど、高く、広い。
洋子は瞬きをした。
一度では足りず、
もう一度、強く目を閉じてから開く。
景色は、変わらない。
ベッドが――
異常に、ふかふかだった。
柔らかすぎる。
沈み込みすぎる。
身体がどこまで支えられているのか、分からない。
寝心地が良い、とは違う。
制御を奪われる感触だった。
「……気持ち悪い」
思わず、そう呟いていた。
安心感よりも先に、
拒否感が胸に込み上げる。
ここはどこだ。
どうして、こんな場所にいる。
高級そうだとか、
夢みたいだとか、
そういう感想は、後回しだった。
柔らかさが、
自分を現実から切り離そうとしている気がして、
洋子は無意識に、
シーツを強く掴んだ。
現実でないことを、
頭より先に、身体が理解していた。




